2016/08/26

【記者座談会】改正港湾法施行 洋上風力発電の普及促進に活気づくマリコン

A 7月に改正港湾法が施行されたね。
B 洋上風力発電施設の導入を円滑化するための公募による占用許可手続きなどが創設され、洋上風力発電の普及促進効果も期待されている。画像は五洋建設が建造を発表したSEP型多目的起重機船(イメージパース)

C 選定事業者になることで得られるメリットは?
B 洋上風力発電施設の整備では、事前調査などを含めた準備期間が長期間になるため、占用を予定する区域の占用許可が他の事業者に与えられるというリスクがある。占用事業者に選定されれば、そのリスクを背負うことなく確実に調査などを進められる。
A 港湾管理者に対しては、占用者を選定するにあたっての評価項目の参考事例などを明記した運用指針をまとめている。
C なるほど。国内の港湾エリアでは、9の港で着床式の洋上風力発電の導入に向けて動いているようだね。
B そのうちの1つである北九州市では、この制度を使った全国初の占用者公募手続きも始まっている。さらに宮城県では9月から、県内初の洋上風力発電施設の誘致に向けて、本格的な課題や適地の検討を始めるようだ。既に長崎県五島市山沖と福島県楢葉町沖では、浮体式洋上風力発電も稼働している。
D 企業ではマリコンの目線も強まっている。最近では、7月に五洋建設が気象・海象条件の厳しい海域でも安定してクレーン作業ができる「SEP型多目的起重機船」の新造を明らかにした。東洋建設が建造してきた遠洋作業可能な自航式多目的船「オーガスト・エクスプローラー」は、来週に完成式典が開かれるよ。
A 目線の先には、まさに洋上風力発電施設の需要拡大があるね。だから各社とも先行投資に乗り出している。遠隔離島での海上作業や深海域の魚礁設置というニーズもあり、マリコン各社の新造の動きは今後も出てきそうだ。
D 洋上風力の風車は巨大だから、5-6メガワットクラスでは直径約100mにも及ぶらしい。五洋建設の船は巨大風車に対応するため、吊り上げ能力800tの全旋回式クレーンを搭載するというから、投資額も相当なものだ。船体本体では110億円程度、予備品なども10億-数十億円に達するという。
A ところで、なぜ風力発電に政府や産業界が注目し始めているのだろうか。
D 大きな理由として2つある。1点目は、エネルギー基盤として位置付けてきた原発、火力、水力といったベース電源に加え、再生可能エネルギー導入を拡大するというエネルギー政策の中で、1基の発電容量が大きく安定発電が見込める風力発電への期待がもともと高かったことだ。
C 特に欧州と違って遠浅沿岸部の適地がほとんどない日本でも洋上風力発電設置への技術課題がこれまでの取り組みで解消されつつあることも、風力発電への関心を高めることになったからだろうね。
D もう1つは、風力発電拡大が新たな産業になり、国内製造業に好影響を与えることだ。日本を始めとする先進国や新興国は自動車産業を育成・保護する傾向が強い。これは自動車の部品点数が2万から3万点にのぼり、裾野の広い自動車産業が国内製造業維持に貢献しているからと言われている。風力発電も、部品は1万点から2万点で構成されていると言われ、国内で陸上・洋上風力発電が拡大すれば、海外展開も可能になり新たな産業創出の可能性も出てくる。
A なるほど、安倍政権が掲げる経済成長にも寄与するわけだ。
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