2015/04/10

【記者座談会】働き盛りの職員が自治体に転職…嘆く各社の入社式は?

A 総務省の定員管理調査の結果を見ると、都道府県の土木・建築部門の職員数減少が止まったね。
B 中堅ゼネコンや地域の建設会社からは、一昨年くらいから「自治体に若手が転職する」という声が高まっていた。しかも、自治体は30-40歳くらいの技術資格保有者を率先して採用しているため、「10年程度こちらが大切に育ててきた社員が、さあこれからという時に転職する」と嘆く声が強く、業界からは自治体に中途採用をやめるよう要望すべきだという意見すら出ていた。今回の調査結果は、自治体による採用増の動きを裏付けたものと言える。
(写真は清水建設の入社式。)

C ある地方の建設会社社長は「地域で最も給与が高いのが県職員という不文律があって、うちもその給与より高い額を払えない」と言っていた。給与が高い上に安定していて、転勤もないなら、自治体への転職希望が増えるのは当然だと。
B 建設コンサルにとっても脅威だ。建設コンサルタンツ協会が中途退職者の再就職先を調べると、自治体、同業他社、他業界がほぼ3分の1ずつだった。大手でさえ「うちは半分くらい自治体にいっている」と嘆いている。同協会が毎年開いている公共発注者との意見交換会で、コンサルから人材を採らないよう要望してほしいという会員の意見があった。さすがに、「そんなみっともない要望はできない」ということで議題にはならなかったが、業界の苦境を表しているエピソードといえる。
D 建設業界でも、「そもそも建設業の処遇や就労環境を改善して、自治体に引き抜かれないよう努力すべきで、自治体に採用をやめるよう求めるのは筋違いだ」という意見が出て、正式に要望を提出することはなかった。やはり、問題の根本は、建設会社社員だろうが、自治体職員だろうが、国土づくりの担い手になりたいと思う若者の絶対数を増やす取り組みが求められているということだ。
A ところでことしも各社が入社式を開いたけど、どんな雰囲気だった?
C 清水建設を取材したけど、宮本洋一社長のあいさつは、冷静な口調だが熱いメッセージが随所に込められていた。特に、「体で汗を、そして頭でも心でも汗をかいてほしい」という言葉が印象的だった。あらかじめ原稿を用意していたようだが、原稿にはないこともたくさん話していたらしい。
D 社長のアドリブが聞けるのも取材の醍醐味の1つだね。その時々に社長が何に関心を持ち、どんな思いを抱いているかを垣間見ることができる。
C 最後に代表謝辞を述べたのは、祖父が職人だったという多田明日美さん。「建造物を通じて笑顔を提供したい」と意気込みを語った。女性のさらなる活躍を感じさせる謝辞だった。
D 大成建設の入社式は4月1日付で就任した村田誉之社長のまさに「初陣」だった。300人を超える新入社員を前に、諦めないことの大切さを強調したメッセージが印象的だった。「最高の達成感は相当な苦難を乗り越えてこそ得られる」という部分は自らの体験に基づいているだけに重みがある。
E 設備工事業界は、電気も空調も「総合設備企業」である点に力点を置く企業が増えている。それに見合う人材として育ってほしいという願いから、「視野を広く持つ」や「出会いを大切に」といった、部門を超えた活動を求める社長メッセージが目立った。顧客からの信頼、チームワークの重要性、チャレンジ精神を説く声が共通して多かったように思う。
C いずれにしても新入社員が、将来の建設業界を担う希望であることは間違いない。不屈の精神と向上心で難局に立ち向かい、大きく飛躍してほしい。
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