2014/04/29

【熱中症ゼロへ】気象情報役立てて安全な現場を 日本気象協会

平均気温の上昇から、ことしの夏も猛暑の日々が続くことが予想されている。そうした中、建設作業で最も気をつけなければならないものの1つが「熱中症」だ。日本気象協会(東京都豊島区、繩野克彦会長)は2014年度も「熱中症ゼロへ」プロジェクトをスタートさせた。「知って」「気づいて」「アクション」の予防サイクルを周知することで、「熱中症で死亡する人をゼロにする」ことを目指す。また、局地的なゲリラ豪雨の降雨状況などをスマートフォン(スマホ)で確認できるといったソフトも提供する。同会では、建設現場で安心・安全に働ける環境づくりに、気象情報を役立ててほしいと話している。
 「熱中症ゼロへ」プロジェクトは13年度に始まった。全国の自治体や民間企業などを巻き込みながら、熱中症に対する正しい知識と対策を、多くの人に知ってもらうことを通じて、熱中症撲滅の輪を広げるのが目的だ。ことしは昨年より2カ月早く、4月1日からスタートした。
 同会によれば「熱中症は真夏はもちろん、意外にも梅雨時や初秋のころの発症率も高い」(藏田英之事業本部情報システム事業部担当部長)という。体が暑さに慣れていないためだ。また、「気温が高くなくても、湿度が高いと体に負担がかかる」ことから、湿度を知ることも重要になる。同会の公式ウェブサイトをリニューアルしたほか、『tenki.jp』では「熱中症ゼロへ」とタイアップし、熱中症情報をより詳細に掲載した。

◇WBGT値一目で
 「tenki・jp」では、掲載地点を142地点から845地点に大幅に増強した。例えば、東京都なら、昨年が東京、大島、八丈島、父島の4区分だったものを、千代田区や八王子市といったような市区町村レベルまで細分化し、現在、自分がいる地域の詳細なWBGT(湿球黒球温度)値を把握できるようになった。これまで1日単位だったWBGT値の公表も、3時間ごとにするとともに、グラフ表示によって、24時間先までのWBGT値の変化が、一目で分かるようにした。

◇携帯型の指標計
 こうした情報提供とは別に同会では、長い歴史の中で培ったノウハウを生かし、メーカーと共同して、誰でも使える携帯型熱中指標計を開発した。「身に迫っている熱中リスクを正しく察知する」ことによって発症を防ぐもので、危険性をブザーで警告する。『見守りっち』という商品名で、09年6月から販売されており、既に「見守りっち」を始めとする携帯型熱中症計シリーズ全体で、80万個の販売実績があるヒット商品だ。東急ハンズのほか、家電量販店、ドラッグストアなどで販売している。
 日本体育学会と日本気象学会が出している指標の優れた点を採用し、表現方式も「ほぼ安全」「注意」「警戒」「厳重警戒」「危険」の5段階とした。10分ごとに気温と湿度を計測して、厳重警戒、危険になった時、LED(発光ダイオード)ライトとブザーで警告する仕組み。手のひらサイズで、首から下げられるタイプのほか、建設現場向けにヘルメットに装着できるタイプもそろえた。ブザーが鳴ることで、周囲の人たちにも危険性を知らせることができる。部屋置き型もある。

◇ゲリラ豪雨情報も
 このほか、地震や気象情報を携帯にメール送信するサービスに加え、急増している局地的大雨(ゲリラ豪雨)の降雨状況を把握するのに最適なアプリ『Go雨(ごうう)!探知機』を開発、無料提供している。当初、対応できる端末はiPhone、iPad、iPadmini(対応OSはiOS5・1・1以降)だけだったが、新たにアンドロイド版も制作したことで、利用者の拡大につなげた。
 拡張現実(AR)技術を使い、スマホを空にかざすだけで、一番近い雨雲までの距離と方向、250mメッシュの雨量が分かる。雨が降り出せば実況値を表示するだけでなく、測定者を中心に半径5㎞内の雨量を知ることができる。「App Store」で無料配布している。同会では現在、「探したい。『天気』にできること」をコンセプトに掲げ、持っているノウハウや知見を個人向けに役立てられる、新しい事業・サービスの開発をしていく方針だ。
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