2014/08/22

【建築】風が通り生態系を擁する最新鋭オフィス「品川シーズンテラス」

かつて東海道の第一宿場として栄え、人や物、情報が行き交う要衝として発展してきた品川の地に、最新鋭の環境配慮型オフィスビルの建設が進む。NTT都市開発などが、JR品川駅近くで建設する「品川シーズンテラス」だ。広大な緑地や水辺の景観が調和する新しい環境共生プロジェクトとなる。2015年2月には、光、風、水、緑と人の営みがリンクする持続可能なまちづくりを体現する新たなモデルが誕生する。

◆「風の道」を確保/にぎわいも創出

 ビルと一体的に整備された3.5haの広大な緑地には、多様な樹木を配置することで、「品川シーズンテラス」の名前のとおり、1年中変わりゆく四季の景色を楽しむことができる。
 新規開発の担当として当初からかかわっているNTT都市開発の田口一孝プロジェクト推進部企画担当課長は、「広大な緑地・広場と隣接して、レストランやカフェなどの商業施設も配置し、人々が交流する場所にしたい」とした上で、「さらに緑地や広場、コミュニティーホール、ギャラリーを活用したイベント、ワークショップを通じて、にぎわいを創出し、地域のまちづくりに貢献したい」と語る。

ビルと一体的に整備された3.5ヘクタールの緑地は、人々に潤いと安らぎを与える
また、東京湾や高浜運河から都心に向けて風が通り抜ける「風の道」を確保し、光、風、水、緑を効果的に取り込み、ヒートアイランド現象の抑制や生態系の充実に寄与する。
 風の道を確保した広大な緑地は、東京湾臨海部の沿岸生態系と武蔵野台地の樹林生態系が連携し、「つながる生態系」を形成。持続可能な新しい都市の基盤(エコインフラ)を構築する。
 人々だけではなく、野鳥などの憩いの場となる「生物多様性に配慮した設計」とした。

◆スカイボイドで自然エネを活用

自然エネルギー活用概念図
建物の中核を担う設備は、ビル中央部の最上階から4階まで貫く吹き抜け空間のスカイボイドだ。屋上に設置した太陽光採光システム「T-Soleil」で、無窓となりがちなオフィス廊下にも自然光を取り込む。スカイボイドは空調の吸気口にもなり、各階に風を送り込む。空調については、地下にある都下水道局の下水熱を利用した熱供給施設から送られる温冷水を使用し、未利用エネルギーを有効活用する計画としている。
 そのため、「建物としては、地下施設の効率的な柱の間隔と、大空間を作りたい上部空間とのスパンの整合性をとるのに苦労した」。地下から、免震層をまたいでビルに温冷水を上げるため、可動幅のある管を使うなどの技術的な工夫も凝らした。
 このほか、太陽光発電システム、ナイトパージ制御、高性能Low-E複層ガラス、屋上・壁面緑化などにより、CO2排出削減量は約49%となる。
 国内最大級の免震構造を採用しているほか、72時間対応のビル非常用発電機により共用部だけではなく、テナント専用部にも電力を供給する。帰宅困難者スペースは、「3階のコミュニティーホールを開放する」ことを想定している。

◆国際ビジネス拠点の新たなランドマーク

 品川シーズンテラスは東京都の芝浦水再生センターの雨天時貯留池整備に伴う事業。敷地約5haのうち約1.1haを都が貸し付け、上部空間に32階建てのオフィスを建設し、緑地も一体的に整備する。
 09年3月、東京都下水道局による総合評価一般競争入札で、NTT都市開発、大成建設、ヒューリック、東京都市開発、NTTファシリティーズ、日本水工設計のグループが落札者として選定された。
 田口課長は「会社としても品川は都市開発の重点戦略エリアの一つ」とし、入札要件の「最高水準の環境モデルビル」の整備も「当社の開発志向に合致した」という。
 現在の工事進捗率は約65%。低層部や高層部内装、外構の工事が進められている。
 ワンフロアの貸し室面積は約5000㎡と国内最大級を誇り、「IT企業や、外資系企業を始め幅広く引き合いがある」としている。
 将来的には27年開業予定のリニア中央新幹線始発駅や、20年暫定開業を目指す山手線新駅設置の発表もあり、「国際ビジネス拠点のランドマーク的な存在になりたい」と期待は大きい。

◆事業概要

▽事業主=NTT都市開発、大成建設、ヒューリック、東京都市開発、東京都下水道局
▽設計=NTTファシリティーズ、大成建設、NTT都市開発、日本水工設計
▽施工=大成建設
▽構造=免震構造、地上S造(柱CFT造)、地下RC造
▽規模=地下1階地上32階建て延べ20万5785㎡
▽敷地面積=4万9547㎡
▽建築面積=9138㎡
▽駐車場=369台(自走式37台/機械式332台)
▽所在地=東京都港区港南1丁目2番6(地番)
▽竣工=2015年2月末予定
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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