2014/07/30

【東大安田講堂】90年前の意匠再現めざし、進む耐震改修

国の登録有形文化財第1号に指定・登録されている東京大学安田講堂の改修工事現場が28日、報道公開された。構造躯体と講堂天井の耐震改修を主軸に、外壁を始めとする仕上げ材を建設当初の意匠に復元する工事を進めている。設計は東大キャンパス研究室、同施設部と香山壽夫建築研究所、施工は清水建設が担当している。

 安田講堂は、東京帝国大学建築学科(現東大)で教べんを執った内田祥三、岸田日出刀の両氏の設計、清水建設の前身である清水組の施工により、1925年に完成した。約90年が経過し老朽化が進行していることに加え、東日本大震災を踏まえて耐震性確保のため改修を決めた。改修に併せて、文化財としての価値を将来に継承する観点から、可能な限りオリジナルの意匠復元を目指している。
 改修で最も注目されるのは、講堂天井の耐震化。700㎡ある既存天井は、屋根を支える骨組(小屋組)から鋼製材で吊り下げられた「つり天井」で、漆喰塗仕上げの天井板は1㎡当たり100㎏もある。大地震による落下防止のために、「建物と天井を一体化し、軽量化すること」(清水建設の尾形晃弘工事長)を基本方針に据えた。
 具体的には、既存天井板の撤去、小屋組と鋼製材を連結・一体化することによる補強、さらに1㎡当たり15㎏と軽量で剛性の高いグラスファイバー補強された石膏天井板への張り替えを実施している=写真。
 天井板の意匠は撤去した従来の意匠を継承した。震度7クラスの大地震時でも落下しないことを清水建設技術研究所で確認している。
 講堂内を3Dスキャナーで実測・図面化するとともに、東大と同社が保存している工事記録写真などの資料から、これまでの改修工事を経て、建設当初の意匠が失われた建物部位を特定した。講堂の自然採光の復活やエレベータ、多目的トイレの新設などバリアフリー化も進めている。工期はことし12月まで。
 東大大学院工学系研究科建築学専攻の千葉学教授は「改修工事により安心して利用でき、これまで目にできなかったオリジナルな姿も再現され、大学にとって重要な位置付けになる」と話している。
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