2014/06/16

【BIM】設計行為に変革を 三菱地所設計デジタルデザイン室の目指すもの

三菱地所設計は4月から「デジタルデザイン室」をデザイングループ内に創設した。建築生産・設計の質的な変化が求められ、建築分野におけるBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を始めとしたICT(情報通信技術)のさらなる進展が期待される状況の中で、選ばれる設計事務所として生き残るために「デジタルデザイン室」はどこに向かうとしているのか。伊藤誠之室長に聞いた。

 「大手設計事務所ではBIMなどを積極的に使おうとする動きがあり、施工者による生産設計を含めた活用も本格化したことでデジタルデザインの目標がとらえやすい状況になってきている」と、今回新たにデジタルデザイン室を創設した背景について説明する。重視するのは「より良い顧客ソリューションの提供」だ。
 「従来の設計プロセスはアイデアをドローイングし、それをシミュレーションした上でもう一度アイデアに落とし込むという方法だった」とした上で、BIMの利点をシミュレーションとデザインを同時に実施する点にあると指摘。「『ものづくり』はひとりの巨匠が悩みながら進めるものから、多様な人々が価値を共有できる場で意見を言い合いながら検討するものになった」と語り、BIMを使用によって「コスト・環境・空間のシミュレーションをスピーディーに検討し、質の高いソリューションを顧客と共に考えたい」と強調する。
 これまでにも同社では『大手町フィナンシャルセンター』や『新宿イーストサイドスクエア』などBIMを床面積の算定や形状デザイン、エネルギー削減の用途で使用したプロジェクトはあったが「それぞれ先進的な取り組みをしていたが、総合的な取り組みになっていなかった」と振り返る。そこでデジタルデザイン室ではデジタルデザインの全社的な浸透を目標に掲げ、週1回程度の定例会でメンバーが携わったプロジェクト事例によるノウハウの蓄積と検討を重ねている。
 メンバーは意匠分野から10人、エンジニアリング分野から4人、システム分野から1人の計15人が所属。社内においてデジタルデバイド(情報格差)が発生するのを防ぐため、メンバーはいずれも他の部署と兼務する部門横断型の組織としており、「一般業務を通じてデジタルデザイン室の取り組みが全社的に浸透する」構成だ。定例会では議論が白熱することも多く「設計行為に変革(レボリューション)をしようとする人がメンバーに集まっている。それぞれが語る壮大な夢をどうやって実現するかを考える必要がある」と力を込める。
 全社を挙げた本格的なデジタルデザイン活用の第一歩として期待が集まる中、重要なのは「デジタルデザイン室が、これから先にある未来を示していくこと」だと断言する。選ばれる設計事務所として、多様性を持った複数のソリューションをいかに顧客に示すのか。デジタルデザインを扱う専門家集団としての挑戦は始まったばかりだ。

 (いとう・のぶゆき)1985年3月東大大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了後、同4月三菱地所入社。2001年分社時に三菱地所設計に出向、建築設計三部、環境技術推進室などを経て14年4月より現職。代表作に東京ビル建替え、大手町フィナンシャルシティ(基本計画、ノースタワー基本設計)など。東京都出身、54歳。
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