2014/08/19

【女性技術者】ものづくりの喜びも、育児との両立も 働き方を考える官民意見交換会

官民の女性建設技術者による意見交換会が12日、金沢市のKKRホテル金沢で開かれた。参加者からは育児と仕事の両立の難しさや相談する相手(女性技術者)がいないことなどが課題として挙げられた。特に民間技術者からは残業や休日出勤で「自分の時間がとれない」「きつい」「これから結婚しても続けられるか不安だ」と訴える声が相次いだ。一方で、多くの参加者がものづくりの喜びを実感できる建設業の魅力を率直に語った。
 意見交換に参加した女性技術者は、石川県建設業協会の会員会社から5人、北陸地方整備局金沢河川国道事務所が2人、県土木部が4人。コーディネーターも県内の建設コンサルタントの女性技術者が務め、2時間半にわたって職場環境における課題や女性技術者が働き続けるための提案などを話し合った。
 職場での課題をめぐっては、育児で労働時間が制約されてしまうことについて「周囲に迷惑をかけたくない」などの気遣いの半面、「(自分が)男性だったらもっと働けるのにと思う」といったジレンマも聞かれた。ただ、就労時間については職員数も多く制度的にも整備されている公務員と異なり、民間技術者からは「いったん家に帰って食事を子どもに食べさせ、また現場に戻り、夜遅く帰宅。朝も食事を作って子どもより早く出ている」といった日常生活が紹介され、工期や顧客との関係を優先せざるを得ない就労環境が根本にあることが浮き彫りになった。
 こうした課題への対策として、育児などに伴う定時退社については「勇気が要るが、(遠慮せず)割り切って実行する」「労働時間の問題は若い男性にも共通することであり、職場できちんと言い合える、理解し合える関係の形成が必要」との意見や、「個々の対応は限界があり、個人で抱え込まずに担当業務の情報を出し、社内で共有しておくことによってサポートしやすくなる」「会社側は各技術者の生産性などを踏まえた社内サポート体制を常に構築しておくべき」「限られた時間で対応できるスキルを日ごろから磨き、(労働)生産性をアップしていくべき」といった提言もあった。
 また、女性技術者が少ないために社内に相談相手がいないとの指摘も相次ぎ、企業には女性技術者の継続的な採用が求められていることも分かった。
 一方、民間技術者のほとんどが、竣工時の達成感や喜びが仕事のやりがいとなっていると率直に語った。土木の現場監督をしている民間技術者は「自分がつくった公園が完成したとき、子どもを連れて行ったらものすごく喜んだ。今は『仕事頑張ってね』といってくれるようになった」と語っていた。
 今回の意見交換会は、担い手不足が深刻化する中、女性技術者の登用促進に向け、課題や方向を探ろうと石川建協が主催。金沢河川国道事務所と県土木部が共催した。建協の北川義信会長ら役員、金沢河川国道事務所の金澤文彦所長、県土木部の山岸勇技監のほか、大学や工業高校の女子学生と市民も傍聴した。

■主要な論点はWLB
 就労環境をめぐって主要な論点となったのは、意外にもトイレや更衣室の整備といったハード面での対策などではなく、ワークライフバランス(WLB、家庭と仕事の両立)を女性技術者自身がどのように考えていけばよいのかという、本質論だった。口火を切ったのは、傍聴に来ていた工業高校の女子生徒による「生活でつらいことは?」という質問だった。
 回答した民間の技術者は、残業が多く、休日も満足にとれない実態を次々に吐露したのだが、続いて仕事への思いを聞かれると一転、ものづくりの喜びやうれしさを皆熱い感情を込めて表現した。「皆さんの問題意識は若い男性と本質的には同じ」という会場の声(男性)や「家事はなぜ女性だけなのか。男性も定時退社すべきではないか」「職場だけでなく、家庭内の協力も(WLBには)不可欠だ」といった指摘も聞かれた。
 「(家庭を優先すると)割り切って定時退社する」ことのジレンマは、建設産業のものづくりとしての魅力が今も大きな吸引力を持っていることを表わしている一方で、女性技術者の登用対策が建設生産システム全体の見直しの中で取り組まれる必要があることを意味しているようだ。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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