2016/12/25

【香山壽夫】コンパクトさを最大化した『立体的な交流』空間 吾嬬第二中学校校舎改築


 墨田区立吾嬬第二中学校校舎改築工事が竣工した。東京都墨田区の現在地で2014年10月から工事が進められ、設計を香山壽夫建築研究所が担当した。1947年の開校。70年前の当時は校舎建設に地元住民らが整地を手伝うなど地域社会と一体になった関係がいまも続いているという。住宅、工場が密集する場所にあり、香山壽夫氏は「コンパクトさを最大化したプランを考えた。光や風を取り込む吹き抜けの図書室を中央に配置し、それを教室が取り囲む格好になる。階段や廊下を歩くと図書室を中心に多方向に視線が抜けるちょっと不思議な『立体的な交流』空間になっている」と話す。写真は内部。昇降口にある中央の階段を上がると、踊り場から2階左右の教室へ向かう階段に分かれる(撮影:香山壽夫建築研究所)

 全体計画では、既存の校舎と体育館を使いながらグラウンドに校舎を新築し、その後既存校舎を解体して、グラウンドを整備する。10月31日には校舎が完成した。同事務所シニアアーキテクトの土屋辰之助氏、現場担当の柳本優己氏は「敷地が標準の半分くらいと狭あいで、周辺の道路も狭かったので、コンクリートの打設が限定されたり、資材を建築建物の中に置くなど厳しかった。施工を区内の坂田建設JVで担当していただいたことで、こうした場所の経験を持っていたので円滑に施工が進んだ」と述べる。
 使いながらの工事のため新築校舎と隣接する既存校舎の教室は、防音対策として二重サッシに改修した。

香山壽夫氏

 香山氏は「授業の方法などが変わって教室の使い方、学校空間のあり方も変わってきている。現行敷地の中で周辺も含めてゆとりを持ちつつ、求められる新しい機能を最大限に生かすため、与条件でもあるコンパクトさを最大化するプランとした。それは四角い敷地の真ん中に吹き抜けを持つ図書室を配置して、周りを教室が囲むという明快な計画。図書室の部分は、吹き抜けを少し複雑にして、3階に中庭テラスをつくるなどして、光の射し方、視線の抜け方が多様になる『立体的な交流』空間といえる」と話す。

東西の教室の間に設置された1-2階吹き抜けの図書室。写真は1階部分で、
階段や廊下から内部空間が見え、多方向に視線が抜ける
(撮影:香山壽夫建築研究所)

 外壁にはれんがを積んで、内側のRC造の構造体との空気層をつくって断熱性を高めている。香山氏は「外断熱でかなり空調効率が高い。それだけではなく外壁の仕上げとしても長持ちし、本物のれんがなので温かみがあり落ち着くデザインだと思う」と述べる。
 換気システムとして、自然の風と室内外の温度差による自然換気システムを取り入れているのも特徴だ。
 香山氏は「既存校舎の窓から先生と生徒さんが工事中の建築を見て、完成を楽しみにされていた。周辺の方々もとても協力的で、学校は地域のものという、本来の学校のあり方を改めて実感した工事だった」と振り返る。

【建築データ】
▽工事名称=墨田区立吾嬬第二中学校校舎改築
▽所在地=東京都墨田区八広4-4-4
▽構造・規模=RC(一部S)造4階建て延べ7594㎡
▽工期=2014年10月1日-2016年10月31日
▽設計=香山壽夫建築研究所
▽施工=坂田・岡本建設JV(建築)、大坪・東武建設JV(電気)、アサノ・タカヤマ建設JV(空調)、一工・沖山建設JV(給排水)、三菱電機ビルテクノサービス(昇降機)
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

0 コメント :

コメントを投稿