2014/04/07

【次世代の左官へ】大御所、阿食更一郎氏が80年を振り返る

阿食更一郎氏
 38歳の若さで左官工事業の大手企業・亀井組の社長に就任し、大阪府左官工業組合理事長や全国竹和会会長などを歴任した阿食更一郎氏が回顧録『以人為師八十年歴程』をまとめた=写真。執筆の途中、「こんな回顧録が何かの役に立つのか」と葛藤したこともあったが、完成した全157ページの労作からは、苦労をいとわず、信念を貫くことの大切さが伝わってくる。 知人からの薦めを受け、「いま書き残さないと、後になって思い出すこともできない」と執筆作業をスタートさせたのが昨年の8月。以来、自宅での多くの時間を執筆に費やし、11月30日の80歳の誕生日までに素稿をまとめた。ここからは写真を組み込んだ全体の構成、確認や校正が中心となり、ことし3月にようやく出版を迎えた。
 「書き進めていくと、意外と昔のことも覚えていた」とは言うものの、記憶をたどりながらの執筆だったため、人名などの確認はかなりの時間と労力を要した。
 内容は、自身の生い立ちからの半生を紹介しながら、思い出に残る工事(建物)や亀井組、専門工事業団体での取り組み、家族や趣味などをまとめているが、その時どきの時代背景や阿食氏の考え方なども書き添えられ、とても分かりやすい。


また、「特にこれまで日記やメモを残してこなかった」と思えないほど詳細な内容となっていることにも驚かされる。
 しかし、巻末の資料編に過去の大阪府左官工業組合の機関紙に書いた記事を収録してはいるものの、本文に後進への明確なメッセージや要望は書かれていない。阿食氏はこれまで、さまざまな場で専門工事業者のあり方などを提言してきただけに意外な感じもするが「この本はあくまで私の半世紀で、読む人が自由にいろいろなことを感じてくれればいい」と説明。「時代も異なるし、この生き方を真似してもらいたいとは思わない。左官業に携わる次世代の人々が新しい道を切り開いていく参考にしてほしい」と求める。
 非売品として自費出版で550部を制作。既に関係者などには発送済みで、好評を得ているという。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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