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建設工事の動きDigital

建設専門紙が本気でつくった工事データベース

2012/01/31

土木好きにはたまらない!?橋梁とトンネルを切手にしてしまったNEXCO中日本

 優れた土木構造物に贈られる「田中賞」。これは土木技術者にとってのあこがれの的だ。4月14日に開通が決まった新東名の橋やトンネルにも、田中賞を受賞したものがいくつかある。NEXCO中日本が、これらの構造物を切手にしてしまった。

スノボのオリンピック選手、家根谷さんが大林組に入社

 スノーボード・アルペンで冬季五輪2大会連続出場の家根谷依里(やねたに・えり)選手が大手ゼネコンの大林組に入社する。家根谷選手は「出身地の関西からオリンピックに出たいという気持ちが強いので、同じく関西を発祥とする大林組の一員となるのは心強い。東京スカイツリーのような世界一の仕事をしている会社の皆さんと歩めることは刺激になる」と話している。

「所在不明のコンサルは認めない」。国交省が登録消除始める

 国土交通省が2011年7月に改正した「建設コンサルタント登録規程」に基づく所在不明者の登録消除手続きが始まった。30日付で関東地方整備局が、所在不明の建設コンサルタントについて、申し出がない場合に消除する旨を官報に公告した。連絡が付かない企業については今後、順次、消除手続きを進める。

2012/01/30

国交省がまったく新しいJV制度を導入/除雪や災害応急復旧は地域建設業が担う


災害時、非常時に
地域建設業が果たす役割は、実はとても大きい
  最近、地方建設業者が急速に減少し、道路、河川の維持管理、除雪、災害時の応急対応までも困難になりつつある。これは建設投資の大幅減などで、多くの建設業者が倒産したり、重機を維持できなくなったことが原因だ。
 国土交通省では、これら地域で複数の建設業者による共同企業体(JV)を結成し、持続的に維持管理を任せる「地域維持型JV(地域JV)」の導入を始めた。

史上初!162㌔を一括開通/4月14日から新東名御殿場~三ヶ日JCT


 新東名高速道路御殿場ジャンクション(JCT・静岡県御殿場市)~三ヶ日JCT(浜松市北区)間の約162㌔が、4月14日午後3時に開通する。当初予定を約1年前倒ししての開通だ。

「被災地がれきを受入れて」埼玉県が横瀬町と熊谷市に要請

 東日本大震災で大量に発生した東北地方の震災がれき受け入れを表明している埼玉県は、県内に大型廃棄物処理工場を持つ三菱マテリアル(横瀬工場)と太平洋セメント(熊谷工場)の両社に岩手県内で発生したがれき処理の可能性について打診、「技術的に可能」と前向きな回答を得た。

2012/01/27

福岡県美しいまちづくり建築賞大賞に「築上町火葬場」

「築上町火葬場」
 福岡県の第24回美しいまちづくり建築賞の受賞作品が決まった。大賞は一般建築部門が「築上町火葬場」、住宅部門が「むさしヶ丘の住宅」。3月18日に太宰府市の九州国立博物館で開く福岡県景観大会で表彰式を行う。
 今年度の応募数は、住宅30点、一般建築39点の計69点だった。大賞の「むさしヶ丘の住宅」は、陶芸作家の創作展示活動ができる職住一体型の斬新な住宅景観の創出や木構造と仕上げの一体化などが、「築上町火葬場」は、人の死を見送る空間を地域の人々の心象風景と結びつけ、一遺族一炉システムにまとめた工夫のある建築計画が、それぞれ評価された。
 受賞作品の概要は次のとおり(①建築主②設計者③施工者)。
 =大賞=〈住宅部門〉▽むさしヶ丘の住宅=①個人②NKSアーキテクツ(末廣香織+末廣宣子)③小松工務店。
 〈一般建築部門〉▽築上町火葬場=①築上町②アール・アイ・エー③松山建設(建築)、松田組(外構)。
 =優秀賞=〈住宅部門〉▽小倉タナカ邸=①個人②田中昭成ケンチク事務所(田中昭成+POI+なわけんジム+Lapin)③千葉工務店。
 〈一般建築部門〉▽うきは市総合体育館うきはアリーナ=①うきは市②黒川哲郎+デザインリーグ③東洋・ヤマザキJV。
 =福岡県建築住宅センター奨励賞=▽小石原の家=①個人②森裕建築設計事務所②時川建設。
 ▽にしで歯科=①にしで歯科医院②設計機構ワークス③イノウエハウジング。
AmazonLink: 16TH DESIGN REVIEW 2011 IN FUKUOKA デザインレビュー2011/福岡全記録

福島豪雨で流失のJR東日本只見線第7只見川橋の撤去進む/東鉄工業

 東鉄工業は豪雨で河川に流失した東日本旅客鉄道(JR東日本)の只見線第7只見川橋りょう(福島県金山町)の撤去工事を進めている=写真。2011年7月の新潟・福島豪雨で只見川が氾濫した水圧や流木で、上路プレートガーダーと上路ワーレントラスが流失した。クローラクレーンを配し、橋桁部材を分割切断して撤去する。工事はJR東日本が発注、昨年12月下旬から本格的な撤去工事に着手し、11年度中の完了を目指している。
 JR只見線は第7只見川橋りょう以外にも複数の橋りょうや鉄道施設が被害を受け、現在も会津川口駅から大白川駅までの区間で運転を見合わせている。撤去工事の現場は、この地方で一番の豪雪地帯で、冬場の作業は困難を極めることが予想されたため、被災後すぐに工事の計画に着手した。また、只見川は電源立地個所にあり、早期に河川内流失物を撤去する必要があった。
 撤去工事は橋桁の構造、流失状況、地形や河川、周辺道路状況を考慮し、左岸側に隣接する町営運動公園内に作業ヤードを設けた。施工計画では、クレーンで撤去する1回当りの部材重量を6t未満として進めている。地上からの撤去作業を進めるとともに、河川敷地内からの施工も計画、撤去作業を加速させたい考えだ。
 東鉄工業東北支店の冨樫英樹工事所長が現場を指揮、池田正臣監理技術者が所長を支える。
 池田監理技術者は今回の工事のために東京から急遽派遣、関係機関との協議や施工計画まで、全体的な施工監理を担当している。「奥会津の豪雪と寒さの厳しい作業環境の中、協力会社ともに遅い春までには無事故で完了させたい」(池田監理技術者)。

最優秀にヨックモッククレア日光工場/日鉄住金鋼板の建築デザインコンテスト

「ヨックモッククレア日光工場」
撮影:シンフォトワーク宮本真治
 日鉄住金鋼板は、同社の壁や屋根材を使った建築デザインを表彰する「NISCイソバンドデザインコンテスト」の結果を発表した。グランプリには大成建設設計のヨックモッククレア日光工場が選ばれ、担当した古市理、小林真弓、勝又洋の3氏に表彰状と賞金50万円が贈られた。 完成写真による審査で、商品の特性を生かし、新しい時代に向けたデザイン性などをテーマにした。ことしで6回目となる。
 コンテストは、日鉄住金鋼板のイソバンド(壁用)、エスガード(同)、イソダッハ(屋根用)を使い、2011年10月末までに完成した建築物、構造物を対象としている。
 応募対象は建物の施主、設計者、施工会社で、304件の応募があり、審査委員の建築家・芦原太郎氏、建築家・小嶋一浩氏、武田厚日鉄住金鋼板社長の3人が昨年審査会を開き、グランプリ1点、優秀賞2点、部門賞5点、審査委員賞3点を決めた。
 グランプリ作品は、洋菓子会社の拠点工場。スウェーデン北部のヨックモック地域の柔らかな曲線的風景になぞらえて「ヨックモックの森を創る」をテーマとした。
 緩やかに起伏するランドスケープとコントラストする200mの大壁(イソバンドAウェーブ)が特徴だ。

2012/01/26

3名様に"ファイナルデータ10plus"をプレゼントします

 AOSテクノロジーズの「ファイナルデータ10plus 特別復元版」を3名様にプレゼントします。今回、同社とのコラボレーション企画で、ソフト3本を提供して頂きました。メールでご応募頂いた方に、抽選でプレゼントします。
 左のメールアドレスあてに、お名前と「復元ソフトプレゼント希望」とお書きになり、ご応募ください。当選者には、送信されたメールアドレスに返信いたします。その際は、ご住所などをお知らせ頂きます。(メールアドレスなどは、このプレゼントの目的のみに使用します)
 2月3日(金)までにメール頂いた方を対象に抽選いたします。よろしくお願い申し上げます。

消してしまった図面や工事写真ありませんか?セクタスキャン機能持つ復元ソフト

 AOSテクノロジーズ(本社・東京港区、佐々木隆仁社長)は、誤って消去したファイルを復元できるソフトに、セクタースキャン機能を付加した「ファイナルデータ10plus 特別復元版」を開発、26日から販売を始めた。
 ハードディスクやメモリーカードのほか、ファイルサーバーなどに使われるRAIDディスクの再構築などにも使える。CADで作成した図面ファイルや、工事写真などのデータを誤って消した場合でも、ディスクの物理的な最小単位「セクター」までスキャンして、失ったファイルを復元できるのが特徴だ。
 また携帯電話に使うSDカードや、ビデオカメラの動画なども復元する機能や、メールソフト上で消してしまったメールや添付ファイルも復元できるという。同社では、このソフトシリーズは、12年間連続で市場シェアトップだという。価格は1万1340円(税込み)。問い合わせは同社・電話03-6809-2530。

藻から航空機燃料生産/筑波バイオテック研が茨城県阿見町に新工場

 バイオエコ燃料などの製造・販売を手掛ける筑波バイオテック研究所(茨城県つくば市、前川孝昭社長)が、茨城県阿見町にバイオ航空機燃料工場の建設を計画している。これは微細藻類から抽出した油から航空機燃料を製造するプラントだ。 20haの土地で藻油を生産し、BDFを炭化水素化したバイオ航空機燃料として供給する。当初の生産能力は、年産3000㌔リットル程度だが、10年後には同10万㌔リットル程度まで拡大したい考えだ。
 微細藻類は、筑波バイオテック研究所が開発し、油脂含有率70-80%を誇る「New Strain X」(NSX、国内特許生物寄託済み、国際特許出願準備中)を採用する。 航空業界では、20年までに航空機燃料の10%をバイオ航空機燃料で代替する計画があるため、10年間で50億円以上を投資して備える。
 設計は直営で進めており、プラントはプラントメーカーに発注する。土木・建築工事は2月中にも施工者を決める。3月下旬に着工し、5月下旬の完成、試験操業を経て9月1日以降の本格生産開始を目指す。
 建設地は、首都圏中央連絡自動車道・阿見東インターチェンジに近い阿見東部工業団地のうち、17-3号画地(阿見町大字星の里26-1)1万4319㎡。

補強、建替など3案提示/京都市中央卸売第一市場、青果棟を耐震化

現在の市場
 京都市が中央卸売市場第一市場を再整備する。老朽化が進む青果棟の耐震化方策として、耐震補強、部分建て替え、全面建て替えの3案を基本計画に盛り込んだ。また整備手法にPFIなど民活手法も検討する。3月に開かれる同市場運営協議会で審議し、12年度早期に成案化する。同年度から14年度にかけて、改訂版を踏まえた具体的な市場整備計画を検討し、15年度に策定する新マスタープランに反映させる。
 青果棟耐震化方策のうち、耐震補強案は、敷地内に仮移転先を確保し、順次、耐震補強を行う。工期は6-9年と最短で、コストも最も低いが、近い将来大規模改修が必要となるほか、新たな市場機能を導入しにくいなどのデメリットがある。
 部分建て替え方式は、敷地内に仮移転先を確保した上で、青果棟と関連棟を合わせて建て替える。工期は9-12年を見込む。
 全面建て替え方式は、青果棟・水産棟・関連施設など市場全体を全面的に建て替える。工期は14年-15年を想定している。
 部分建て替えと全面建て替えは、施設を稼働させながら、“ころがし方式”などで建て替える。土地の立体的活用や余剰地の処分、新たな市場機能導入が可能となる。
 同市場(下京区朱雀分木町80)は、全国初の中央卸売市場として、1927年に開設された。敷地面積は14万7192㎡。 主要施設のうち、築30年以上が経過した青果棟は 耐震性が不足しており、耐震化が急務となっている。
 施設は、青果棟が3棟総延べ2万6359㎡の規模。このほか、水産棟総延べ2万7176㎡、冷蔵庫総延べ1万0637㎡、業者事務所総延べ2万9746㎡、関連事業者店舗1万4840㎡。
 整備に当たっては、食文化の拠点として市民に開かれた市場とするほか、建設中の京都水族館など近隣施設と連携し、にぎわいを創出する。

民主党東日本大震災復旧・復興検討プロジェクトチーム座長激怒/地元議員が不参加

 「福島県選出議員が出席しないなんておかしい。なにを考えているんだ」
 民主党の東日本大震災復旧・復興検討プロジェクトチームの櫻井充座長は25日の会合後、記者団に向けて不満を爆発させた。これは政府提出法案の「福島復興再生特別措置法案」に焦点を当てた議論に、地元福島県選出の民主議員が一人も出席していないことへ対するもの。
 25日の会合は、東日本復旧・復興検討PTと原発事故収束対策PTの合同会議で、政府が2月上旬に提出予定の福島復興再生特措法案がテーマだった。同特措法案は、原発事故で深刻な影響を受け、「いまだ15万人が(震災前の居住地に)戻れず避難生活を強いられている」(荒井聡原発事故収束対策PT座長)ことを踏まえ、福島の復興・再生のための基本方針や、避難解除区域の復興・再生、産業再生などの特別措置が目的。
 そのため、特措法案の議論に参加した議員は10人程度にとどまったことや、福島を対象にした特措法議論に地元、福島選出議員が参加しなかったことに、櫻井座長が、世界からも注目を集めている震災からの復興や原発被害地域の今後に注力する政権与党に所属する議員の意識に対し強い不満を示した。

2012/01/25

BIMで施工図に命吹き込む/新菱冷熱でベテランが新人教育

 新菱冷熱工業は今期から、新入社員向けにBIMの集中研修を取り入れた。本来なら翌年2月まで行っていた現場研修を11月で切り上げ、全員を本社で行うBIMによる施工図教育に切り替えた。先端設計ツールと、古くから先輩後輩間で伝承されてきた施工図教育を組み合わせて行う新たな研修方法だ。
 東京・四谷にある本社別館のワンフロアで44人の新入社員が、マルチモニターを前にS-CADという同社独自のBIMツールを使って施工図を書いている。提出された施工図には、同社のベテラン社員が赤いペンで真っ赤になるまで修正点を書き込む=写真。
 「ゼネコンの総合図とは違って、われわれが描く施工図は、納まりやメンテナンス検討、搬入計画にもストレートに影響する。そのノウハウは設備工事を担うわが社のノウハウであるべき」と、同社の岸本洋喜専任課長は話す。
 現場業務が忙しくて外注してしまうことも多い施工図だが、「施工図が描けなければ、他人の描いた図面もチェックできない」と、同社では徹底的に施工図を描けるように研修する。
 今期入社で研修を受けている小舘雄気さんは「情報交換しやすく、ほかの人のやり方がよく分かる」と研修の成果を話す。
 この研修の受け皿となる「施工図推進センター」を立ち上げたのは1年半前。その後、ビルのワンフロアを教育センターとして整備し、新人以外に若手社員も含めて施工図教育をスタートさせた。
 同社独自のS-CADは、ベントレー・システムズのマイクロステーションをベースにしたDesignDraftを、新菱冷熱向けにカスタマイズしたもの。同社は、BIMという先端ツールで、施工の要とも言える施工図に命を吹き込もうとしている。

「アウトレットパーク木更津」第1期171店舗が4月13日オープン

 三井不動産と、ららぽーとマネジメントが、千葉県木更津市に建設中のアウトレットパークの概要を発表した。施設名称は「三井アウトレットパーク木更津」で、4月13日に第1期171店舗をオープンさせる。 第1期店舗の規模はS一部木造平屋建て3万6670㎡。このうち約2万8000㎡を店舗面積に充てる。海、森、街のゾーンに分類し、リゾート感と開放感あふれた空間構成とする。約650席のフードコートは、クルーザーの甲板をデザインした。171店舗のうち、アウトレット店は148店。日本初出店の21店舗を含めた関東地方初出店は46店舗にのぼる。 ショッピングセンターでは「東日本最大規模」(三井不動産)となる約600㌔ワットの太陽光発電パネルを設置。共用部照明でのLED(発光ダイオード)採用はもちろん、テナントの照明も原則LEDとする。発電機搭載型ガスヒートポンプや、電気自動車充電設備も設ける。これらにより既存の同社商業施設に比べ使用電力を20%削減する見込みだ。 第1期工事の設計は三井住友建設、施工は三井住友建設・みらい建設工業・三井ホームJVが担当している。本体工事の進ちょく率は1月末で72%に達し、2月末でほぼ完成、3月15日に竣工・引き渡しとなる予定だ。 来場者の割合は、東京・横浜方面から7、8割、千葉県内から2、3割、海外からの観光客も見込む。敷地内駐車場は約4300台で、オープン時には敷地外を含め7000-8000台分を確保する。 今後、第2期、第3期と拡張を進め、最終的に店舗面積約4万㎡、200-250店舗とする計画だが、具体的な建設時期は、自動車の渋滞など周辺状況をみながら判断する。 建設地は、東京湾アクアライン・木更津金田インターチェンジから約1㌔に位置する木更津市中島398の敷地約21・5ha。

「気配り」に満ちた山本理顕の世界『RIKEN YAMAMOTO 山本理顕の建築』

 山本理顕氏は、自らを「気配り」の建築家であると評している。この建築家の34年間にわたる活動が記録された本書には、延べ68㎡の「山川山荘」(1977年竣工)から延べ27万㎡のチューリッヒ空港関連施設「The Circle」(2017年完成予定)まで、規模も用途も、デザインも素材も異なる29作品が掲載されている。
 一見、ひとりの建築家から生まれたとは思えない。しかし、物語のように本書を読み進めていくうちに、どの建築も、環境、社会、地域、未来、クライアントに対する同氏の気配りを感じるところが一貫していると気づく。 約320ページの大半を、スケッチ、写真、図面に割いているが、論評も興味深い。建築空間は「施設」か、1戸の住宅に1家族が住むというのは絶対か--と、人びとが前提としている思い込みを取り払っていく。震災(おそらく東日本大震災)の被災者に会ったことで、都市に暮らす私たちが当然のように思っている「プライバシー」についても、ある言及をしている。
 社会と人の関わりを大切にした建築、崩壊した地域社会のコミュニティーを回復する住宅を思考する。こうした山本氏の考え、態度や建築を理解するのに絶好の書だ。 新工法と結びついた住民参加型の設計で、22回も平面図を描き直し、実施設計まで完了しながら幻となった「邑楽町役場庁舎」も収録。 amazonへのリンク RIKEN YAMAMOTO 山本理顕の建築

2012/01/24

仙台塩釜港で北米航路が再開/第1便がロスへ出航

 東北最大の国際物流拠点が復活--。東日本大震災で甚大な被害を受けた仙台塩釜港(仙台港区)の高砂コンテナターミナル2号岸壁の供用と北米定期航路の再開を祝う式典が22日、仙台市宮城野区の同ターミナルで開かれた=写真。東北地方の港湾で唯一、北米西岸にダイレクト輸送できる定期航路の再開は輸出企業を始め、地域経済復興の大きな弾みになりそうだ。
 高砂2号岸壁は震災により、本体が海側で最大70cm程度はらみだしたほか、全体が約50cmも沈下した。
 さらに基礎杭の一部が損傷し、ガントリークレーン用のレールも蛇行するなど、使用不可能な状態となり、内陸部に立地するタイヤメーカーなどの輸送コストの増大を招いていた。
 東北地方整備局は北米航路の早期再開に向けて8月から復旧工事に着手。24時間3交代制で工事を進め、わずか4カ月で全長330mのうち270mの供用再開にこぎ着けた。残る60m分を含めた完全復旧は2015年3月末を予定している。
 この日は、日本郵船など3社が共同運航する大型コンテナ船「エヌワイケー アーガス」(約7万5500t)が震災以来、約10カ月ぶりに同岸壁に接岸。製材や牧草などの積み荷を降ろす一方、自動車用タイヤなどを積み込み、午後6時過ぎにロサンゼルス港に向けて出航した。
 式典には、加藤由起夫国土交通省官房審議官や三浦秀一宮城県副知事、鎌田宏仙台国際貿易港整備利用促進協議会長ら約70人が出席。三浦副知事は「高砂2号岸壁は東北の国際貿易の要所であり、自動車関連や高度電子機器産業の集積が進む中、さらなる成長が期待される。早期の北米航路再開は、東北の復旧・復興を大きく後押しするものだ」と述べた。
 鎌田会長も「仙台塩釜港の復活なくして、東北の復旧・復興はなし得ないという思いから早期に復旧作業が行われてきたが、今回の北米航路の再開により、復興に大きな弾みがつく。協議会としても積極的なポートセールスを展開していきたい」と語った。

瀬戸市が新庁舎整備でエスキスコンペ/2月10日まで要項配布

基本構想に掲載されている整備イメージ
 愛知県瀬戸市は、市庁舎整備の設計者エスキスコンペを始める。現市庁舎は竣工以来50年以上を経過した南側部分と、増築を重ねた部分で構成されており、早期の建て替えを模索していた。提案の前提として、東日本大震災による自治体庁舎などの被災事例を踏まえることを求めている。
 市では、2月10日まで募集要項を配布、同6日から10日まで参加表明書を受け付ける。同14日には提案書提出要請書を送付し、3月7-15日にかけて提案書を募る。同月下旬の1次審査で配置計画、平面・立面・断面プラン、設計思想などを評価して5者に絞り込み。4月中旬の2次審査(プレゼンテーション、ヒアリング)で最優秀者を選定する。2次審査の参加者には報償費10万円を支払う。
 市の入札参加資格がある一級建築士事務所が対象で、総括責任者は2002年から11年までに国内で完成した建築物のうち、延べ4000㎡以上の庁舎か、延べ6000㎡以上の類似施設(銀行、総合病院、図書館など)の基本設計または実施設計を履行した実績があること。
 市の基本構想によると、新庁舎は、既存庁舎(追分町64-1ほか)北側の駐車場敷地に建設する。完成後は老朽化した現庁舎南側部分を解体する。増築を繰り返してきた現庁舎北側部分は、耐震補強や設備更新を行うとしている。既存庁舎の活用部分を含めた規模は1万2600㎡程度を基本とする。このうち新増築は延べ6390㎡程度となる見通し。解体工事なども含めた事業費は約27億円を想定している。
 設計者の選定後、順調に進めば、4月から7月までを基本計画・設計、8月から13年5月までを実施設計に充てる。建設工事については、13年7月から14年12月までを新棟建設期間とし、15年1月から新棟で業務を開始する。15年1月から16年2月にかけて既存庁舎の改修や外構工事を行うスケジュールとなっている。
市のHP→
http://www.city.seto.aichi.jp/docs/2012011700037/

D.I.G Architectsの"Sunlight of Calm"など7作品に/愛知のまちなみ建築賞

受賞作の Sunlight of Calm
 愛知県は、第19回「愛知まちなみ建築賞」の受賞7作品を発表した。 同賞は、愛知県内で新しい建築文化の創造に寄与し、魅力的な景観形成に貢献している建築物や町並みを表彰する。
 今回は2006年4月1日から11年8月20日までに建築・改修された作品を対象に募集し、116作品の推薦と応募があった。 表彰式は2月1日、名古屋市東区の愛知芸術文化センターで開く。選考委員長の有賀隆早大理工学術院教授が総評を述べた後、受賞者が作品についてプレゼンテーションを行う。 受賞7作品は次のとおり(①所在地②用途③建築主④設計者⑤施工者、敬称略)。
 ▽Sunlight of Calm=①名古屋市名東区代万町1②長屋③石川真也④D.I.G Architects 吉村昭範+吉村真基⑤アーキッシュギャラリー。
 ▽しっぽうちょう調剤薬局=①あま市七宝町桂深田②調剤薬局③ミッテル④五藤久佳デザインオフィス⑤田中建設。
 ▽総合病院南生協病院=①名古屋市緑区大高町②病院、助産所、飲食店、物品販売業を営む店舗③南医療生活協同組合④日建設計⑤竹中工務店名古屋支店。
 ▽飛島村立小中一貫教育校飛島学園=①飛島村大字松之郷3②小学校・中学校③飛島村④石本建築事務所名古屋支所⑤村本建設・渡辺工務店・飛島木材特定建設工事共同企業体。
 ▽豊田市自然観察の森ネイチャーセンター=①豊田市東山町4②環境学習施設③豊田市④遠藤克彦建築研究所⑤熊谷・斎藤建設共同企業体。
 ▽中舛竹田荘=①名古屋市緑区有松②老人デイサービスセンター、高齢者優良賃貸住宅③竹田敏彦④加藤設計⑤OPUSスタイル。
 ▽名古屋市科学館理工館・天文館=①名古屋市中区栄2②科学館③名古屋市④日建設計、名古屋市住宅都市局営繕部住宅・教育施設課⑤竹中・TSUCHIYA・ヒメノ特別共同企業体。

2012/01/23

サッカーボールみたいな仮設集会所が完成/立命館大の宮古復興支援プロジェクト ODENSE

 本州最東端に位置する岩手県宮古市の重茂千鶏地区の仮設住宅敷地内に、サッカーボールを思わせるような形状の仮設集会所が完成した。立命館大学理工学部の宗本晋作准教授(建築都市デザイン学科)を中心に30人の学生が参加して取り組んだ「宮古復興支援プロジェクト-ODENSE(おでんせ)」だ。1月9日に開かれた竣工式では学生と地元関係者など150人を超える出席者が集い、新たな交流の場の誕生を祝った。
 同市中心部から車で約1時間。海沿いを走る県道1本で結ばれている同地区は高さ30mを超える巨大津波によって壊滅的な被害を受け、震災後約2週間にわたって孤立した。地域の交流の場として機能していた介護施設も津波で流され、その代替施設を市社会福祉協議会が模索していることを被災地視察に訪れていた宗本准教授が耳にしたのがきっかけとなってこのプロジェクトはスタートした。
内部で行われた式典
 「住めるところは確保できたが、みんなの集まる場所がない」という悩みを解消するため、簡易な集会所の建設を発案。教職員の主体的な復興支援活動に対する同大の予算措置事業にも採択され、昨年8月から現地でのヒアリングを開始した。ごろ寝ができるスペース、身障者用トイレや炊事場……。住民の要望を受けてよりスペックの高い施設へと構法や使用材料を見直し、設計を練り直す。こうして導かれた施設は一辺2mの六角形の木製パネルと窓となる五角形のパネルを組み合わせたドーム型とすることで空間の広さや強度、採光を確保した。日新工業など12社が協賛し資材などを提供している。
 11月からの工事には20人の学生が常駐し、地元の大工棟梁の指導を受けながら作業に取り組んだ。約86㎡の集会所はデイケアサービスや交流の場として活用される。
 学生リーダーの一人、酒谷駿一さんは「自分たちだけではできなかった。私たち学生を受け入れ、支えて頂いた地元の皆さんのおかげです」と半年にわたる活動を振り返る。宗本准教授も「建築のプロセスを学ぶとともに、地元の皆さんとの交流を通して、困難の中で生きる姿勢を目の当たりにして学生は大きく成長した。今後も私たちができることで復興の役に立ちたい」と話している。

スギ花粉 アレルゲンだけでなく気道細胞まで破壊/ダイキン、京大が発見

 ダイキン工業は、京都大学大学院工学研究科の高野裕久教授と共同で、スギ花粉が人の細胞を破壊することを証明した。これまで、花粉がアレルギーの原因となることはわかっていたが、細胞が炎症を起こして破壊にまで至ることはわかっていなかった。同社では、同時にストリーマ放電を加えたスギ花粉と比較実験も行い、放電分解すれは有害性を減らせることも実証したという。
 同社らは、ストリーマ放電がスギ花粉を分解し、細胞に無害となることを実証するために実験を始めた。試験は、自然界に存在するスギ花粉そのものと、ストリーマ放電を照射し分解したスギ花粉をそれぞれ培養した気道上皮細胞に接触させて細胞の反応を観察した。
 その結果、自然界に存在するスギ花粉を接触させた細胞は炎症反応を示し、時間の経過とともに細胞の破壊に至ったという。また、ストリーマ放電を照射したスギ花粉を接触させた気道上皮細胞は、自然界のスギ花粉をそのまま接触させた気道上皮細胞に比べて、炎症反応が小さく、存在率が高いことを実証した。
 ストリーマ放電は、同社が2004年に開発した空気浄化技術で、プラズマ放電に比べて1000倍以上の酸化分解力を持つという。すでに空調機器に搭載して販売している。

登録建築家の更新見合わせる動き!?/JIAが更新を呼び掛け

 日本建築家協会(JIA、芦原太郎会長)の「登録建築家」と日本建築士会連合会(藤本昌也会長)の「統括設計専攻建築士」の一本化協議を背景に、建築士の登録更新を見合わせる動きが広がっている。
 両制度をめぐっては、2002年11月に「“新たな建築資格制度”創設に向けての2団体基本合意書」が両団体の間で交わされ、制度の共通化へ向けた協議が進められていた。しかし哲学・理念の違いもあり、協議は自然消滅的に「中断」したが、UIA(国際建築家連合)東京大会開催が決まったことなどを契機に、懇談会という形で協議を再開した。
 登録建築家と統括設計専攻建築士の両方の認定を受けている会員の中には、「一本化されるなら両方の認定を受けるのは無駄」と判断して登録更新を見合わせる動きが出てきている。
 JIAは、芦原会長と河野進建築家資格制度委員長名で「今後の建築士会連合会との話し合いを着実に進め、実りあるものにするためにも、登録建築家の支援が不可欠」と積極的な登録更新を呼び掛けている。
 今後両団体は、協議の経過や現状、見通しなどを説明し、会員に登録更新を呼び掛ける。現在、認定日が05年10月20日、06年3月20日、09年3月30日の登録建築家を対象に、2月17日まで更新申請を受け付けている。
http://www.the-japan-institute-of-architects.com/

2012/01/20

安井建築設計事務所のBIMテンプレートが市販化/Revit Architecture向け

 安井建築設計事務所が実際にBIMで使用しているテンプレート(図面作成のひな形)やライブラリ(部品集)が市販される。作図に必要な図面表示や各種設定が整理されているため、設計図を効率的に作成できそうだ。ユーザーごとに利用しやすいよう、同社のBIMノウハウを付加している。
 「意匠設計用BIMテンプレート」は、同社がこれまでに意匠設計図書一般図に使ったをまとめたもの。テンプレートは、手間がかかる建具、仕上表、開口部リストなどの作図要件が整理され、設計図書作成が効率化できる。
 また、ライブラリは、入力情報をほかのプロジェクトに継承することができる。
 同製品は、公共建築協会が発行する『建築工事設計図書作成基準平成21年度版』に示された記号表示に準拠していることが、同協会により確認されている。
 オートデスクのBIMソフト「Autodesk Revit Architecture」で利用できる。オープン価格。制作・発売元はGSA、販売は大塚商会が担当。

BIM連携で意匠設計図から積算可能に/グラフィソフトと日積サーベイが提携

 グラフィソフトジャパンと日積サーベイが、BIMデータの相互連携をめざして提携した。グラフィソフトの意匠系BIMソフト『ArchiCAD』と日積サーベイの建築積算ソフト『HEΛIOΣ(ヘリオス)』を、IFCを共通フォーマットにデータ連携させる。設計業務の早い段階から数量積算やコスト試算が可能になる見込みだ。大手ゼネコンによる実プロジェクトでの検証もスタートした。
 両者の連携は、ArchiCADの意匠データをIFCに出力し、ヘリオス側で積算データに変換する。オブジェクト単位のデータ活用となるため、概算数量だけでなく、実施詳細積算にも利用できる。4月末にリリース予定の最新版ヘリオスに連携機能が標準装備され、両者のデータ互換が実現する。今後はヘリオスからArchiCADへのデータ連携も整える方針だ。
 「OPEN BIM」の実現に向け、各専門領域の主要ソフトとのデータ連携を結んでいるグラフィソフトにとっては、積算領域でのデータ連携が悲願だった。近年の売り上げを下支えしているゼネコンからもデータ連携の要望が出ていた。コバーチ・ベンツェ社長は「手薄だった積算データへの利活用が実現し、施工段階へのBIM活用に弾みがつく」と期待している。
 建築積算専業事務所として2013年に創業50年を迎える日積サーベイでは、自社の業務効率化を目的にヘリオスを開発し、40年前から外部に販売も進めてきた。04年にはバル・システムを設立し、システム販売事業を強化。ユーザー数はゼネコン、建築設計事務所、積算事務所など1000社を超える。
 生島宣幸社長は「BIMに対応した積算システムとなることで、ユーザーの業務効率が格段に向上することは間違いない。特に積算事務所にとってはプロジェクトの早い段階から業務に関与できるチャンスが生まれ、コストマネジメントなど業容拡大の期待も出てくる」と強調する。
 日積サーベイでは、意匠から積算にデータが連携する今回の取り組みを通過点と捉え、さらに積算データを施工図データとしてつなげる検討も進めており、将来的には「保守管理やFM(ファシリティーマネジメント)領域での積算データ活用にも注目している」(生島社長)と明かす。

がれき処理、国が初の代行処理へ/福島県内4市町が環境省に要請

 東日本大震災のがれき処理を国が市町村に代わって行えるようにする「がれき処理特別措置法」に基づき、福島県の相馬市や南相馬市、新地町、広野町の4市町が、近く環境省に代行処理を要請することが分かった。要請は自治体ごとに行われるが、要請を国が認めれば、国による初の代行処理となる。
 自治体による要請後は、特措法で規定した自治体のがれき処理実施体制や処理への専門的知識と技術の必要性、広域的処理の重要性を勘案して、必要があると判断すれば、環境省が自治体に代わり自らがれきの収集・運搬、再生を含む処分を実施する。
 具体的には環境省が処理業務を事業者に発注。がれきの埋め立てや仮設の焼却炉を設置して焼却処分に当たる。
 202万7000tと推計される福島県内のがれきは、放射性物質に対する懸念から、仮置き場への搬入率も11日現在で61%にとどまっており、焼却も進んでいないのが現状だ。4自治体のがれき推計量は相馬市が21万7000t、南相馬市が64万t、新地が9万4000t、広野が2万5000t。このうち南相馬市の一部は、国直轄で処理をする「除染特別地域」に当たることから、この地域を除いて代行処理を要請することになる。

トラス間にボックス構造挟む/「東京ゲートブリッジ」来月12日に開通

 東京の新たな名所となる、東京ゲートブリッジが、2月12日の開通を前に報道陣に公開された=写真。
 東京ゲートブリッジは、江東区若洲と大田区城南島を結ぶ東京港臨海道路II期事業の一部。橋梁の海上区間の長さは1618mあり、これは横浜ベイブリッジの約2倍の長さに当たる。
 東京国際空港に近接しているため、98・1mの高さ制限がある。桁下高は大型船舶の航行に配慮し、56・4mを確保している。このため、左右のトラスの間にボックス構造が挟まれるという独特の形状をもつ細長いシルエットの橋になっている。また、景観への配慮から、余熱なしで溶接が可能なBHS鋼材を使い、トラス部分の大半をボルト止めでなく溶接で組み上げている。
 橋には歩道も整備されていて、中央のボックス部分から都心部を眺めると、ほかでは見ることのできない雄大な景色が広がる。2016年には中央防波堤内側埋立地で整備が進む海の森公園も概成予定で、公園につながる散歩道として人気を集めそうだ。
 東京港臨海道路が通る中央防波堤では、マイナス16mのバースをもつ国際海上コンテナターミナル整備が進んでおり、道路完成による経済効果は年間190億円を見込んでいる。

2012/01/19

図書館設計のルールブック『図書館空間のデザイン』を執筆/益子一彦三上建築事務所代表インタビュー

 著書『図書館空間のデザイン-デジタル社会の知の蓄積』は、図書館の設計では歴史を持つ三上建築事務所代表・益子一彦氏が書き下ろした「建築論」だ。いまも試行錯誤しているという建築の継続性を中心とした建築のあり方が、1冊の本にすることによっておぼろげながら浮かんできた。クライアントが変わっても、建物が存在する限り建築家は個人で責任を負わなければならない。だからこう考える。「闇雲かもしれないが、必要なのはある種信念のようなイマジネーションではないだろうか」。形のない制度(機能)を入れる容器としての建築からの脱却。そこにイマジネーションが必要だと説く益子氏に聞いた。

 三上建築事務所は、水戸市に本社を構え、北海道から九州まで全国で図書館設計を手掛ける。益子氏はそのほとんどに携わっている。
 著書は図書館設計の第一人者としてデジタル化の流れも含めて、「知」のあり方に言及しているが、一建築家の建築論といえるもの。
 建築の基本的な原理として言われるのが、制度(機能)など形のないものを入れる容器である。図書館でいえば、学校、教育という制度の容器(場所)として図書館がある。

・建築の継続性

 「形のないものを入れる容器として建築は成立するというのは間違いない。でもその形のない機能で建築の寿命が決まらないのは明らか。また、建築はクライアントが変わっても、建築家の意思で壊すことはできない。でも、建築家は建物がある限り個人で責任を持たなければならない。だとすれば機能にぴったりとした容器を造ってしまうことは建築の継続性の責任を果たす上で違っているのではないかと考え続けてきた」
 これは、クライアントの考える機能に沿って建物を造ることに絶対性はないということだ。著書ではその建築の存続の方法について「基本的には建築の骨格をその場所のインフラとして造ることが一つ」であろうとしているが、それが「着せ替え人形」のようになってしまうことを危惧(きぐ)する。そこに、建築家の存在する意義がなくなるからだ。
 そうした建築の継続性について、いまも考え続けているという。
・形のないものの容器としての建築からの脱却
 「著名な建築家、ザハ・ハディドに注目している。ものすごく多種多様なプロジェクトを手掛けているが、出来上がったものはみんなザハの建築になっている。そしてクオリティーにムラがない。見えないルールのようなものがザハの建築にはある。スライムのように何でも吸収する弾力性を持っている。もしかすると、そういうところに答えがあるのかもしれないと思っている」
 自身では、継続性を担保するためにはイマジネーションが重要だと考える。「建築家は個人で責任を負わなければならないのだから、闇雲かもしれないが、ある種の信念のようなイマジネーションが大切だと思う」
 本を書くきっかけは、「基本的に成立しない」図書館が多かったから。ルールブックを、と書き始めた。そこから建築論に発展し、持続的な建築の行方が見えてきた。
amazonへのリンク 図書館空間のデザイン-デジタル化社会の知の蓄積-

三鷹市が本庁舎の移転新築も含めた建替えへ/2019年度以降にプラン策定

 東京都三鷹市は、本庁舎が建設から46年を経過し、老朽化していることを踏まえ、2012年度から建て替えの検討を開始する。次期総合計画となる第4次基本計画の素案に主要事業の一つとして位置付けており、新たな用地取得による移転新築なども視野に入れ、幅広く検討する。計画後期の19-22年度の間に基本的な整備の方向性を示す建て替えプランをまとめる方針だ。
 現庁舎の規模は地下2階地上5階建て延べ9775㎡。設計は石本建築事務所が担当し、1965年に完成した。老朽化が進んでいるため、以前から建て替えの必要性が指摘されていたが、今回の素案で検討することを正式に位置付け、初めてプラン策定の時期などを明示した。
 同市は市役所南東に隣接する三鷹市場跡地約2haに、現庁舎の敷地南側にある第1、第2の両体育館と福祉会館の機能などを集約した新川防災公園・多機能複合施設の建設を計画している。
 同事業は13年度の着工、16年度の完成を予定。完成後に3施設の跡地を本庁舎の建て替え用地に充てることも考えられる。
 一方で複合施設の駐車場としての利用も想定されているため、建て替えに当たっては、移転新築も含め、あらゆる可能性を検討することにしている。
 現庁舎の所在地は同市野崎1-1-1。

オリックス不動産が大阪厚生年金会館跡の街区ネーミングを募集

 オリックス不動産などは、開発を進めている大阪市西区の大阪厚生年金会館跡地(新町1丁目地区)の街区ネーミングを公募する。募集期間は2月29日まで。専用ホームページ(http://www.machi-naming.com/)の応募フォームやファクス(050-6864-6842)などで受け付ける。最優秀賞1作品と優秀賞3作品を選定し、3月15日にホームページで発表する。
 応募資格は設けていないが、1人当たり3作品までの応募とする。賞品は最優秀賞が30万円分の旅行券、優秀賞が5万円分の旅行券。問い合わせは大阪厚生年金会館跡地・街区ネーミング募集事務局(電話0120-188-832)。
 ネーミングのポイントとして、劇場と超高層共同住宅一体型の街という特徴をイメージでき、環境性や先進性を感じられることなどを挙げている。
 同地区では、旧会館大ホールのリノベーション工事を行っているほか、関西最大級となる超高層タワーマンションが計画されている。事業地は西区新町1。
 旧会館大ホールは、4月に客席数2,400席を持つ「オリックス劇場」としてオープンする。完成後の運営会社は大阪シティドーム。設計・監理は久米設計、音響設計は永田音響設計、施工は竹中工務店が担当。
 超高層タワーマンションは、オリックス不動産のほか、大京、京阪電鉄不動産、大和ハウス工業、アーバネックスが事業主となる。規模はRC一部S造地下1階地上53階建て塔屋3層延べ9万9,950㎡。大林組が設計施工を担当し、4月の着工と2015年3月末の完成を目指している。

2012/01/18

岡村製作所がユーロスターFrecciarossaに革張りチェア納入

 岡村製作所は、イタリア最大の鉄道会社「Trenitalia社」の車両ETR500系に、ニューコンセプトシーティング(オフィスチェア)を納入した。ヨーロッパの鉄道車両への納入は日本のオフィス家具メーカーとして初。車両イメージに合わせたレッドカラーで、背、座面ともに革張りの特注タイプだ=写真。
 納入したのは「Leopard(レオパード)」。同高速列車ユーロスター・イタリアETR500系は、赤色をベースにシルバーグレーを組み合わせた色鮮やかなツートンカラーで、「Frecciarossa(赤い矢)」という愛称で親しまれている。
 現在進められているリニューアルの一環で、ミラノ~ローマ~ナポリ間を運行するエグゼクティブクラスの車両内に設置された会議室に、ミーティングチェアとして納入した。2011年11月から営業運転が始まっている。インダストリアルデザインの名門「イタルデザイン・ジウジアーロ」社が列車の内装デザインを担当した。
 「Leopard」は、沖電気工業(OKI)との共同開発。OKIのメカトロニクス技術から生まれた「ロボットレッグ」と岡村製作所のシーティング技術が融合。筋肉のメカニズムを応用し、着座から立ち上がりまでの姿勢変化に追従した優れたフィット感で発売以来、高い評価を得ている。車両シート納入実績を基に脚を固定。高い耐久性も確保している。

「空調服」で涼しく作業。「生理クーラー効果」を活用

 株式会社空調服(本社・埼玉県戸田市、市ヶ谷弘司社長)は、小型電動ファンを内蔵した「空調服」を販売している。作業着として着用するだけで、空調のない夏場の屋外作業所でも爽快な環境をつくり出す。熱中症など労災防止にも効果を発揮する。空間全体を冷やすエアコンに比べて電気料金が極めて低いため、省エネ・節電効果が大きいという。
 空調服は、気温に応じて発汗する身体の生理的冷却システム「生理クーラー」機能を利用する。電動ファンで服内に大量の風を送り込み汗を瞬時に蒸発し、気化熱の作用で体の状態に適した冷却を実現。電気代は1カ月にわずか20円程度と消費電力の大幅な削減も可能となる。
 市ヶ谷透業務部長は空調服の開発について「もともとテレビのブラウン管測定器を手掛ける会社として創業したのだが、社長が東南アジアを視察した際、空調がない工場で働く作業員を見て、できるだけ少ないエネルギーで涼しく働く方法はないかと考えたのがきっかけ」と説明する。その後、試行錯誤を重ね現在の方式にたどり着く。埼玉県などのベンチャー企業コンテストでは数多くの受賞歴を誇る。
 2004年の発売開始以降、販売量は着実に上り続けている。11年度は12月の段階で2万着に迫る勢いで売れている。「ことしは東日本大震災の影響による節電要請もあり、企業から注文が多く来た」と、その省エネ効果から幅広く注目を集めた。
 建設業界でも鉄筋や溶接など専門工事会社から多くの注文を受ける。大手ゼネコンや設備会社、電鉄会社から引き合いが増え、認知度も上昇中だ。作業管理者からも「災害防止につながった」と高く評価する声が上がる。特に『フード付き屋外作業用空調服』の需要が多いという。「フードをかぶることによってヘルメット内にも風が流れる。チタン加工の裏地が赤外線を防ぎ温度上昇を抑える」のが人気の理由だ。
 冬場には遠赤外線の発熱体を内蔵したベスト「ベスウォーマー」もある。「熱伝導が良く、発熱体を柔らかくするなど装着感も工夫した。バッテリーは500回程繰り返し使用できるため、使い捨てカイロに比べ経済性が良く地球環境にも優しい」とアピールする。
同社のHP http://www.9229.co.jp/index.html

産廃の副生グリセリンを燃料化/前田道路が同志社大らと開発

前田道路の合材プラント
 前田道路は全国の合材工場で、食用廃油からバイオディーゼルを製造する際にできる副産物を重油の代替燃料として活用する。資源の有効活用とともに、アスファルト合材製造過程で発生するCO2排出量を削減する。既存のバイオディーゼル事業者を含め、新たなリサイクルシステムとして全国に普及する。セベック(本社・東京都千代田区、小豆嶋和洋社長)、同志社大学との共同研究で開発した。
 バイオディーゼル精製時に発生する副生グリセリンは、産業廃棄物として処分されることが多く、処分方法が課題となっていた。
 3者が共同研究で開発したカルシウム触媒により、アルカリ分を含まずリサイクルしやすいグリセリンができるようになった。グリセリンを燃料として使った場合でも、加熱炉の炉材腐食は起きない。
 前田道路は、副生グリセリンを購入し、アスファルト合材製造に必要な重油の代替燃料として活用する。宮城、香川、福岡にある工場での活用から全国に拡大する。カルシウム触媒は燃焼することでアスファルト混合物の材料となる炭酸カルシウムとなり、CO2削減とともに資源有効利用にも貢献する。
 バイオディーゼル燃料は植物油を原料に製造され、CO2排出量削減など環境にやさしい燃料として活用が広がっている。

2012/01/17

日本で数台の「ユニットドーリー」使い、橋梁を一晩で撤去/さがみ縦貫谷原橋

巨大ドーリーが切り離した橋を運ぶ
 大和小田急建設は15日、「さがみ縦貫相模原IC谷原橋架替(その1)工事」に伴う既存橋撤去工事を公開した。国道129号を夜間通行止めした上で、日本に数台しかないという大型台車の「多軸台車(ユニットドーリー車)」を2台使って、既存橋の中央部分を短時間で撤去、明け方には道路の通行を再開した。一般公開した現場には深夜にもかかわらず約100人の見学者が訪れた。
 作業は午後10時から始まり、中央分離帯のガードレールを除去し、多軸台車を既存橋(RC造長さ17・7m)の下に設置した。
 台車の上に設置したデッキリフトで橋を仮受けした後、橋の両端部を切断。中央部分を多軸台車に載せて移動し、荷下ろしヤードで550tクレーン2台を使い、撤去橋を降ろし、機械解体した。
 この事業は、一般国道468号線首都圏中央連絡(さがみ縦貫)自動車道の神奈川県茅ヶ崎市西久保から相模原市緑区川尻(長さ34㌔)のうち、相模原市南区当麻地先で相模原インターチェンジ改良に関連する国道129号を跨ぐ相模原市道塩田当麻線の谷原橋を架け替える。
 同(その1)工事の概要は、仮橋基礎工(H鋼杭打工)35本、仮橋架設工事(支間長30m)1基、切回し道路工548㎡、中央分離帯撤去・復旧工18m、橋梁撤去工(谷原橋)1基。工期は2011年3月5日から1月31日まで。工事場所は相模原市南区当麻地先。
 今後、発注者の関東地方整備局横浜国道事務所は、谷原橋新設工事、市道塩谷当麻線切替工事、仮橋撤去工事を予定している。

東武野田線の運河駅が橋上化へ/2月から本体工事着工

駅舎の完成予想
 千葉県流山市と東武鉄道は、東武野田線運河駅に東西自由通路と橋上駅舎の建設を計画している。施工は河本工業(群馬県館林市)が担当する。現在、線路覆工などの準備工事を進めており、2月ごろから本体工事に着手する予定だ。2013年3月末の完成を目指す。設計は復建エンジニヤリングが担当した。
 運河駅(流山市東深井405)は、東口改札がなく、プラットホーム間はエレベーターやエスカレーターのない連絡地下道で移動する必要がある。近くには東京理科大野田キャンパスや宗教法人霊波乃光の本部などがあり、10年度の1日平均の乗降人員は2万2628人となっている。
 東西自由通路と橋上駅舎の建設は、東口駅前広場、東口駅前道路、ふれあいホールなどを整備する運河駅東口周辺市街地整備事業の一環として実施する。
 ともにS造2階建てで、自由通路と橋上駅舎を建設する。自由通路(床面積777㎡)は幅4・6-6・25m×長さ108・6m。多目的スペース1カ所を設け、エスカレーターとエレベーターを東西に1基ずつ設置する。橋上駅舎(床面積876㎡)は、駅事務室や旅客便所のほか、エスカレーターとエレベーターを各プラットホームに1基ずつ設ける。
 総事業費は19億7000万円(工事施行協定締結額)。このうち自由通路整備費に9億6600万円、橋上駅舎整備費に10億0400万円を充てる。
 また、市は市総合計画後期基本計画(10-19年度)の下期で、初石駅(流山市西初石3-100)の橋上化も位置付けている。同駅はプラットホーム間はエレベーターを完備した橋上連絡通路で行き来できるものの、東口がない状況となっている。

環境省の「除染業務講習会」に440人が参加

 環境省は東京都文京区で16日、除染にかかわる事業者や関係機関を対象にした「除染等業務講習会」を開いた=写真。環境コンサルタントやゼネコンなどの事業関係者や自治体担当者ら予想を上回る440人が参加し、被ばく線量管理方法や除染作業方法などの知識を習得した。
 講習会では、日本環境衛生センターと原子力研究バックエンド推進センターの担当講師が、放射性物質汚染対処特措法や労働安全衛生法除染則の関係法令、除染作業に使う機械の構造とその取り扱い方法などを解説。汚染廃棄物は、全国ネットワークがある廃棄物の処理体制や施設を活用して処理を進めると広域処理の重要性などを説いた。
 この講習会は、除染や汚染廃棄物処理の作業を適切で安全に行うために基本的な知識を得て、各事業場が実施する作業管理に必要な特別教育・指導に役立ててもらうことが目的。終了後には「受講証明書」を交付した。
 20日には大阪市の天満研修センターでも同様の講習会を開く。事業者はこの講習会とは別に、安衛法に基づく「特別教育」を、除染業務などに就かせる労働者に対し、定められた科目と時間で教育を実施する義務がある。

2012/01/16

三陸鉄道の復興へ/鉄道機構の全面支援で短期決戦

岩手県三陸沿岸の複雑な海岸線を縫うように走る三陸鉄道は、発災から10カ月を経た今も路線の約3分の2が不通区間だ。その1日も早い全線運行再開は被災地域の生活を支え、産業振興や地域活性化に直結する。復旧工事は第三セクターの三陸鉄道(岩手県宮古市、望月正彦社長)から要請を受け、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が全面的に支援する。その最前線基地である三陸鉄道復興鉄道建設所の進藤良則所長は「復旧工事を精力的に実施することが、三陸地方全体の復興への弾みとなる」と語る。

 鉄道・運輸機構は、震災直後から現地入りし被災調査や復旧工法などを指導した。2011年11月1日には同鉄道の北・南リアス線復旧工事の施行協定を締結し、同3日から復旧工事に着手している。
 岩手県久慈市の市役所分庁舎内に鉄道建設本部東京支社の三陸鉄道復興鉄道建設所を設置したのは同24日。当初は進藤所長を含め6人体制でスタートし、今月1日に1人増員した。今後も工事の進捗状況に応じて適切な執行体制を整えていくという。
 津波で流出した盛土や線路、通信ケーブル、駅や橋梁などの復旧工事の発注は東京支社が担当し、建設所は工事監督と、工事にかかわる関係機関との協議などを担う。土木構造物の設計は三陸鉄道で担当している。
 工事は3段階で進める。まず4月末までに北リアス線・陸中野田~田野畑駅間24・3㌔の運行を再開させ、既供用区間を含め久慈~田野畑駅間35・4㌔をつなげる。南リアス線の盛~吉浜駅間21・6㌔は13年4月に運行を再開。第3段階として北リアス線の小本~田野畑駅間10・5㌔と南リアス線の吉浜~釜石駅間14・9㌔を復旧し、14年4月には北リアス線71・0㌔と南リアス線36・5㌔の全線で運行を再開させる。
 被災区間は主に明かり部でトンネルは被害がほとんどないためルートの変更はない。盛り土区間は法面をコンクリートで補強する。橋梁は桁が橋脚と剛結していない単純桁が流出したことを考慮し、支承のないラーメン橋にする予定だ。
 また、津波による横圧力や揚圧力を低減するために、桁高を低く抑えた構造にすることも検討している。流出した橋梁は3カ所で、うち1カ所を盛り土構造に変更し、2カ所を再構築する。
 現在は、陸中野田~野田玉川駅間の復旧工事を急ピッチで進めている。進藤所長は「復旧完了時期が決まっていることから、工期は非常に厳しい状況にある。特に沿岸部のため冬季は強風の日が多く、天候に左右されることも配慮しなければならない」と課題を挙げ、これを克服するために「工種ごとの工程を少しでも短縮できるように施工方法の効率化に取り組んでいる」と語る。
 具体的には強度の発現が早いコンクリートを採用するほか、打設のサイクルを増やす工夫などで対応している。施工会社に対しては「作業員が不足する中、工事の進捗率を伸ばす努力をしていただいている」と謝意を示しつつ、「厳しい状況は十分承知しているが、1日も早い全線での運行再開を果たすため、さらなる工期短縮に力を注ぐことをお願いしたい」とも。
 「沿線住民の生活の足であり、地域活性化の役割を担う三陸鉄道を1日も早く復旧し、住民や観光などで訪れる人たちに末永く愛される鉄道として復活できるように努力したい」--こうした鉄道技術者の熱い思いが復興現場を支えている。

地盤かさ上げに津波堆積土を再生/新日鉄と新日鉄エンジ

 新日本製鉄、新日鉄エンジニアリングは、東日本大震災の津波で陸上に大量に打ち上げられ堆積した津波堆積土を改質して地盤かさ上げ材として再生することに成功した。実際に、国土交通省の仙台港岸壁災害復旧工事の路床材として試験活用した。
 2011年9月に仙台市宮城野区で改質試験を実施、この試験で改質した津波堆積土140tが試験活用されている=写真。
 がれきなどが混ざった軟弱な泥土である津波堆積土に製鉄工程の副産物である鉄鋼スラグからなる『カルシア改質材』を加え、「ツイスター工法」でかくはん混合し、がれきを取り除きながら建設資材として十分な強度を持つ良質な土に再生した。
 改質した津波堆積土は、港湾設備の埋戻材料や海岸堤防や道路の盛土材料等に広く有効利用が可能だという。新日鉄グループは、今回の災害復旧工事での活用を機に、国や自治体へ復興資材としての活用を広く働き掛ける考えだ。

アニヴェルセルがみなとみらい21に大型結婚式場

 紳士服量販大手のAOKIグループで、ゲストハウスウエディングを展開しているアニヴェルセル(横浜市、中村宏明社長)は、横浜市のみなとみらい21地区に日本最大規模となるウエディング施設「(仮称)アニヴェルセルみなとみらい横浜計画」の新築を計画している=写真。設計を清水建設で進めており、6月に着工、13年8月末の完成を目指している。

2012/01/13

連載・コンピューティショナル・デザイン-5-

・設計の役割・境界を融合
 設計プロセスの変化は、アーキテクト、エンジニア、プログラマーの境界をさらに曖昧にしていくだろう。こうした背景を踏まえて、設計に携わるデザイナーに求められる能力、役割とは何なのだろうか。
 まず一つ目は、設計のインプットとするデータの選び方にあると考える。無限のデータにフィルターをかけて、何を重要な情報として取り出すかはデザインプロセスの出発点だ。

・データとは何か
ワークショップの様子
 sg2011は、Building the Invisibleつまり不可視のデータをどのようにデザインに翻訳していくかということをテーマに掲げており、ワークショップ、カンファレンスを通して、データとは何かということについて活発な議論がなされた。
 データとは空間を取り巻く環境そのものであり、空間を占有する人間の行動を含めたダイナミックな情報の集積だ。無限のデータをデザインのプロセスに取り入れることが技術的に可能になったとき、デザイナーに求められるものはそれらを判断する目にある。
 次に、それらのデータをもとにどのような技術、空間を開発、提案するかが問われてくる。
 今回のワークショップでは、空間を評価する指標の一つとして、「パフォーマンス」という言葉が頻繁に使われていた。建物内部の湿度をセンサーによって感知し自動的に窓が開閉することによって内部の快適性を高めるインテリジェントなスキンの提案も見られたが、コンピューターの技術を使って、よりプリミティブでありながら、精度の高いパッシブなシステムを考案できる可能性もある。
 私の所属したクラスター(agent construction)では、サバンナのシロアリ塚に見られる驚くべき自然換気のシステムを例に挙げ、自然界に見られる自己組織化のプロセスをコンピューターによって再現することを研究のテーマとしたが、これは新しいパッシブなシステムの開発、空間の提案に応用できるかもしれない。
Foster+Partners 横松宗彦氏
(終わり)

東京五輪招致/メーン会場は国立競技場を改築

 2020年東京五輪招致委員会(会長・石原慎太郎東京都知事)は、都庁で理事会を開き、2月15日までに国際オリンピック委員会(IOC)に提出する「申請ファイル」の内容を承認した。失敗した16年五輪の招致計画を基にしながらも、国立競技場を改築してメーン会場とするなど、一部を変更した。2月16日に詳細を発表する。
 前回計画と同様、会場の大半は都心に集中させるが、今回は調布市に新設されるスポーツ施設も利用する。選手村は中央区晴海に置く。東日本大震災からの復興も開催理念に盛り込むという。また、理事会への助言機関である評議会の特別顧問に、鳩山由紀夫元首相の就任を承認した。鳩山氏は20年夏季五輪の招致を推進する超党派議員連盟会長を務めている。

書籍紹介・『LOVE THE LIGHT,LOVE THE LIFE』-記憶呼び起こす照明

 かつて、建築はどちらかというと“昼間の芸術”だった。どれほどすばらしい歴史的建築物であっても、夜になるとその存在感は闇に飲まれ、なくなってしまう。
 照明デザイナーの草分けである著者は、ヨーロッパで建築・都市照明を学び、暗かった夜の日本を明るくしていく。同書には、だれも考えていなかった照明デザインという分野を、人との出会いを通じて切り開いていくプロセスが描かれている。
 “夜の建築物”を浮かび上がらせて美しく見せるだけでなく、照明にはさまざまな効果がある。光の色によって落ち着きや高揚感が得られるように、心理的な働きにも大きな影響を与える。
 特に、同書の副題にもあるように、照明によって浮かび上がった構造物からは、過去の記憶を呼び起こされるケースが多いようだ。照明の可能性がまだまだ広がっていくことを感じさせる。
 ところで、東京タワーのライトアップには180台の投光器が使われている。都心における夜景の主役になっているが、ライトアップにかかっている電気代は、1時間当たりわずか3000円だという。照明機器を始めとする省エネ技術、光源の進化も、夜の都市景観向上に一役買っている。
(石井幹子著、東京新聞・1785円)
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2012/01/12

前田建設のファンタジー営業部が、日野自動車とコラボ

 前田建設が本気で仮想世界の構造物積算に取り組む「ファンタジー営業部」。13日から幕張メッセ(千葉市)で開催される改造自動車の展示会「東京オートサロン2012」で、日野自動車とコラボレーションする。