2013/10/28

【山梨リニア】実験線42.8㌔ 時速500キロで試験走行を再開

2027年の東京~名古屋間開業に向け、東海旅客鉄道(JR東海)は、リニア中央新幹線の本線になる山梨リニア実験線42.8㎞(山梨県笛吹市~上野原市)で走行試験を加速している。先行区間18.4㎞(大月市~都留市)での走行試験中断から約2年、延伸工事の完了に伴い、ことし8月29日から試験走行を再開した。営業仕様のL0系車両で時速500㎞の走行試験を繰り返し、騒音や機械設備の耐久性など本格的な調査が始まった。超電導リニア技術のブラッシュアップやコストダウンに取り組むなか、今後車両編成数を増やすなど営業運転に備える。


◇開業後、1時間に1万人乗車見込む

 走行試験の再開は、出発式で葛西敬之JR東海代表取締役会長が力強く語った「世界の交通技術史上に記念すべき足跡を残すエポックとなる」という一言に集約される。
 L0系5両編成による走行試験再開から1カ月、9月末からは7両編成での試験に踏み切った。開業後は1時間に10本で1万人の乗車が可能となるよう、16両編成を見込んでいる。このため、今後は最長12両編成車両の試験も計画している。


◇東京~名古屋を40分/人の流れ劇的に変化


 国の期待も大きい。太田昭宏国土交通相は「この高速鉄道の画期的なイノベーションは鉄道分野における技術水準の高さを改めて世界に示す」と強調する。開通すれば、最速で東京~名古屋を40分程度、東京~大阪間を1時間強で結ぶことから、「3大都市圏間の人の流れを劇的に変え、国民生活や経済活動に大きなインパクトをもたらす。3大都市圏を結ぶ大動脈のリダンダンシー強化で災害対応としても極めて重要だ」と語り、国としても支援する姿勢を示した。
 工事区間となる山梨県も大きな期待を寄せている。横内正明知事は「リニア走行試験と富士山は日本の観光の目玉となる」と話し、外国からの観光客の増加に期待する。
 延伸区間のうち、明かり区間は10区間計5.3㎞で、トンネル区間は10カ所計19.1㎞。西側延伸区間(16.6㎞)のトンネルは西から、上原トンネル580m、花鳥トンネル150m、黒駒トンネル2960m、御坂トンネル1万4613m(うち延伸部分は8720m)。東側延伸区間(7.8㎞)は、秋山トンネル3805m、第一大ノ入トンネル151m、第二大ノ入トンネル408m、第三大ノ入トンネル115m、第四大ノ入トンネル506m、安寺(あてら)トンネル1723m。西側には大深度地下の利用を想定して構造試験や避難訓練を行う地下模擬施設がある。延伸区間の工事はJR東海、鉄道建設・運輸施設整備支援機構がそれぞれ発注した。
 延伸・設備更新の工事費は3550億円。設備更新工事は先行区間18.4㎞のガイドウエイ、地上コイル、電気設備などを全面的に更新した。

◇品川駅は大深度地下/来年度に着工を予定

 山梨リニア実験線は、1997年に実験を開始した先行区間で、地球約22周分に相当する87.8万㎞の試験走行を実施した。新型車両L0系は、実験線42.8㎞を約9分で走行する。試験は原則午前10時から午後3時半まで、10分から40分に1本のペースで日曜日以外に行っている。現在、走行試験に専念しているが、今後は一般向けの有料試乗会も予定している。
 東京~名古屋間の東京都ターミナル駅は、現在のJR品川駅(東京都港区)の直下約40m、名古屋市ターミナル駅は現在の東海道新幹線名古屋駅(名古屋市中村区)の地下約30mに整備する。全体の86%がトンネル構造で、都市部は大深度地下を使用する。建設費は5兆1000億円を見込み、14年度着工の予定。実験線は27年に開業する282㎞のうち、約7分の1に当たる。
 また、JR東海は「環境問題の緩和にも貢献する修繕と運営や技術を国際標準化していく。日本政府の指導のもと、米国にプロモーションの努力をしている」(葛西会長)と、超電導リニア技術の海外展開にも意欲的な姿勢を示している。今後は、実験線の試乗による海外へのアピールも考えている。


◇延伸部施工区間と担当JV


〈鉄道・運輸機構〉
▽小山高架橋他(2.0㎞)=熊谷組・青木あすなろ建設・富士ピー・エスJV
▽浅川橋りょう他(1.7㎞)=五洋建設・安部日鋼工業・大日本土木JV
▽黒駒トンネル他(3.4㎞)=前田建設工業・鴻池組・東洋建設JV
▽金川橋りょう他(0.8㎞)=錢高組・アイサワ工業・北野建設JV
▽御坂トンネル(西)他(2.9㎞)=大林組・東亜建設工業・大和小田急建設JV
▽同(中)(2.2㎞)=鉄建・東急建設・りんかい日産建設JV
▽同(東)(3.0㎞)=鹿島・飛島建設・佐藤工業JV
〈JR東海〉
▽地下模擬施設(0.6㎞)=名工建設・JR東海建設JV
▽都留工区(3.0㎞)=大成建設・佐藤工業・早野組JV
▽大ノ入工区(2.2㎞)=鹿島・熊谷組・飛島建設JV
▽安寺工区(2.6㎞)=清水建設・前田建設工業・竹中土木JV
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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