2014/04/30

【ひきドア】引き戸が開く! トイレに車いすと介助者のスペース確保 大建工業

「引き戸が開くという発想が原点だった」と、大建工業の山田佳弘住空間事業開発部リーダーは解説する。同社が販売を始めた『ひきドア』は引き戸と開き戸の要素を組み合わせ、従来サイズのトイレでも楽に車いすを通し、介助者のスペースまでも確保できる。

 社内でアイデアを発表したのは2年前。考え方には称賛を得たが、本当に商品化できるかとの疑問も投げかけられた。試行錯誤の末、3連の引き戸が閉じた状態で外に開く機構に行き着いた。ドアが引かれた際、ワンタッチで開き戸にチェンジする独自の仕組みも取り入れられた。
 念入りに検証したのは使い勝手だった。バリアフリーに対応するため、ドア自体をレールで吊る必要があり、開閉機構はより複雑になった。介護士に使ってもらい、レバーの位置も微調整した。TDYアライアンスを組むTOTO、YKKAPの2社からも意見をもらい、トイレ空間という視点からのお墨付きも得た。
 一般的なトイレは縦910mm、横1195mm。このサイズに採用する場合、縦方向(910mm)では物理的に車いすが通れる幅しかなく、介助スペースも含めて空間を確保するには横方向(1190mm)からのアプローチがどうしても必要になる。山田氏は「横方向扉のトイレは全体の4割程度だが、住まい全体のリフォームでトイレの場所自体を変更するプランも積極的に提案していく」と強調する。
 高齢者住宅・施設向けの建材『おもいやり』シリーズを展開している同社だが、ひきドアの販売ターゲットは将来の生活を見据えたリフォーム層。TDYアライアンスでは「備えるリモデル」を重点ターゲットに置いており、その初弾商品にひきドアを位置付ける。車いす生活になれば、寝室の近くにトイレを置く必要性が求められ、寝室のクローゼット(押し入れ)部分を活用した場合でも、3分の2のスペース内に収まる。
 初年度の販売目標は6000セット。戸建てやマンションのリフォーム案件に加え、需要の拡大が顕著なサービス付き高齢者向け住宅への売り込みも重要視する。山田氏は「車いす生活を想定したひきドアにより、床材の選び方も変わる。滑らない素材に加え、ドアがすべて開く清掃のしやすさも、床材を選ぶポイントになる」と、商品のシナジー効果を口にする。
 ひきドアを実現した複雑な開閉機構にも、別用途への発展性を感じている。引き戸と開き戸の両機能によって、クローゼットや部屋間仕切りは新たな商品開発への可能性を大いに秘めているからだ。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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