2014/09/23

【日建連登録1号】土木を愛する女子たちが立ち上げた「チームなでしこ外環田尻」

千葉県市川市で建設が進む東京外環自動車道の田尻工事の現場に、女性11人で組織する「チームなでしこ外環田尻」という組織がある。チームは、日本建設業連合会(中村満義会長)が女性技能労働者の活用策の一つとして立ち上げた「なでしこ工事チーム」の登録第1号でもある。8月下旬には、太田昭宏国土交通相も現場を訪ね、「現場のイメージを変えてほしい」と激励した。11人に共通するのは、土木好きという考えだ。なでしこチームの核心に迫った。

◆「みんなでやってみよう」から

 チームなでしこは、外環田尻を施工している大成・戸田・大豊JVから5人、CADオペレーター3人、ガードマンを始めとする専門工事からの3人で組織した。今回取材に対応してくれたのは、大成建設からチームリーダーの高橋奈帆子さん、窪田しおりさん、山形亜沙さんと、戸田建設の高橋しおりさん、大豊建設の石井千晶さんの5人。

大成建設の高橋菜帆子さん
立ち上げは「日建連で、なでしこ工事チームの登録が始まる。田尻工事には女性も多いのでやってみようと始めた」(高橋リーダー)のがきっかけ。7月から活動を始め、女性がいきいきと働ける作業所を目指し、女性目線で魅力的な職場について議論している。
 現場でいちばん話題にのぼるのは、やはり専用トイレやシャワー室、休憩所の設置だ。「田尻工事の現場は統括所長の意向もあって、ほかの現場に比べるとトイレの設置などが進んでいる。所長ももっと提案をしてこい、と言ってくれる」(高橋リーダー)。一方で、職人さんたちがつい女性専用というトイレを使ってしまうこともある。
 「チームが発足してからは、安全教育のときに説明したりして、運用ルールの徹底も進んできた」(同)。

◆外部への発信力上げたい

ヘルメットには自分たちで制作した専用シールが貼られている
チームの女性だけで、胸やトラチョッキに付けるワッペン、ヘルメットに付けるエンブレムシール、ポスターもデザインした。「グッズの効果で、現場でも職人さんから声を掛けられたり、日ごろは交流が少なかったほかの部署の女性とも連帯感が出てきた」
 月に一度の意見交換会では、作業着や安全靴についても話が及ぶ。「作業服の洗濯機が1台しかないので、もう1台ほしい」「安全靴のサイズが大きいものしかないので、中敷きを3重にして使っているが、ぬかるみにはまるとすぐ脱げてしまう」「作業服ももっとデザインにこだわってほしい」など、女性ならではの改善点が指摘される。
 また、結婚や出産を迎えたときに、「また現場での仕事を続けたい」と考える人と、「いつかやめなければならないと思う」人がいる。人材の活用という点では、雇用する会社にとっても非常に重要な要素だ。
 チームなでしこを組織したことで外部への発信力が上がり、男性にも女性の働く職場のあり方を真剣に考えてもらうきっかけにしていくのが、チームの願いだ。

◆それぞれの思い

 取材した5人は、全員が土木系学科の卒業生。高橋リーダーは現在入社4年目、土木専攻で地震について学び、研究職と現場の両方を考えたが、「まずは現場を知りたい」との思いで現場にやってきた。現在は躯体構築の計画を担当している。

大成建設の窪田しおりさん
窪田さんは、今年度入社で、設計も現場も望んでいる。現場が好きという意志のもと、計測を担当している。

大成建設の山形亜沙さん
山形さんは入社4年目で、高橋リーダーとは同期。「構造物をつくりたい」一心で大成建設に入社した。田尻工事の前の現場は宅地造成で、2年半、女性一人の職場を経験している。「そのときの先輩がダムの経験者だったので、その魅力にはまった。いつかは自分もダムの現場を経験したい」という。

戸田建設の高橋しおりさん
戸田建設の高橋さんは、経験7年目。「女性でも意欲があればどんどん採用する」という会社の社風が気に入って入社した。「普段は大変なことも多いが、竣工したときの感動は大きい」と話す。職人さんたちへの指示の出しで苦労したこともあるが、「それは女性だからというより、元請の技量の問題」だと、ベテランの貫禄も出てきた。

大豊建設の石井千晶さん
大豊建設の石井さんは、入社2年目。学生のころからシールドやケーソンなど土木の醍醐味に触れたくて大豊建設を選んだ。田尻工事では開削工事を担当。「実際の現場では、土量が桁違いに多くて驚いた」という。学生時代にパラオでホームステイを経験、日本人がつくった土木構造物が海外で役立っていることに感動し、「いつかは海外工事に就き、地域の人に貢献できることをしたい」という。

◆男女の別なく働ける環境を

 田尻工事のある外環千葉区間は、東日本高速道路会社発注の工区以外に、国土交通省関東地方整備局が発注する他工区でも「千葉外環どぼじょ会」という組織がある。また、日建連の、なでしこ工事チームへの登録も増えつつある。
 高橋リーダーは、「いずれはほかの女子会などとネットワークがつながっていくことも目標」にしている。
 建設技能労働者の人材・確保育成については、国土交通省を始め、日建連などの団体が本腰を入れ始めている。若手入職者を増やし、社会保険加入などと並んで、女性技術者・技能者の活用は大きなテーマとしている。
 女性チームの立ち上げは、多くの組織で行われているが、意見交換にとどまらない実効性のある取り組みとして、周囲の組織や機関のバックアップは不可欠だ。
 土木や現場が好きという気持ちは、男性も女性も変わらない。どちらもごく当たり前に現場で働き、区別なく働ける環境を整えることが、女性技能労働者の活用に必要な取り組みではないだろうか。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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