2012/09/22

連載・GSAのBIMマネジメント(2) BIM=3D形状情報+属性情報

マクリーミーカーブ
3次元CADを使用すれば、BIMと言えるわけではない。ビルディング・インフォメーション・モデリングというとおり、BIMに「情報」は不可欠であり、3次元の形状情報にさらに属性情報を付け加えて初めてBIMたり得る。
 2次元CADの構成要素が線や面であるのに対し、3次元CADは柱や壁、床、建具といった建物の構成部品を表現するオブジェクトによりモデルを構成する。3次元の形状情報だけでも、設計内容をビジュアルに表示したり、部品が互いに干渉していないかチェックをしたり、工事発注用に2次元の図面を出力することもできる。

 しかし、さらにオブジェクトに属性情報を追加することで、BIMはその真価を発揮する。例えば、施工順序という時間情報(4D)を加えることで、養生計画や仮設計画といった施工プロセスを、誰にでもわかりやすいかたちで詳細に検討することができる。また、単価という属性(5D)を加えると、3次元モデルから自動的に算出された数量と掛け合わせることで、正確かつ迅速にコストを算出することができる。属性情報が建物のライフサイクル全体を通して活用されれば、建設産業全体の効率化が実現されるであろう。
 私が米国連邦調達庁(GSA)で調査したのは、第1にこの属性情報はどのようなものでなければならないかということ、第2に発注者、設計者、施工者はこれら情報を用いて、より生産性を上げるためにどのように協力し合えばよいかということであった。

◇共通分類ルールと固有のコード

 建物には企画から維持管理まで、実に多数の者が関係する。情報を間違いなく他者に伝えるには、共通のルールの下で属性情報を入力する必要がある。ある人は3次元モデルに「外部建具」と入力し、ある人は「窓」と入力すれば、混乱は必然であろう。情報を分類するルールとしてのクラシフィケーションと固有のナンバーとしてのコードが必要不可欠である。
 次に、属性情報を2次元図面のように人間の解釈を経ずに、アプリケーション間で直接受け渡すことができれば、コンカレント(同時並行)の作業が容易となる。例えば、これまで構造計算や環境シミュレーションに際して、シミュレーターに2次元図面から手作業で拾ったデータを入力していたのが、直接データを渡すことができるようになれば、何度も繰り返しシミュレーションすることが可能となり、より最適化されたデザインが可能になる。
 設計者と施工者についてもコンカレントのメリットは発揮できる。プロジェクトは後段階になればなるほど、変更に要する費用は大きくなる。施工者のノウハウをより設計の初期段階に反映し、設計作業を前倒し(フロントローディング)させれば、手戻りを少なくすることができ生産性を上げることができる。米国ではBIMの普及とともにIPD(インテグレーテッド・プロジェクト・デリバリー)という新しい契約手法が産み出され、設計者と施工者の関係も大きく変わろうとしている。
(内閣府沖縄総合事務局開発建設部営繕課長 大槻 泰士氏)
建設通信新聞 2012年9月12日12面

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