A 日本電設工業協会(林喬会長)が登録電気工事基幹技能者の処遇改善に取り組み始めるようだけど。
B 13日、名古屋市で開かれた会員大会で人材委員会の原洋二副委員長が人材育成の取り組みと登録基幹技能者の処遇改善について基調報告し、「電気技能者(電工)の年収を50万円アップし、50歳(全国平均)で年収650万円以上を目指そう」、「大手企業から基幹技能者の処遇改善の具体的な仕組み作りに着手してもらう」と提案した。
A それまでの経緯は。
B 実は、ことし3月の検討結果報告では、処遇改善策は了解するが、受注環境が厳しくて原資確保が困難だと見合わせた経緯がある。春以降、一部のゼネコンに優良技能者の職長手当てを出すような動きがあり、7月の理事会で基幹技能者の処遇改善をテーマに掲げることを決めたようだ。
A 会員企業の反応はどうなの。
C 「厳しい受注環境下だからこそ人材の確保・育成につながる投資をすべき」という積極的な経営者もいる。
D 既に日本電設工業が11月から試行、来年4月から本格運用を決めている。日額2000円だけど、「金額よりも技能者が誇りを持てることが人材の確保・育成につながれば」と考えているそうだ。実際、「手当てがコストアップになっても、トータルの現場人件費は下がる」とみる経営者は多い。
B 技能者の処遇改善と人材の確保・育成は一体のものだと思う。
A ところで業界全体の人材確保はどうだろう。
C これは、生産年齢人口が減少している日本の構造的問題でもある。言い換えれば、産業間の人材確保競争で、技能者の処遇改善と確保も、産業間の人材確保競争に勝つための側面が強い。
A ただ一部大手ゼネコントップは、短期的に震災需要はあっても、中長期的には国内建設市場のうち、特に土木系技術者の過剰感を口にし始めている。過剰感があるなら今後の人材確保を問題にしなくてもよさそうだけど。
D それは違う。技能者もそうだけど、技術者は主任技術者や監理技術者になるまで経験が必要だ。理想から言えば、受注可能市場規模に合わせて、人材が段階ごとに育成されるよう年齢階層ごとのバランスが必要だ。過剰感を理由に人材確保・育成に動かなければ、将来の担い手がいなくなってしまう。
A でも市場が今後拡大しないなら人材確保も問題にならないんじゃないの。
B 技術者配置が法律で定められている現状と、今後さらに品質確保と生産システムの効率化が求められていることを踏まえれば、技術者数が建設業の企業規模を決める構図は変わらない。その意味では、産業間だけでなく、業界内の人材確保競争が激化するのは確実だと思う。
D 技能者の確保はもっと深刻だ。過去、経験を積めば高収入・独立という夢が技能労働者のインセンティブだった。でも、低収入で保険未加入者が増加している現在の産業に人気が集まるとは思えない。人材確保問題は、徐々に熱くなって結局気づいたら死んでしまう『ゆでガエル』と同じ。今指摘される危機感は、将来必ず現実の危機になることを考えるべきだと思う。