「一つの建物によって周りの風景がよみがえったんです。目の前を流れる『古川』そのものや植生していた木々も建物を通して再生され、昭和の古き良き時代を彷彿させると同時に新しい時代を予感させる風景がよみがえった。建築家の構想力に驚嘆するとともに素晴らしい体験をさせていただきました」。慶應大教授の金子郁容さんが慶應義塾幼稚舎長だった2002年、「幼稚舎新館21」建築で建築家・谷口吉生さんの設計に触れた時の印象である。とりわけ半地下(周りを掘って一段低くした「サンクン(sunken)」スタイル)の食堂という発想にびっくりした。自然に囲まれ、太陽の光が降り注ぐ屋外のような大空間は、「緑の中のレストランという感じでした」と話す。