2014/08/30

【現場最前線】手間惜しまない「計画シート」 イメージ共有で逆梁構造に挑む

「10年先の次世代オフィスという設計者(日建設計)の思いをしっかりカタチにしたい」とは、東京都渋谷区で建設が進む日本生活協同組合連合会の(仮称)第二プラザビル新築工事を担当するフジタの浜田剛所長。建物の環境性能を追求する中で採用された逆梁構造は作業床がなく、階ごとに仮設通路を設けながらの施工になる。「手間を惜しまず安全第一で取り組む」という意欲的な現場を訪ねた。
 作業員は、常に仮設通路を渡りながら資機材を運び入れる。「これがこの現場の作業風景」と浜田所長は苦笑いする。天井をコンクリート打放しですっきりと演出し、空調設備類を床下にしまい込める機能的な逆梁構造だが、施工時の手間は多くなる。梁が床スラブから突き出る状態となるため、ものを運ぶ際に作業員は梁をまたぐ必要があるからだ。

2階の梁高は1350ミリに達する
2階の梁高は1350mm、3階以上も750mmの高さがあり、各階の作業には仮設通路が欠かせない。「躯体や仕上げなど作業が違えば、運ぶ資材も異なるため、実は作業内容に応じてわざわざ通路を架け直さなければいけない」手間もある。
 近年多発しているゲリラ豪雨にやられてしまえば「逆梁ゆえに床がプールのようになってしまう」と、水抜き孔を部分的に配置する雨対策も施し、万全を期している。OAフロアの脚も高さ1000mm-1500mmという特注サイズを用意した。
 地下躯体も、通常ではあまり使われない技術を採用した。そもそも地下部には旧建物の駐車場があり、そこを解体して土留め擁壁を構築した後、基礎全体に耐圧盤の処理を施している。計22基の免震装置の上に乗った建物は「まるで大きな耐圧盤の船の上に乗っかっている」ようなもの。地下部から柱を垂直に上げてしまうと、地上階フロアの面積を最大限に確保できない。
 そこで地下から斜めに鉄骨を設ける対応が求められた。斜めに設置した柱は12本。長さは約10mだが、すべての角度は微妙に異なる。CADデータを基に鉄骨ファブリケーターが加工をしているが、現場設置では精度を合わせるのに一苦労した。「近年のプロジェクトでは地下との取り合いもあり、フロアの面積を確保する手段として採用されるケースがある。段取りどおりに精度良く施工できたことは次にも生かせる」と胸を張る。

工事計画シート
現在は4階部分の施工を進めており、出来高は4割を超えた。下の階では順次、内部仕上工事が進み、ピーク時には最大で250人もの作業員が現場に入る予定だ。こだわっているのは社員や現場作業員に「細かなイメージを持って作業を進めてもらう」ことだ。そのツールとして10年前から取り入れている『工事計画シート』を、ここでも有効に活用している。
 「細かな部分の納まりを絵にして説明すれば、相手に具体的なイメージを持ってもらえる。あえてCAD図を使わず、留意点を絵にする。ビジュアルによって心掛けも変わってくる」。これは設計者側への説明ツールとしても活用しており、了解後に施工図を描く流れによって、業務上の手戻りを抑える効果も発揮している。
 外壁には装飾の鎖樋を設置し、その後ろにつる植物によるグリーンブラインドを施す。溜めた雨水を屋上から給水し、まるで雨が降ったかのように建物を冷やす。「こうした細かな部分まで設計者のアイデアがふんだんに盛り込まれている建物だけに、現場がそれらをしっかりと理解することが欠かせない。次世代オフィスの実績は当社にとっても今後の大きな力になるだろう」
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▽工事名称=(仮称)第二プラザビル新築工事▽規模=SRC・S造地下2階地上8階建て延べ7351㎡▽設計=日建設計▽施工=フジタ▽完成=2015年3月予定
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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