2015/02/05

【復興特別版】汚染土壌保管場整備が着工 線量が比較的高い帰還困難区域で作業開始

東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う除染で発生した大量の汚染土壌などを保管する中間貯蔵施設の関連工事となる、保管場(ストックヤード)の整備工事がスタートした。環境省は3日、福島県大熊、双葉両町の中間貯蔵施設建設予定地で、保管場2カ所の整備工事を報道陣に公開。いずれも原発に近く、放射線量が比較的高い帰還困難区域にある。白い防護服に身を包んだ作業員が、現場の表土をはぎ取り、除染を進めていた。写真は前田JVが担当する双葉町の現場。

 本格貯蔵まで仮置きするための保管場は、同日午前に着工。両町の工業団地内に設けるもので、土地の広さは管理事務所なども含め計6ha。

清水建設・熊谷組JVの担当する大熊町の現場
大熊町の保管場は、原発から約1kmの距離にある工業団地内の更地に設ける。施工は清水建設・熊谷組JVが担当。現場では、作業員約60人がバックホウなどで表土をはぎ取る除染を実施。除染後、搬入に向けた周辺道路の補修や汚染土から放射性物質が流れ出ないようシートで覆うなど、工事を本格化させる。原発から約200mに位置する双葉町の工業団地でも、駐車場だったスペースで工事が始まった。前田建設・西松建設・田中建設JVが施工に当たる。工期はともに4月30日まで。
 環境省福島環境再生事務所の藤塚哲郎中間貯蔵施設等整備事務所長は、報道陣に公開後、除却土壌の保管場の整備について「受け入れていただいた両町に心より感謝する。今後の中間貯蔵施設などの整備は、地元の理解がないと一歩も進まない。いままで以上に丁寧に説明し、理解を得ながら、丁寧に進めたい」と話した。
 同省は3月11日までに汚染土搬入を始めたい考え。県は搬入開始に当たり、施設、輸送に関する安全性確保など5条件を示しており、同省は搬入開始に向け、県と協議を進めていく。
 パイロット輸送(試験輸送)実施計画案では最初の1年間に、県内43市町村から1000m3ずつを試験的に運び入れるとしている。4月末までに原発周辺9市町村分を終え、他の市町村へと対象を拡大する。保管場2カ所の容量は計2万m3しかないため、地権者との用地取得交渉を進め、さらなる保管場の確保を急ぐ方針だ。

■最長30年間で2200万m3保管する中間貯蔵施設 安全に集中的な管理

 中間貯蔵施設は、福島県内の除染に伴い発生した大量の放射性物質を含む土壌や廃棄物(落葉・枝など)などを最終処分するまでの最長30年間、安全に集中的に管理・保管する施設として設置する。貯蔵量は減容化(焼却)後で約1600万-2200万m3と推計。これは東京ドーム(約124万m3)の13倍から18倍に当たる。
 施設は、搬入される土壌や廃棄物の重量、放射線量を測定し分別する「受入・分別施設」と「土壌貯蔵施設」「減容化(焼却)施設」「廃棄物貯蔵施設」などで構成。仮置き場などから運び込まれた除染土壌は、受入・分別施設で重量や放射線量を測定、放射性セシウム濃度など、その特性に応じて各施設で貯蔵される流れだ。
 このうち、土壌貯蔵施設は、放射性セシウム濃度が8000ベクレル以下(1㌔当たり)と低く、地下水などの汚染がないと考えられる土壌を貯蔵する「I型」と、放射性セシウム濃度が8000ベクレル(同)を超す土壌を貯蔵する「II型」の2種類を想定。地形や地質を考慮しつつ、覆土やシート掛けで飛散・流出を防止しながら、遮水シートや難透水性土壌層で遮水機能を持たせる。
 一方、放射性セシウム濃度が10万ベクレル(同)を超す廃棄物を貯蔵する廃棄物貯蔵施設は、RC造など遮へい効果のある構造(建屋)とする。耐久性のある貯蔵容器(専用ドラム缶)などで容器そのものを封入して貯蔵。外部被ばくを防ぐ。
 このほかスクリーニング施設、水処理施設、ストックヤード、管理棟、研究等施設、情報公開センターなども設置する。
 施設整備に当たっては、現地の地形、地盤の強度や高さを有効に活用しながら、各施設を配置する。地震や津波などへの対応として、廃棄物処理施設や減容化施設といった放射性セシウム濃度が高いものを扱う施設は、地盤が硬く、津波が到達しない丘陵地・台地への配置を見込むなど、自然地形を最大限に活用、できる限り土地改変を避けて施設を構築。環境負荷の低減と工期の短縮を両立させる考え。
 中間貯蔵施設は両町にまたがり、約16km2の広さとなる見込みだが、地権者との土地取得交渉は難航。施設本体の着工時期は見通せておらず、完成には数年かかるとみられている。
 施設の運営は国が全額出資する特殊会社の「中間貯蔵・環境安全事業」が担う。当面は輸送実施計画に基づく輸送統括管理者として、パイロット輸送の全過程にかかわる業務を統括的、一元的に管理することになる見通しだ。
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