2014/11/15

【中央工学校】測量、造園、木造建築…「本物」に触れられる「軽井沢研修所」

ことし創立106周年を迎えた中央工学校(東京都北区、大森厚理事長)は、わが国有数の別荘地・軽井沢に約1万5000坪、東京ドームに匹敵する広大な敷地を擁する「軽井沢研修所 南ヶ丘倶楽部」を保有している。そこでは、全学生必修の2泊3日宿泊研修のほか、測量、造園、木造建築などの実習が実施されている。同校の建学の精神「人間涵養教育の実践を受け継ぐ重要な場」となっている研修所を10月上旬に訪問した。写真は、幕末期の甲州特有の民家形式を今に伝える国登録有形文化財の「三五荘」。

 学外研修施設の軽井沢研修所は1978年開設。軽井沢駅から車で5分、徒歩で30分程度の森の中にある。センターフロントの2階の南ヶ丘美術館を始め、日本建築の伝統の技と美を結集した茅葺き屋根の民家「三五荘(さんごそう)」(旧古屋家住宅)、研修棟「千ヶ滝」、茶苑「南暁」などに加え、最大200人が利用できる宿泊施設が整備されている。6600㎡のグラウンドの芝生の緑も鮮やかだ。雄大な自然に育まれた敷地内に点在する各施設を2時間ほどかけて駆け足で見て回った。

生け垣修復作業にも熱が入る
訪問した日は、造園デザイン科と木造建築科の学生の実習中だった。造園デザイン科は竹の生け垣の修復作業、木造建築科は約54㎡の木造平屋建て建築物の建て方作業中だった。
 「こんにちは」。すれ違う学生から、大きな声で先にあいさつされるのが印象深い。

海外からの学生とも力を合わせて建て方作業を実施
それぞれの実習現場では、指導員が安全に配慮しながら個々の学生の作業を指導。指導員だけでなく、実習経験のある上級生が下級生の作業をフォロー、注意を促すという相互教育が徹底されている。広々とした空間と豊かな自然の中で、学生ものびのびと実習に励んでいる。
 三五荘は2007年春、国登録有形文化財に指定された。江戸末期、山梨の豪農が建造したもので、1935年軽井沢に移築された。広く一般にも公開されており、今上天皇・皇后両陛下をはじめ、多くの建築家、文化人が見学に訪れている。また、実物大の教育資料として重要な役割を果たしている。

100畳敷きの大広間に総ヒノキ造りの能舞台を備えている「千ヶ滝」は、学生の茶道研修にも使用される
千ヶ滝の2階には、100畳敷きの大広間に総ヒノキ造りの能舞台がある。宿泊研修の際には、学生の茶道研修などに利用されている。本格的な日本古来の格式と様式を備える大広間での茶道研修では、学生の背筋も心なしか伸びるようだ。
本格的な茶苑「南暁」

千利休の建築を今に蘇らせた幻の茶室「大庵」
南暁にある三畳半の小間「大庵」は、千利休が大坂城内に設計し、幻の茶室といわれた「深三畳台目」を、文献を手がかりに、安土桃山時代の工法と建材で復元したもので、資料的価値も極めて高い。
 こうした貴重な建物と自然の中で、宿泊研修のほか、木造建設実習、総合建設実習、総合測量実習、造園実習などが行われている。年間延べ約1900人が研修所を何らかの形で利用し、それぞれの科に応じた技術教育を行っている。
 技術の背景にある日本の文化、伝統を継承するために軽井沢研修所の果たす役割は大きい。案内してくれた松田正之教務部長は「ものをつくる技術とものをつくる心の教育を車の両輪として実践し、総合的な人間教育の場として研修所の役割はますます高まっている」と強調する。
 同研修所が持つポテンシャルは、限りなく大きい。建設産業を担う人材育成のために、従前以上に広く生涯教育の場として活用されることを期待したい。
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