2016/08/30

【建コン協】主役はわれわれ! 魅力ある業界とやりがい探る「若手技術者の会」伊藤昌明氏に聞く


 建設コンサルタンツ協会(長谷川伸一会長)が昨年4月に設置した「業界展望を考える若手技術者の会」。同会の発起人であり、代表を務める伊藤昌明氏(オリエンタルコンサルタンツ統括本部人事企画室副室長)は、「今年度中に将来ビジョン案の策定を目指しているが、つくるだけでは意味がない。若手世代で共有をしたい。全国の若手技術者を集めた討論会を行いたい」と意気込む。伊藤代表にこれまでの活動や今後の取り組みなどを聞いた。
--若手技術者の会の発足の経緯を
 「建コン協として、魅力ある業界にしていくためにはどうすればよいか議論をしているのが、経営者や会社幹部など上層部の方々ばかりだった。将来的に魅力ある業界になっていくことを考える段階で、本来であれば主役はわれわれ若手技術者だが、そこに加わっていないことが疑問だった。われわれの世代が明るい未来を描いて活動していくことが果たすべき役割ではないかということで、総務委員会に提言して、準備に1年をかけて設置した」

--これまでの活動状況を
 「大きく3つの活動をしている。1つ目は毎月1回程度開いている定例会。2つ目は、その中でわれわれ自身が描く将来ビジョンをつくること。3つ目は広報活動だ。委員の中には、ほかの人がどのような職場で働いているか知りたいという意見も多いため、社屋を移転したパシフィックコンサルタンツと八千代エンジニヤリングでオフィス見学も行っている。協会各支部との交流は北陸、関東、九州で3回実施している」
 「支部をめぐると、抱えている課題は同じだと感じる。苦しい就業環境の中で仕事をしていて、いまの仕事にモチベーションが持てないといった話が出てくるが、現状を変えたいと思っている人は多いと改めて実感した。本部の役目として、支部との横の連携を促進していきたい」

--若手技術者を取り巻く課題は


〝30年後の働き方〟をテーマに5月、九州支部で行われたワークショップ。意見を交換する中で
互いにエネルギーを感じ合う有意義なものとなった

 「1つは仕事に対するモチベーションの低下だ。過度な残業で自由な時間が持てないことと、苦労に見合った収入が得られていない。全産業的に比較すると、収入はそれほど低くはないが、感覚的にそう感じている。上司から細かい作業を割り振られるため、本来の仕事の醍醐味、面白みを実感できていない。われわれの仕事の意義を日常的に感じにくいという意見が多い」
 「若手同士の交流の機会も限定的だ。各支部に若手の組織があり、大学を訪問したり、高校生を対象にした広報活動を行っているが、支部の中でクローズしており、建コン協として普及活動の効果も限られている。また、同業他社の若手のやりがい、苦労、働き方を知らない。自分の会社の中で活動が閉じているので、何が良くて何がダメなのか、何がつらいのか分かっていないため『自分だけがつらい』という感覚に陥ってしまう。だからこそ同業他社の情報提供も行っていく必要がある」

--将来ビジョンの策定状況を


 「自分たちが定年を迎える30年後ぐらいを想定して描くこととした。市場、働き方、イメージの3つのワーキンググループ(WG)に分けて議論を展開している。市場WGは、いまの市場では底をついているところもあるので、新しい領域を目指していくことを考えている。政策立案、維持管理、運営といった下流側にも挑戦しなければならない。働き方WGは、グーグル、ホンダ、サイバーエージェントなどクリエーティブでイノベーションが活発な会社のオフィス環境、働き方を分析している。イメージWGは、最も困難だが、夢のあるイメージ戦略を描いていくため、波及効果の大きいドラマ化にできないか、放送作家にヒアリングするなど、真剣に考えている。実現は難しいが、現実的な施策は出さない。そこに向かって挑戦していきたい。この3本柱で課題を解決していくというのが大きなスタンスだ。10月の近畿支部での交流会では、中間報告を行う予定だ」

--同世代の若手技術者に訴えたいことは
 「嘆いているだけでは何も変わらない。普段思っていることや自分がやってみたいことは、行動に移さない限り変わらない。『アクションなくしてリアクションなし』と強く思っている。建設コンサルには頭が良く、知識を持っている人が多いが、その知識を行動に移せるかどうかだ。社会にとって非常に重要な仕事をしている中で、『やりがいがない』と思っているのであれば、立ち上がって自分たちが変えていくという気概を持たなければ、業界として変わっていかない」

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 明るい口調で語り、常に笑いを絶やさない姿が人をひきつける。「まず行動をして輪を広げ、大きなムーブメントになることを信じて行っている」と強調する。『一大ムーブメント』という言葉を掲げているが、「そこを意識して活動しなければならない」と、全国の若手技術者をけん引する強いリーダシップに期待がかかる。広島市出身、40歳。
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