2013/09/07

【素材NOW】業界初の「ガラスモザイク」再現! TOTOのシステムバス

TOTOが満を持して発売した高級システムバス「SYNLA(シンラ)」。細部にまでこわだり抜く中で、足元のフォルムも従来とは大きく様変わりした。床の表皮デザインに採用したのは、業界初となる「ガラスモザイク調」の質感。福岡伸幸浴室開発部構造開発グループリーダーは「実は床構造が大きな進化を遂げたことにより、表層の新たな展開が可能になった」と明かす。

◇翌朝に靴下で入れる

 床構造は、システムバスの進化の歴史でもある。同社が翌朝に靴下で入れるくらい乾きにこだわったカラリ床を商品化したのは2001年。水を吸わないFRP(繊維強化プラスチック)素材の床を確立した。汚れや滑りには強いが、1層構造の床は表層が硬く、心地良さに欠けていた。
 構成を3層に変更したのは08年。FRPの間にクッション材を入れ、床の柔らかさを実現したソフトカラリ床は、3層構造による断熱効果も付与できた。ユーザーの評判は良かったが、製造コストが高くなり、ボリュームゾーンの商品に採用することが難しいという課題があった。
 そもそもシステムバスは、搬入された部材を作業員が現場で組み立てる。戸建て住宅とマンションでは作業環境に違いがあるように、同じ商品であっても用途に応じて部材構成を変える必要がある。マンションのリモデル工事では浴室が四方の壁に囲まれている。常に4種類の構成部材を用意せざるを得ないため、製造時のコストアップ要因になり、用途ごとで商品投入の時期に差が生じていた。

 

◇4層床が意匠効果引き出す

 床構造の大幅な刷新のきっかけは、ユーザーの声だった。数万人にアンケートした中で、わずか2人ながら「床が思ったほど温かくない」と、自信があったカラリ床の性能を否定された。3層構成を徹底検証する中で、ベース材のFRPが機能として役立っていない点に気付かされた。
 たどり着いたのは4層構造。FRPを表層に限定し、その下にクッション材、基材、フレームの構成とした。福岡グループリーダーは「あえて機能を部材ごとに細分化させたことで、可能性が一気に広がった」と説明する。特殊配合のFRPは原価が高く、これを少なくしたことで、コストを抑えることにも成功した。利点は他にもあった。
 床を4層に細分化したことで、用途を選ばずに現場の設置作業に対応でき、懸案だった部材の統一化が実現した。基材として採用した発砲ポリプロピレンが決め手となった。自動車バンパーの内側などに使われている素材で、適度な硬さを再現でき、伸縮性にも優れていた。床材への採用には高い加工精度が求められたが、それを実現する製造パートナーと連携できたことも大きかった。


 
4層構造の床
◇脱工業製品、本物らしさ追求

 構造の進化は、意匠表現にも効果をもたらした。機能が重視されてきたユニットバスだが、近年はデザイン性へのニーズが高まる。表層には12年2月に初めてモザイクタイル調のデザインを採用したが、工業製品の域を脱せずにいた。デザイン企画部のデザイナー池田恵理子さんは「本物のガラスモザイクタイルを超える素材感を」と悪戦苦闘した。
 表層のFRPは薄くなり、製造は従来の金型加工からシート加工に切り替わったことで、インクジェット印刷の活用に道筋がついた。透明色も含め、色むらや奥行き感も自在に表現できる。タイルの微妙な傾きをパターンに落とし込み、本物らしさの質感を追求してきた。
 商品化されたガラスモザイク調の床は、工業製品でありながらも一点物だ。印刷のゆがみが生じないように商品の床一つひとつに対して、手作業で微調整の補正をかける。調整のポイントは16カ所に及ぶ。池田さんは「モザイクパターンは無限大で一つとして同じ商品はない。そこまでしてようやく本物のタイルに近づく」と説明する。
 同社は、高級システムバス『シンラ』によって在来工法の浴室を選ぶ高級志向のエンドユーザー層を取り込む狙いがある。脱工業製品の本物らしさ追求は、ブランド構築の新たなチャレンジ商品に他ならない。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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