2012/06/05

震災後に必死のリカバリー! 金ヶ瀬さくら大橋上部工

金ヶ瀬さくら大橋上部工の現場
 東日本大震災は施工中の現場にもさまざまな影響を及ぼした。宮城県が発注し、清水建設が施工している金ヶ瀬さくら大橋上部工工事もその一つだ。地震による被害と出水期の規制で工程にほぼ1年の遅れが出た中、工期内の完成に向けて現在も懸命のリカバリーが行われている。
 同橋は、宮城県大河原町金ヶ瀬の国道4号を横断し、東北自動車道村田インターチェンジ付近の村田町西原に至る延長約14㌔の広域農道「仙南東部地区」の2期工事の一環として建設されている、長さ248m、幅10・75mのPC橋だ。型式は4径間連続PRC波形鋼板ウェブラーメン箱桁橋。


中央部の閉合作業
◇張出架設工法を採用

 施工に当たっては、主桁の自重を軽減し、上部構造および基礎・下部構造を縮小化するため、ウェブに波型鋼板を採用。これによりコンクリートウェブの鉄筋組立やコンクリート打設などの作業を省略でき、施工の省力化が図られる。さらに移動式作業台を用いた張出架設工法を採用し、河川上での施工を可能とした。
 工事は2010年10月にスタート。出水期の6月10日から4カ月間は河川区域内での作業を行えないことから、当初は約1年かけて基礎コンクリートや支保工の組立などを行い、11年10月から一気に橋脚3基(P1、P2、P3)の柱頭部の施工に取り掛かる計画だったという。しかし、北村裕所長は「作業や人が集中すると状況が厳しくなるため、できる時にできる個所から施工したい」と工程を見直し、P1とP2を先行して整備することにした。

◇震災で基礎コンクリート割れる

 作業は順調に進み、出水期で作業が止まる11年6月までには2基の柱頭部の施工が終わる見通しだったが、3月11日に東日本大震災が発生。地盤となる基礎コンクリートが割れ、傾き、かつ移動するなど足元が根こそぎ破壊された。これに伴い組み上がっていた支保工も大きく傾斜するなど、甚大な被害を受けた。
 「基礎からやり直し、精度が求められる支保工も直すより新たに組んだほうが早いが、そうなると出水期に間に合わない」(北村所長)。加えて波型鋼板の製作にも半年近くを要するため、そのシーズンは部材をばらしただけで手をつけられず、工事を再開できたのは着工からほぼ1年後の11年10月11日だった。
 「工期短縮にはマンパワーの投入しかない」と、作業員の人数を震災前の約3倍に増やすとともに、作業時間も延長。「ブロック施工のため1日の遅れが2日、3日と広がる。そうならないよう、何時になってもその日の作業を終わらせた」という。
 さまざまな作業が集中し輻輳する中、綿密な作業計画とそれに基づく徹底した工程管理で1年遅れのハンディをほぼ克服、5月末現在の進捗率(見込み)は90%に達した。「現在も余裕はない。いまが勝負」。9月下旬の工期内完成に向けて、北村所長を先頭に、現場一丸となって全力投球の日々が続く。

『橋梁工学 (現代土木工学シリーズ)』 AmazonLink

0 コメント :

コメントを投稿