2015/08/17

【現場最前線】上棟間近! 回遊性高い九州最大級のオフィスビル『JRJP博多ビル』

九州の玄関口、JR博多駅に近接する博多駅中央街南西街区に九州旅客鉄道(JR九州)と日本郵便(JP)が『JRJP博多ビル』の建設を進めている。低層部に商業施設を配する九州最大級のオフィスビルで、2016年春の開業を目指す。隣接して工事が進むKITTE博多とともに、地下通路とペデストリアンデッキで博多駅と直結する。JR九州事業開発本部開発部オフィスビル開発プロジェクトの森義由紀課長代理は、「これらに加え、各ビル1階の貫通通路もできる。動線が増えることで回遊性が高まり、街に広がりができる」と見通す。施工する大林組の上村潤男所長は、「旧ビル外周の地中基礎の一部を残してSMW(ソイルセメント地中連続壁)を打設する技術提案が総合評価で採用され、工期短縮やコスト縮減につながっている」と現場の取り組みを話す。

 JR九州は、博多駅周辺の活性化を図るため、10年に旧博多ビルを取得した。南西街区は、福岡市が都心部の機能強化と魅力づくりを推進するために設けた都心部機能更新誘導方策が初めて適用され、隣接地を所有するJPと共同で新ビルの建設計画を進め、14年4月に着工した。同ビルの南側では、福岡市営博多駅駐車場を廃止して建て替える計画が進んでおり、「ペデストリアンデッキを南側に延伸できるように設計している。これともつながれば、回遊性はさらに高まる」(森課長代理)と地域の活性化に期待を膨らませる。

JRJP博多ビルの完成予想
機能性を重視したオフィスフロアは、九州でも数少ない1フロア700坪以上の空間を実現するとともに、最大13分割まで対応できる個別空調システムを備える。地下駐車場から直接オフィスフロアへの移動もできる。入居企業のBCP(事業継続計画)対応では、制震構造に加え、電気室を2階に設け、屋上には72時間対応の非常発電機を導入する。LED(発光ダイオード)照明や自動調光システムなどの省エネ機器も採用し、安全と環境性能を高い次元で両立する。
 施工に当たっては、「切梁を地下に架設したまま1階の床を先に構築し、地上鉄骨建て方と地下躯体を同時に施工する2段打ち工法を採用している。また、地上低層部は敷地境界から2mのセットバックが義務付けられており、斜め柱のCFT圧入で対応した」(上村所長)。
 BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)も活用し、地下スロープ施工のステップや切梁と構造躯体との干渉のほか、設備や内装の納まりを検討している。鉄骨建て方にトータルステーションを用いた3次元計測管理システムも採用し、精度を高めている。また、博多駅周辺では、KITTE博多に加え、地下鉄七隈線の延伸工事も進められており、3現場の施工者が集まって交通渋滞を避けるよう調整した。大林組では、車両トータル運行管理システムを導入し、車両位置の把握や運行予定、実績を一元的に管理している。
 ビルの特長となるのが住吉通りからのアイストップとなる南側の外観だ。「福岡市の都市景観アドバイザー会議から助言を受け、コーナーにアクセントとなる表情を与えた。夜間はライトアップされ、光を演出する」(森課長代理)と話す。上棟は9月16日を予定しており、その後、外装、設備工事、内装工事と最盛期を迎える。上村所長は、「第三者災害防止を含め安全、品質、工程管理に努める」と気を引き締める。

【工事概要】
▽事業主=九州旅客鉄道(JR九州)・日本郵便(JP)
▽設計・監理=日建設計(構造設計は大林組)
▽施工=大林組
▽構造・規模=S・RC・SRC造地下4階地上12階建て塔屋1層(法定階数)延べ4万3567㎡
▽建設地=福岡市博多区博多駅中央街8番1号
▽工期=2014年4日2日-16年4月30日
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