2016/09/18

【本】異なる風土を読み解き、根ざす建築を 『コロンビアの環境建築』


 コロンビアは巨大な国だ。日本の3倍の国土を持ち、赤道直下に位置しながらも海岸地方から山岳地方まで土地の標高により常夏から寒冷までさまざまな気候が混在している。長くスペインの植民地だったために欧州やアラブの文化も内包しており、各地域の都市や集落はそれぞれ固有性を持った姿を示している。

 本書は、そうした都市や建築の姿を豊富な写真と図版から分析していく。登場する建築はさまざまだ。住宅や公共施設といった近現代建築はもちろん、カフェや公園といったコミュニティーに根ざした施設を取り上げることでコロンビアで暮らす人々の建築に対する期待や思いを明らかにしようと試みる。
 場所は建築や人々に影響を与え、その建築や人々がまた新たな場所をつくり出す。設計の根拠として「場所」を参照するのは建築の基本だが、そこで生まれた建築もまた「場所」を構成する要素として積み重なっていく。こうした場所と建築の混成は国や地域を越えて共通している。風土の異なるコロンビアを読み解くことで、建築を検討するための新たな視座を獲得するきっかけを与えてくれるだろう。
(鹿島出版会、3800円+税)
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