2013/05/17

【BIM】双方向でシミュレーション SGカンファレンスinロンドン

マス目が映写されたテーブルの上に白い箱を置くと、オレンジの影が伸びる。置く場所やアングルを変えると影が変化する=写真。4月中旬に4日間、ロンドン大学建造環境学部バートレット校で行われたスマートジオメトリー(SG)ワークショップの一幕だ。影は、建物に対する日射や日影というCAD空間にはない現実の要素をシミュレーションしたもの。近年、日本で見られる3次元モデルを使った日影シミュレーションとは、いくつかの点で異なる。まず、コンピューターの外で操作するため、クライアントなどもその過程に参加でき、双方向の設計プロセスが可能になる。さらに、シミュレーション結果もリアルタイムに表れる。

ロンドン大学建造環境学部バートレット校
ここでは、箱の動きをとらえるセンサーや解析ツール、「ジェネレーティブ・コンポーネンツ」などの生成的設計ツールが使われている。

◇世界から100人参加

 これらのワークショップは、テーマごとに10班(クラスター)に分かれて行われた。テーマは、世界中から68件が寄せられ厳選されたもの。参加者は、応募のあった約200人のうちの約100人。既存の設計ツールではなく、自ら新たな設計アプローチを探ろうと、各国から集まってきた建築設計の実務に携わる人や研究者、学生たちだ。
 日本人で唯一、参加したのは、英グリムショウ・アーキテクツに勤める野村映之さん。日本の大学を卒業後、12年前に渡英。学生のころにパラメトリック・デザインを独学で学び、現在では日々デザインツールとしてさまざまなプロジェクトで活用している。プログラミングができる「アーキテクト」だ。SGには、「仕事で活用しているパラメトリックデザインの可能性の幅を広げるため」事務所の許可を得て参加。同事務所からは毎年参加者を出しているという。

◇英国では一般的

 3次元モデルのパラメーターを操作して、さまざまなバリエーションを生成するパラメトリックデザインには、一定のルールをコンピューターに指示するスクリプトを書くのが一般的だ。フォスター・アンド・パートナーズには、「プログラミングできる人材がアーキテクトだけで約40人いる」(ザビエ・デ・カステリア大会ディレクター)。
 英国でコンピュテーショナル・デザインが盛んな背景として、こうしたリテラシーの高さが挙げられる。2012年には、ゴーブ英教育相が既存ソフトの操作に偏重したICT(情報通信技術)教育課程からの脱却を打ち出し話題を呼んだが、今後も長期的にICT基礎体力の高い建築家が増加していくと言えそうだ。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年5月15日

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