こんな年が、かつてあっただろうか――次から次へと襲いかかる自然災害に翻弄(ほんろう)され続けた1年であり、欧州危機の影響による円高に泣かされた1年であった。2011年は年明け早々の噴火に始まり、巨大地震と大津波、台風による集中豪雨など、国や建設産業界はその復旧対応に追われ、国は4次に及ぶ予算編成を強いられた。地震によるサプライチェーンの寸断、電力供給に対する不安に加え、円高は製造業の海外移転を引き起こし、建設業の海外進出を加速させた。一方で、国土交通省の建設産業戦略会議は提言を発表、これからの建設産業の進むべき道筋を示した。社会資本整備に対する国民の視点も変わった。そうした意味では「転換の年」であり、新たな出発のための起点の年だったといえるのではないか。
◆災害列島・社会資本整備のあり方問い直す
年が明けて早々の1月、189年ぶりという霧島連山・新燃岳の火山噴火に始まり、3月の東日本大震災、7月の新潟・福島豪雨、9月上旬から下旬にかけての台風12号、15号豪雨と2011年は、まさに記録的な、そして記憶にも刻まれる自然災害に見舞われた年となった。その脆弱(ぜいじゃく)な国土にあって、社会資本整備のあり方が問い直された年であったとも言える。
救命の限度と言われる「72時間」以内にいかに救援ルートを確保するか。大震災で国土交通省東北地方整備局が実施した「くしの歯」作戦では、内陸部と津波被害が甚大な沿岸部を結ぶ16ルートのうち、発災翌日の12日にはじつに11ルートを啓開、迅速な救援活動につなげた。
こうした道路啓開には、自らも被災者である地元建設業が中心的な役割を担った。大津波警報が発せられた状況下での懸命の活動は、被害の拡大を防ぎ、初期復旧に大きく貢献。各地の豪雨災害における対応も含め、建設業が地域社会に果たす役割の大きさを改めて認識させた。
◆新日建連誕生・国民から信頼と理解得られる団体目指す
旧日本建設業団体連合会、旧日本土木工業協会、旧建築業協会(BCS)の合併表明からほぼ1年後の4月1日、新団体「日本建設業連合会」が発足した。今後は、一般社団法人への2013年4月移行に向け、定款改正を始め、支部規程の整備、運用方針の明確化などを進める。
◆建設産業戦略会議・地域維持型JVの導入など打ち出す
「建設産業戦略会議」が、『建設産業の再生と発展のための方策2011』をまとめた。「地域維持型契約方式」の導入や、保険未加入対策、技術者データベースの構築、入札契約適正化指針の改定などを打ち出した。
◆八ッ場ダム建設・入念に再検証事業継続決定
民主党のマニフェストで建設中止とされた八ッ場ダム(群馬県長野原町)は、再検証の結果、事業を継続することになった。馬淵澄夫大臣は「予断なき再検証」をうたい、関東地方整備局の事業評価監視委員会などが建設継続の妥当性を検討していた。
◆第4次補正予算案・当初から4次までの歳出総額107兆円
2012年1月の通常国会に提出する11年度第4次補正予算案を含め、11年度の当初予算から4次補正までの一般会計歳出総額は、107兆5105億円にのぼり、過去最大となった。4次までの補正予算を編成するのは極めて異例。
◆復興庁・復興特区・震災復興に向け2法案が可決
震災復興に向けて必要不可欠な2法案が成立し、復興施策に関する行政事務を一元化した復興庁が、来年2月にも発足する見通しとなった。11道県の222市町村を対象に規制緩和・支援する復興特別区域法に基づく申請受付も、同時期から始まる。
◆改正PFI法・コンセッション方式を創設
5月24日、改正PFI法が成立した。これまでにない大改正で、インフラや公共施設などの運営権を民間に与える「コンセッション」などを盛り込んだのが特徴だ。政府の旗振り役として、首相が会長を務め関係閣僚が参加する「民間資金等活用事業推進会議」も内閣府に設置された。
◆TPP対応・交渉参加へ関係国と協議入りへ
参加交渉の是非をめぐって、与野党ともに議論が二分していた、TPP(環太平洋経済連携協定)への対応について野田首相は11月、APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議で、「交渉参加へ向け関係国と協議に入る」ことを表明した。TPPは農業や金融サービスなど非関税項目含め自国産業保護や独自策の維持が難しいとの指摘もあり、いまだ慎重論も根強い。
◆ゼネコンの海外強化・受注目標の上ブレ相次ぐ
円高、電力不足を背景に生産拠点を海外に移転する企業が続出、タイの洪水などを教訓に拠点を分散化する要求も高まり、ゼネコン各社は相次ぎ海外事業の強化に舵(かじ)を切った。ブータンでは丸新志鷹建設(富山県立山町)が日本企業として初めて政府発注工事を受注した。
◆UIA東京大会・連携・連帯強め新たな建築界へ
9月末に開かれた国際建築家連合(UIA)2011東京大会には、海外約1900人を含む5000人以上が参加した。東日本大震災によって開催すら危ぶまれたが、それが逆に国内建築界や海外建築家との結びつきを強め、連帯感を生み出すことにつながった。
◆節電対策・現場で発電機の導入など進む
福島第一原子力発電所の事故を受けて、2011年の夏は企業や一般家庭を問わず、節電が求められた。建設業でも室内設定温度の変更やクールビズの延長に加えて、サマータイム制の導入、夏季休暇の長期化や分散化などが進んだ。
◆鉄道プロジェクト・九州新幹線博多~鹿児島中央間開通
3月12日に九州新幹線博多~鹿児島中央間が全線開通した。4月29日には青森から鹿児島まで新幹線がつながった。12月には政府が、整備新幹線の未着工3区間について、11年度内にも着工を認める方針を固めた。また、リニア中央新幹線も、建設に向けて大きく進展した年でもあった。
◆災害列島・社会資本整備のあり方問い直す
年が明けて早々の1月、189年ぶりという霧島連山・新燃岳の火山噴火に始まり、3月の東日本大震災、7月の新潟・福島豪雨、9月上旬から下旬にかけての台風12号、15号豪雨と2011年は、まさに記録的な、そして記憶にも刻まれる自然災害に見舞われた年となった。その脆弱(ぜいじゃく)な国土にあって、社会資本整備のあり方が問い直された年であったとも言える。
救命の限度と言われる「72時間」以内にいかに救援ルートを確保するか。大震災で国土交通省東北地方整備局が実施した「くしの歯」作戦では、内陸部と津波被害が甚大な沿岸部を結ぶ16ルートのうち、発災翌日の12日にはじつに11ルートを啓開、迅速な救援活動につなげた。
こうした道路啓開には、自らも被災者である地元建設業が中心的な役割を担った。大津波警報が発せられた状況下での懸命の活動は、被害の拡大を防ぎ、初期復旧に大きく貢献。各地の豪雨災害における対応も含め、建設業が地域社会に果たす役割の大きさを改めて認識させた。
◆新日建連誕生・国民から信頼と理解得られる団体目指す
旧日本建設業団体連合会、旧日本土木工業協会、旧建築業協会(BCS)の合併表明からほぼ1年後の4月1日、新団体「日本建設業連合会」が発足した。今後は、一般社団法人への2013年4月移行に向け、定款改正を始め、支部規程の整備、運用方針の明確化などを進める。
◆建設産業戦略会議・地域維持型JVの導入など打ち出す
「建設産業戦略会議」が、『建設産業の再生と発展のための方策2011』をまとめた。「地域維持型契約方式」の導入や、保険未加入対策、技術者データベースの構築、入札契約適正化指針の改定などを打ち出した。
◆八ッ場ダム建設・入念に再検証事業継続決定
民主党のマニフェストで建設中止とされた八ッ場ダム(群馬県長野原町)は、再検証の結果、事業を継続することになった。馬淵澄夫大臣は「予断なき再検証」をうたい、関東地方整備局の事業評価監視委員会などが建設継続の妥当性を検討していた。
◆第4次補正予算案・当初から4次までの歳出総額107兆円
2012年1月の通常国会に提出する11年度第4次補正予算案を含め、11年度の当初予算から4次補正までの一般会計歳出総額は、107兆5105億円にのぼり、過去最大となった。4次までの補正予算を編成するのは極めて異例。
◆復興庁・復興特区・震災復興に向け2法案が可決
震災復興に向けて必要不可欠な2法案が成立し、復興施策に関する行政事務を一元化した復興庁が、来年2月にも発足する見通しとなった。11道県の222市町村を対象に規制緩和・支援する復興特別区域法に基づく申請受付も、同時期から始まる。
◆改正PFI法・コンセッション方式を創設
5月24日、改正PFI法が成立した。これまでにない大改正で、インフラや公共施設などの運営権を民間に与える「コンセッション」などを盛り込んだのが特徴だ。政府の旗振り役として、首相が会長を務め関係閣僚が参加する「民間資金等活用事業推進会議」も内閣府に設置された。
◆TPP対応・交渉参加へ関係国と協議入りへ
参加交渉の是非をめぐって、与野党ともに議論が二分していた、TPP(環太平洋経済連携協定)への対応について野田首相は11月、APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議で、「交渉参加へ向け関係国と協議に入る」ことを表明した。TPPは農業や金融サービスなど非関税項目含め自国産業保護や独自策の維持が難しいとの指摘もあり、いまだ慎重論も根強い。
◆ゼネコンの海外強化・受注目標の上ブレ相次ぐ
円高、電力不足を背景に生産拠点を海外に移転する企業が続出、タイの洪水などを教訓に拠点を分散化する要求も高まり、ゼネコン各社は相次ぎ海外事業の強化に舵(かじ)を切った。ブータンでは丸新志鷹建設(富山県立山町)が日本企業として初めて政府発注工事を受注した。
◆UIA東京大会・連携・連帯強め新たな建築界へ
9月末に開かれた国際建築家連合(UIA)2011東京大会には、海外約1900人を含む5000人以上が参加した。東日本大震災によって開催すら危ぶまれたが、それが逆に国内建築界や海外建築家との結びつきを強め、連帯感を生み出すことにつながった。
◆節電対策・現場で発電機の導入など進む
福島第一原子力発電所の事故を受けて、2011年の夏は企業や一般家庭を問わず、節電が求められた。建設業でも室内設定温度の変更やクールビズの延長に加えて、サマータイム制の導入、夏季休暇の長期化や分散化などが進んだ。
◆鉄道プロジェクト・九州新幹線博多~鹿児島中央間開通
3月12日に九州新幹線博多~鹿児島中央間が全線開通した。4月29日には青森から鹿児島まで新幹線がつながった。12月には政府が、整備新幹線の未着工3区間について、11年度内にも着工を認める方針を固めた。また、リニア中央新幹線も、建設に向けて大きく進展した年でもあった。