2016/04/23

【現場最前線】学校ならではの短工期にさまざまな創意工夫 上智大学ソフィアタワー建設工事


 上智学院が東京都千代田区にある上智大学四谷キャンパスの新たなランドマークとして整備する、「上智大学四谷キャンパス6号館(ソフィアタワー)建設工事」が大成建設の施工で進んでいる。異なる軸線をもつ複雑な構造や、入学試験期間中の工事制限といった特有の条件下で、さまざまな難局を高い技術力と創意工夫、“現場の一体感”で打開しながら、施工の効率化を図っている。画像は完成予想(左がソフィアタワー)。


 4月6日現在の進捗率は50%。12月の完成に向けて躯体関係工事が最終段階に差し掛かっている。
 現場は国道20号(麹町大通り)に面し、地上17階建て高さ77mとなる施設の完成後は既存の2号館、7号館とともに、四ツ谷駅側からの新たなスカイラインを形成する。7階以上の高層部は四ツ谷駅前という立地を生かし、アンボンドブレースや粘性制震壁のほか、非常用発電機などのBCP(事業継続計画)対応機能を盛り込んだオフィスとして貸し出す。
 建物は周辺景観との調和を目的に、高層部の軸線をキャンパスの中央を南北方向に貫く通り(キャンパス軸)に合わせ、大学施設となる低層部は国道20号に側面を沿わせているため、異なる2つの軸線をもつ複雑な構造になっている。このため、使用する鉄骨もX、Y軸だけではない複雑な形状となり、加工にも手間がかかる。

低層部の吹き抜け部分。フロアごとに開口部の形状が異なる

 現場で指揮を執る西智弘所長は、これまでに多くの大学、病院施設建設を手掛けてきたが、「施工図の作成には一苦労した」と振り返る。
 工期は26カ月だが、キャンパス内という特殊な現場条件のため、入試期間中は現場作業を基本的に停止する。さらに期末試験などの期間中も大きな音が発生する作業は制限されるため、実質的な工期はさらに短くなる。
 学校行事による工程ロスを取り戻すため、現場では緻密な施工計画の下、さまざまな創意工夫を取り入れている。その1つが高層部分の先行立ち上げだ。高層部分の建て方を先行し、タワークレーンを早い段階で上層部分に固定することで、低層部にクレーン支柱がなくなり、スムーズに内装工事へ移行することができる。内装仕上げの邪魔になる支柱がなくなることで、作業効率も上がる。

窓ガラスと一体化した外壁ユニットの取り付け

 外壁の先行設置も工期短縮に一役買っている。一般的には床スラブ打設後に外壁を設置するが、先行設置することで作業の安全性が向上し、効率化につながるという副次的な効果も生まれる。外壁には窓ガラスと一体化したPCa(プレキャスト)ユニットを採用。使用するユニットは1300ピースに及ぶため、茨城県内に今回の工事専用の保管ヤードを設置し、ピストン輸送している。
 高層部では外壁の設置、低層部では内装工事が同時に進行する。4月末までには全ユニットの取り付けが完了する予定だ。
 4月上旬時点で約300人の作業員が現場で働くが、これから迎えるピーク時には700人規模に膨れ上がる。西所長は「設計者、施工者、作業員が一体感をもって仕事をする」ことをモットーに、何よりもコミュニケーションを重要視する。
 特注のロゴ入りジャンパーを100着作り、職長や社員に配布しているのも、一体感をより強固にするための取り組みの1つだ。現場では「丁寧な作業所を目指す」をスローガンに、「細かいところまで気を配ること」「注意深く念入りであること」「言動が礼儀正しく心がこもっていること」の3点の心がけを常に促している。「心を込めてつくる」という強い思いが現場の一体感と円滑な施工の原動力になっている。

【工事概要】
▽工事名称=上智大学四谷キャンパス6号館(ソフィアタワー)建設工事
▽工事場所=東京都千代田区麹町6-1-1、25(地名地番)
▽建築主=上智学院
▽プロジェクトアドバイザー=三井不動産
▽設計・監理=日建設計
▽施工=大成建設
▽敷地面積=5744㎡
▽建築面積=3775㎡
▽構造・規模=S・SRC造地下1階地上17階建て塔屋1層延べ3万8949㎡
▽主要用途=大学、事務所、店舗
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