2015/04/19

【記者座談会】神宮球場とラグビー場建て替え公表 五輪後の一大プロジェクトはどうなる?

A 神宮外苑地区のまちづくりが明らかになったね。
B 1日のまちづくりにかかる基本覚書の締結式には、東京都の舛添要一知事と、明治神宮、日本スポーツ振興センター(JSC)、高度技術社会推進協会(TEPIA)、伊藤忠商事、日本オラクル、三井不動産のトップら関係権利者6者が顔をそろえた。事業の重要性がうかがえる。

C 神宮外苑地区の情報は、昨年秋につかみ、先行して報じた。ただ、当時は新国立競技場の規模や景観をめぐる問題が落ち着いてきたと思ったら今後は国立競技場解体の施工者が決まらず話題になった。国立の秩父宮ラグビー場建て替えを公表するタイミングではなかったのだろう。
B 国立競技場解体も順調に進み、都の五輪関係施設整備も具体化してきた。鉄道ネットワーク計画なども含め五輪後の新たな東京の都市づくりにも注力している舛添都政にとって、目玉事業だけに新年度初日の発表としたようだ。構想内容を聞いていた関係者にとっても都が示した球場とラグビー場の連鎖的な建て替えという具体の発表はかなり踏み込んだものと映ったのではないか。
C 都が神宮外苑地区の地区計画を決定したのが2013年6月。この中で、神宮球場や秩父宮ラグビー場のある地区を「大規模スポーツ施設、公園、既存施設などの再編・整備を図る地区」に位置付けている。また、青山通り沿道、東京メトロ・外苑前駅周辺などではオフィスや商業・交流施設などの導入促進も示されている。新国立競技場は、19年開催のラグビーワールドカップのメーン会場に決まっていた。そこに東京五輪開催決定で周辺開発の内部検討も加速した格好だ。
A そもそも球場とラグビー場は、なぜ入れ替えるの。
D 神宮球場は、法的にさまざまな制約があり現地建て替えが難しいという。ラグビー場とテニスコート跡地であれば同規模の建設が可能になる。また、東京六大学野球が建て替え期間中に「神宮」を離れることに難色を示しているとも聞く。東京ヤクルトスワローズの本拠地というより、1926年開場以来、東京六大学野球の開催球場という歴史的な重みが大きいようだ。
C 秩父宮ラグビー場も“聖地”だが、ワールドカップは新国立競技場で開催される。ラグビー場跡地に新神宮球場を整備すれば「神宮」を離れずに大学野球が開催できる。移転後、球場跡地に新秩父宮ラグビー場を整備するという構想は、こうした課題を解消するものだ。
A 地区内に所有施設がない都が発表した理由は。
D 神宮球場は明治神宮が所有し、ラグビー場は国の施設。両施設の間にあるTEPIAは一般財団法人が管理・運営する展示施設だ。青山通り沿いには本社を構える民間企業のビルが立地している。こうした複雑な状況下で、関係地権者の誰かが口火を切るのは難しい。事業の具体化に向けた検討を進めるには、第三者的な立ち位置の都が調整役を務める意味は大きい。
B 都は、この地区を日本のスポーツ拠点「スポーツクラスター」と位置付けている。64年五輪開催の年に建設され、老朽化して、現地建て替えが困難な岸記念体育会館が移転してくるといった話もある。JSC本部棟建設に加え、日本の各種スポーツ団体が加盟する日本体育協会や日本オリンピック委員会(JOC)の集積が実現すれば名実ともに「スポーツクラスター」となるだろう。
C 青山通り周辺での再開発を誘発する可能性もある。1日の会見では五輪後の着工を明示した。『東京の開発は20年で終わるわけではない』というメッセージともとれる。一方、実現には事業費を含む事業スキームの構築が重要になる。これからも目を離せないね。
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