2012/08/04

感染症抑制に効果アリ! 建材としての「銅」にスポットライト

実際に使用されている銅製の蛇口
宮崎県日向市でことし6月竣工した社会医療法人「泉和会」の千代田病院が、病院関係者の注目を集めている。感染症抑制対策として、ドアレバーやドアハンドルなど銅製品が採用された。世界でも類を見ない多さだ。
 銅に脚光が当たったのは2008年2月。米国の環境保護庁(EPA)が銅や銅合金には、集団感染を引き起こしやすいクリプトスポリジウムや大腸菌O-157などの各種病原体に対する高い殺菌効果を認めたことが追い風となった。
 そもそも日本では早くから北里大学が銅の特性に着目しており、先駆者として05年から殺菌効果の研究を進めていた経緯があったが、EPAの見解によって米国を筆頭に世界各国で導入が加速した。先行していた日本であったが、感染症防止を目的とした銅製品の活用については、他国に比べて遅れている状況だ。
 日本銅センター(東京都台東区)によると、これまでに日本国内で感染予防策として使われた事例は「10に満たない」状況。千代田病院のほか、東京都内と福島県いわき市内では保育園や幼稚園にも採用されている。銅製品は価格がステンレス製品の約2倍。感染症防止への効果は理解あっても、コスト面で導入に踏み切れないケースも少なくない。センターは「千代田病院の実績が今後の銅製品活用に大きなインパクトをもたらす」と期待をのぞかせる。

◇千代田病院で530点が採用

 千代田病院はRC造6階建て延べ1万6880㎡。設計を伊藤喜三郎建築研究所、施工を清水建設が担当した。病院の千代反田晋理事長は「患者や医療従事者が感染症の原因菌に触れるリスクを低減するため、銅製品の採用を決めた。銅のもつ永続的な殺菌力を通して院内の感染症予防の啓発に努めたい」と強調する。
 病院とセンターは製品設置後1年3カ月にわたって銅の抗菌や殺菌作用の実証実験を行っており、ブドウ球菌や一般細菌を大幅に削減する結果を得ている。今回設置された530点超の銅製品は重量にして約1tに達し、世界最大規模になるという。
 日本伸銅協会では、感染症防止の銅製品には「黄銅の板や管が使われる」と説明する。年間統計では黄銅板と黄銅管の出荷量は前年度比3・5%増の1万8663トン。感染症防止対策への利用が進めば「この数字に大きな変動が見られるだろう」としている。

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