2014/12/28

【技術裏表】“やっかいもの”をエネルギーに! 雪や排熱を生かす試み、美唄で始まる

ことしも雪の舞う季節が到来した。豪雪地帯にとっては、雪は捨てる場所に困るほどの“やっかいもの”でもある。だが、そんな雪をエネルギーに変えて活用しようと、北海道美唄市などが「ホワイトデータセンター」の実現に奔走している。工業団地の敷地に雪を集め、その冷熱エネルギーでデータセンターに設置するサーバーを冷却したり、雪の冷熱やデータセンターの排熱を活用して周辺の工場に熱を供給する構想を描く。設備関連の技術は三機工業がプロジェクトに参画して支援しており、参画者が一丸となって取り組みを周知している。

 美唄市で計画されているホワイトデータセンター構想は、市内の空知団地(約110ha)の一画9.7haを活用し、その一部に雪を貯蔵する場所を設けるとともに隣接地にデータセンターを建設、雪の冷熱エネルギーをデータセンターの冷却に使うというもの。冷熱エネルギーでデータセンターのサーバー冷却費用を低減し、首都圏で稼働しているデータセンターに比べてランニングコストを抑えられるメリットがある。
 都市部のデータセンターでは狭い敷地にサーバーが密集せざるを得ず、冷却が難しい。一方、ホワイトデータセンターであれば、広大な土地に立地できるためサーバーを設置するスペースにも余裕が生まれ、冷却にかかる負荷が抑えられる。北海道の冷涼な気候であることも加味すると、冷房負荷は東京に比べておよそ20分の1まで抑えられるという。地価が安い点や災害の発生リスクが低い点もメリットだ。
 雪を貯蔵する土地の下には配管を巡らせておき、冷たい雪解け水を集水。それを熱交換器や空調機を介してデータセンターの冷却に生かす。夏場であれば、水温は3度ほど。活用する雪は周辺の市街地や道路で排雪したものなどを想定し、集めた雪はおがくずなどを断熱材にして夏まで保存する。
 一方、サーバーで発生する熱も周辺施設で再利用することで循環型社会の構築に生かす。サーバー室からは30度ほどの温風が生まれるため、これを熱交換し、周囲の工場などに活用することもイメージしている。温熱を農業分野に活用する研究も進んでいることから、データセンターの隣接地に植物工場を立地させ、農産物の生産が難しい冬の北海道での生産性向上が見込める。また、工場の立地により周辺地域からの雇用も促進され、地域経済の活性化が期待される。
 技術を支援している三機工業でも「雪は地産地消できる有望なエネルギー」と、実用化に期待を寄せている。10月に千葉市で開かれた「データセンター構築運用展」に参加した際には、美唄市から模型を借り受けPRしている。構想実現には施設を立地させる事業者が必要だが、PRを通じて地域特有のエネルギーのメリットや、それを活用するシステムの有用性を訴え、周知を図っていく。
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