2016/11/10

【アイノ・アールト】内藤廣氏、ウッラ・キンヌネン氏ら招きシンポ@ギャラリーエークワッド


 竹中育英会とギャラリーエークワッドは、東京都江東区の竹中工務店東京本店でシンポジウム「アイノ・アールトの果たした役割」を開いた。建築家の内藤廣氏やフィンランドからアイノ・アールト研究者のウッラ・キンヌネン氏を招き、20世紀を代表する建築家の1人であるアルヴァ・アールトにとって公私ともに最良のパートナーだったアイノの多彩な才能と素顔に迫った。

 ギャラリーエークワッドで10月31日まで開かれた展覧会「AINO AALTO(アイノ・アールト) Architect and Designer-Alvar Aaltoと歩んだ25年」の関連イベントで、フィンランドからはアルヴァとアイノの孫であるヘンリック・アールト氏のほか、アルヴァ・アールト財団美術館のトンミ・リンダ館長やフィンランド建築デザイン協会のレーナ・ロッシ副協会長らも参加した。
 冒頭、白川裕信ギャラリーエークワッド館長は「アールト夫妻は人の気持ちや動作、ふるまいなどさまざまな観点から洞察し、注意深く適切と考える環境をトータルにデザインした。そこにアイノの力があったのではないか」と語るともに、「できるだけ本物を展示することにこだわった」とあいさつ。リンダ館長はアイノにスポットを当てた世界でも初となる今回の展覧会に謝意を示した。

 内藤氏は、自身の建築活動とアールト作品とのかかわりなどを紹介。特にマイレア邸について「これまで味わった一番のぜいたくと言えるすばらしい空間体験だった。文化と生活がこんなに高いレベルで結晶しているのが信じられない気持ちだった」と振り返り、「アイノとアルヴァは空間のビジョンを一緒につくり上げた。生活、空間がこうあるべきだという1つのビジョンから導かれたものだと思う」と述べた。

内藤廣氏

 また、アイノのデザインについて、「木への愛情や自然に対する畏敬の念が含まれているような気がする。アイノの身体感覚、自然に対する感覚のその先に、フィンランドの自然の風景が広がっている」と指摘した。
 その上で「大国ソ連とヒトラーのナチスに挟まれ、国の存立が危ぶまれる中で独自の文化、フィンランド独特の空間をつくろうとした。それがフィンランド国民からこれだけ尊敬を集める理由ではないか」との考えを示した。
 キンヌネン氏は、女性の社会進出が進んでいなかった時代に「ワーキングマザーであり、デザイン事務所のパートナーであり、国際的な企業のディレクターといくつもの役割を果たした」とした上で、その生涯を解説した。
 ヘンリック氏は、アールトハウスやヴィラ・フローラで過ごした家族の思い出などを紹介した。
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