2014/07/31

【APECアーキテクト】日本人初の豪州登録が認定! 藤田尚雄氏に聞く

日本とオーストラリアがAPECアーキテクト登録者を相互認証する2国間協議を結んだのは2008年。これに基づき、日本人のAPECアーキテクトとして藤田尚雄氏(藤田尚雄建築設計スタジオ代表)が初めて豪州登録の門を叩いた。「まさか、わたしが初めて豪州の扉を開くとは思いもしなかった」という藤田氏に、その経緯を聞いた。

 藤田氏がAPECアーキテクトの存在を知ったのは、所属する東京建築士会のホームページだった。米国コーネル大学で建築を学び、卒業後に米国最大の設計事務所SOM、さらには日本の建築設計事務所にも7年間ほど席を置き、独立したのは1991年。「わたし自身がAPECアーキテクトの登録条件を満たしていることを知り、仕事の機会を増やすきっかけになれば」と思い立った。
 日本での登録が完了したのは2013年9月。今度は日本APECアーキテクト・プロジェクト・モニタリング委員会事務局(建築技術教育普及センター)のホームページで、日本が豪州と2国間協議を結んでいることを知った。「海外の設計経験を生かし、外資系企業との仕事もしていた。何よりオーストラリア大使館で設計の仕事に協力しており、わたしが豪州に登録できれば、今後の活動の幅も広がる」とすぐに決心した。
 豪州の建築家がAPECアーキテクト登録を行う場合、2年以上の実務経験や学歴資格のほか、実務試験も課せられる。2国間協議により、日本の登録者はこれらの試験や実務経験が免除され、「SAP」と呼ばれる面接試験のみで豪国の登録者として認められる枠組みが整っている。
 藤田氏には申請書類の記入も含め、事務局の建築技術教育普及センターが全面的にサポートした。13年10月から準備に入り、正式に書類が受理されたのはことし4月。その2カ月後に面接試験を受講した。会場はシドニーにあるAACA(豪州アーキテクト認定協議会)オフィス。面接官を務めた2人の豪州建築家から1時間ほどのインタビューを受けた。
 「堅苦しい感じではなく、とてもフレンドリーな印象を持った。作品集を持参したこともあり、わたしの経歴とともに、どのような建築作品を手掛けてきたかを中心に聞かれた」。APECアーキテクトの実務経験として登録した米国KLJ社のプラスチック工場(埼玉県川口市)についても質問が及んだ。

実務経験として登録した米国KLJ社のプラスチック工場
プラスチック工場のスケッチ
「この仕事は米国本社のエンジニアと製造ラインの仕様などを細かく打ち合わせる必要があり、英語のできる設計者という点も評価され、仕事を依頼された」。規模はRC・S造地下1階地上3階建て延べ4192㎡。外壁の一部には苔を張り、屋上緑化を取り入れた環境配慮の試みも面接官の共感を得た。
 面接ではデザインや設計の考え方だけでなく、豪州の建築基準や損害賠償保険など実務面についての理解度も確認された。「わたしが合格すれば、今後は豪州の建築家としても仕事をすることにもなる。気候条件や環境配慮の側面なども含め豪州の実情を少しでも理解してもらいたいという面接官の思いを感じた」
 合格を通知する電子メールが届いたのは7月3日。遅れて郵送で認定書類なども届いた。豪州には8つの州・地域があり、その中から東南部に位置するニューサウスウェールズ州への登録を決め、21日に書類が同州の建築家登録機関に受理された。8月にも登録の最終判断が下される。
 「APECアーキテクトとの存在を知り、しかもローカルアーキテクトとしてオーストラリア大使館で07年から設計の協力をしていた。まさに運命のめぐり合わせと思っている。APECアーキテクトは一方通行ではない。ぜひチャンスがあればオーストラリアでも仕事をしたい」
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

0 コメント :

コメントを投稿