2014/03/08

【復興】建設コンサルは心意気と技術力 住民とのつながり実感

閖上漁港災害復旧工事
3.11の東日本大震災から3年が経過しようとしている。建設産業界全体が復旧・復興に全力で取り組み、まださまざまな課題は残っているものの、一歩一歩前に進んでいる。建設コンサルタントなど建設関連業は、発災直後の調査や緊急点検、災害査定、復旧設計などを手掛けているほか、職員不足の行政支援、被災者との直接の対応も担っている。各社の取り組みや今後の課題などを探った。
 被災地ではがれきは撤去されているが、住民の合意形成の遅れや市町村の職員不足などで、復興が進んでいないという指摘がある。まちづくりなど市街地で目に見える施設整備は確かに少ないが、インフラは着々と整備されている。
 福山コンサルタントの山根公八取締役東北事業部長は、「道路や交通関係はかなり進んできている。(国土交通省の)事業促進PPPは施工段階に移りつつある」と説明する。発注者、受注者ともに、「通常の事業とは違うという使命感があった」ことも、スピードアップの原動力に挙げる。
 辻本茂オオバ社長も、「まだ形の上では何もないが、われわれの目には造成されればこうなるというのが見える」と話す。設計の担当者としては、工事が始まれば完成形である高台を切り取ったあとの姿が目に映っている。

◇若手を現場研修に
 震災に携わった社員が、仕事へのやりがいを大きく感じているという意見も多い。小松泰樹建設技術研究所副社長兼企画本部長は、「いろいろな人と調整しながらやっている。その中で自分の存在価値を出していくのは良いチャンスだ」と指摘する。従来から制度としてはあった現場研修を活用して、若手技術者を派遣することを考えている。
 協和コンサルタンツの桑野和雄常務執行役員経営企画室室長新規事業推進室長は、「ワークショップ(対話集会)を開いた際、住民から夢のある、前向きな意見が出てくるとうれしくなり、役立っていると感じてやりがいがある」という現場の技術者の声を紹介する。
UR発注の大船渡駅周辺地区震災復興事業(岩手県大船渡市大船渡町)
建設コンサルの場合、これまでは発注者だけが相手だったが、震災関係の業務は住民と直接触れ合う機会が多く、仕事に対する反応を肌で感じることができる。その分、住民の不満など矢面にもさらされ、厳しい場面を体験するケースもある。
 これから解決が求められる課題として、跡地利用がある。現在は、高台移転など新たなまちづくりが最優先のため、自治体が災害危険区域内の買い上げた宅地を、どのように使うかまでは手が回らない状態だ。玉野総合コンサルタントの森高司郎震災担当技術部長は、宮城県七ヶ浜町について「大部分は公園や緑地になる計画だが、高台に移転する人が宅地を町に売却した町有地が点在して、農地も残っている」と話す。私有地と混在しているため、用地の再編が不可欠だ。ここでも合意形成が求められる。

◇老朽化も同じ時期
 維持管理が問題になると心配する意見もある。復建技術コンサルタントの遠藤敏雄社長は「造る時期が同じなら、老朽化のタイミングも同時になる」と見通す。日本全体で高度経済成長期に、さまざまなインフラが集中して建設された結果、更新も一度に迎える状況に直面している。まさに、復興でも同様のことが予想される。
 パシフィックコンサルタンツの菅原正道事業統括本部副本部長兼事業戦略部長は、「いまから将来を見越して、だれでも見ることができるメンテナンスのデータを整備する必要がある」と主張する。新設時は設計図面などもそろっており、作業が容易なためだ。また、日本上下水道設計の土屋剛仙台事務所長は、「施設が増えるので、資産管理を経営的な考えで運営しなければいけない」と提案する。
 大島一哉建設コンサルタンツ協会会長は、「まだ復興の途中段階だがこの3年間、建設コンサルタントは非常に貢献してきている。自治体に技術者がいない中で、コンサルは持っている力を十二分に発揮してきた。住民や職員に頼りにされている。これからも心意気と技術力でやっていけばいい。われわれにとっても良い経験をしている」と評価した。
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