2015/08/27

【新国立競技場】士会連合会が屋根木造化を提言 ザハ・ハディド氏は検討内容を公開

■日本のアイデンティティーを表現できる
 日本建築士会連合会(三井所清典会長)は、新国立競技場の屋根構造木造化に向けた提言を発表した。現在の建築技術や木材の生産・供給体制を活用すれば、構造性能、工期、コストなどの点からも屋根構造の木造化は可能とした。26日に東京都港区の建築会館で開かれた会見で三井所会長は、「設計の諸条件が決定する前に、木造の屋根を検討対象から外さないでほしいという思いで提案した。木造は日本文化を象徴するものであり、日本のアイデンティティーを表現できる」と語った=写真。

 提言では約1万m3の木材を使用し、8万人規模のスタジアムの観覧席のみを覆う屋根を提案した。全国のプレカット工場と集成材工場の協働により施工の簡略化とコスト削減を図り、屋根工事を約150億円で実現できるとした。また、上部構造の軽量化による下部構造のさらなるコスト削減も期待されるとしている。
 提言書は25日に遠藤利明五輪担当相へ直接提出、設計業務を発注する際には木造も選択肢に含めるよう求めた。

■デザイン維持訴え、コストや工期など説明


英国の建築家、ザハ・ハディド氏は26日、白紙撤回された新国立競技場の2年以上に及ぶ検討内容を公開した。デザインの背景・意図、外苑の敷地との関係、コストや工期などを説明し、「いまは現在のデザインを使わずに良い結果を得る可能性の希望的な利点ばかり誇張されて述べられ、リスクが軽視されている」とした。
 工事費の高騰については、限られた競争しかない入札方法を根本的な問題に挙げ、新整備計画は「工事費を下げるために行われるべきで、いままで培われたデザインを無駄にするべきではない」と強調した。また、批判の多かったキールアーチについては、無柱空間の確保により座席とアーチの同時施工が可能となり、柱を屋根で支える案よりも約3カ月程度工期を短縮し、コストを削減できるとした。
 その上で、デザインが軽視されている現状に対して「逆にデザインこそが、このマーケットの状況で価値を生み出す唯一のもの」とし、これまでに蓄積したデザインを維持することで「次の50年-100年を担い、国民の祝祭の場として敬愛される施設」が実現できると訴えた。

ザハ・ハディドアーキテクツによるビデオプレゼンテーションとレポート―新国立競技場


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