2015/04/23

【現場最前線】資機材搬入、仮設計画に創意工夫 眠らない歌舞伎町が現場の新宿東宝ビル

東京・歌舞伎町の新たなランドマークとして誕生した「新宿東宝ビル」。トレードマークの“実物大”ゴジラが話題を集めているが、さまざまな技術や創意工夫がちりばめられたビルでもある。3月下旬、引き渡しを目前に控えた建設現場を訪れ、設計施工を担当した竹中工務店の作業所長や設計担当者らに話を聞いた。

 この現場でもっとも苦労したのが、車両の通行制限だった。歓楽街である歌舞伎町は夜間が歩行者天国となるため、工事車両が通行できるのは早朝5時から午後3時30分まで。「資機材搬入の面で非常に厳しい条件。歩行者の安全確保に関しても、緊張の連続だった」(浜島英一作業所長)。資機材搬入の制約は工程計画の難易度を高め、昼に鉄骨、夜はPCという理想的な施工サイクルが遠のいた。
 制約がある資機材搬入や絶えない人通りを踏まえ、仮設計画にも創意工夫を織り込んでいる。例えば低層部外装の施工では、仮設を極力避けるためゴンドラを使って施工した。「繁華街に持ち込む資材を減らし、飛来落下も防げる」(浦邉雅章工事グループ長)というメリットがある。このほか高層部では外装先付PC工法を採用。仮設ネットや養生を減らしながら、飛来落下などの安全対策も確保するという一挙両得を狙った。
 このビルは、低層部に飲食店舗とシネマコンプレックスを配置し、高層部がホテルとなる。低層部の外装部は波打たせたようなデザインを採用したが、「外装の裏側をダクトスペースとして活用している」(関谷和則設計第1部門設計5グループ課長)という機能性も併せ持つ。

アクティブダンパーで風揺れを防ぐ
ビル最上部には風揺れを防ぐため、東西2つのアクティブマスダンパー(AMD)を設置している。建物のアスペクト比が大きく、風の影響を受けやすいためだ。強風時には、動力によって50tのおもりを動かして建物の揺れを抑制する。一方、耐震性能は各階に設置したオイルダンパーや粘性体耐震壁で確保し、「基準の1.5倍の耐震性能を持つ」(関谷課長)という。

客室から見えるゴジラ
高さ12mの巨大なゴジラのモニュメントだが、実は「硝子繊維補強セメント(GRC)を使っている」(浦邉工事グループ長)。このため重さは80t、まさにゴジラ級だ。本来であればFRP(繊維強化プラスチック)などの軽量素材で作るのが建物構造面からも効率的だが、規定のサイズを超えて構造物扱いとなったためGRCを使った。なお、ゴジラ底部に配置したがれきにはFRPを使っている。ホテルには、ガラス越しにゴジラと目が合う位置の客室も用意されており、その眼力に圧倒される。
 ビル側面にはフルカラーのLED(発光ダイオード)照明を仕込み、セントラルロードの街路灯と同じ色で連動させる仕掛けも盛り込んだ。ビル単体ではなく、街並みとの一体感を演出する新たな試みだ。
 24日にはホテルがオープンし、新宿東宝ビルは本格稼働を迎える。
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