2013/10/16

【現場最前線】掘削土は海上輸送 東京・江東区で昭和大学新豊洲病院

マンションやオフィスなどの開発ラッシュが続く東京都江東区の南部地域で、「(仮称)昭和大学新豊洲病院建設工事」(正式名称・昭和大学江東豊洲病院)が大成建設の施工で進められている。2011年2月の契約後に東日本大震災が発生し、労務不足や資機材の確保に悩まされながらも、構造の変更や施工の合理化、作業員の努力で難局を乗り越えた。運河に隣接する立地を生かした掘削土の海上輸送を始めとする近隣対策を徹底するほか、地元協議会の祭りに模擬店を出すなど“地域との絆づくり"にも積極的に取り組んでいる。


◇災害対応拠点

 同病院は、地震などの災害時に地域住民を守る拠点施設として計画し、現在は12月の引き渡しに向けた内装仕上げ、外構工事が急ピッチで進んでいる。規模はRC造地下1階地上10階建て塔屋1層延べ4万7270㎡。設計・監理は佐藤総合計画が担当し、14年3月24日の開院を目指している。病床数は414床で開院時は300床でスタートする。
 震災時に敷地は液状化しなかったが、約2mピッチで打設した約3200本の地盤改良杭(砂杭)、141本の鋼管巻き場所打ちコンクリート杭、96基の免震装置が建物全体を支え、非常時の病院機能を担保する。
 また、ガスコージェネレーションシステムを採用することで、エネルギーコストの低減や停電時の業務継続などにも配慮している。 
完成予想


◇契約直後に震災

 大学が大成建設と契約したのは11年2月。間を置かずに震災が発生した。須藤茂作業所長は「労務不足が顕著になり、型枠大工や鉄筋工を集めるのに苦労した」と当時を振り返る。
 復興需要により、鉄骨需要が大幅に増加し、必要数量の確保が困難になる可能性があったため、本体着工前には上部架構の構造を従来のSRC造からRC造に変更し、工期の遅延を回避した。
 12月に引き渡すためには、9月の受電が絶対条件になる。このため、躯体工事では工区を分割して作業の平準化を図ったほか、柱や梁鉄筋組み立てのユニット化、小梁のサイトプレキャスト化などにより、作業効率を向上させた。休日も返上して作業に当たるなど懸命の努力が実り、予定どおり5月の上棟を迎えることができた。

◇掘削土は8万m3

現場にはマンション、オフィスが近接していることから、騒音・振動対策には細心の注意を払った。資機材の搬入出に当たっては、隣接する小学校建設用地を使用することで、マンションなどの前を大型車が直接通行しないで済むよう工夫した。
 また、地の利を生かし、掘削土約8万m3のほとんどは場外ダンプを使わずに、運河側に桟橋を設置して海上輸送した。ダンプ100台分に当たる600m3を1日に2回海上輸送するコストは、ダンプだけの場合とほぼ同等だが、「近隣に迷惑をかけないという面でのメリットは大きかった」(須藤所長)という。近隣対策には、職長会が大きな力を発揮しており、「職長会が良いと現場の環境も良い」(同)と全幅の信頼を寄せる。
 躯体工事の際には1日当たり約400人、現在は約800人が現場で作業に当たっている。安全・品質管理を徹底するため、須藤所長は「2時間半をかけて800人全員に声をかける意気込みで現場を隅々まで回る」ことを日課とし、その甲斐もあって、着工から130万時間、無事故・無災害を継続中だ。
 「われわれは施設を建てればいなくなるが、長い間地元と付き合う病院が地域に受け入れられる状況をつくるのも仕事の1つ」。須藤所長はこう言い切り、「建設後にも地域から愛される施設であってほしい」という強い思いから、地元協議会の会合に月2回参加するほか、地域の祭りに出店するなど、近隣との交流には特に力を入れている。
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