2016/04/18

【2016年建築学会賞】大賞は伊東豊雄氏ら3人に 学会賞は4部門18件を決定

作品賞の1つ。流山市立おおたかの森小・中学校、
おおたかの森センター、こども図書館(撮影:吉田誠)
日本建築学会は2016年の学会大賞3人、学会賞(4部門)18件を決めた。そのほか教育賞、著作賞、作品選奨、奨励賞、文化賞、作品選集新人賞も発表した。学会大賞は、東日本大震災で被災者の集いの場となった「みんなの家」を提案し「設計を通して社会批評するという建築家の設計思想への反省」という思想を提言した伊東豊雄氏、1960年代から文化財建造物の保存修復・復元を指導してきた金多潔氏、空調設備設計に模型実験やコンピューターシミュレーションを活用する方法を開拓した中原信生氏に贈られる。

 伊東氏は41年6月生まれ。65年東大工学部卒業。84年に「シルバーハット」、91年に「八代市立博物館・未来の森ミュージアム」でBCS賞、2001年に「せんだいメディアテーク」で日本建築学会賞(作品)、13年にプリツカー賞などを受賞した。金多氏は30年8月生まれ。53年京大卒業後、59年米国スタンフォード大学大学院修了。69年国宝東福寺山門、73年国宝東大寺金堂(大仏殿)などの修理に携わり、81年にBCS賞、95年には歴史的建造物保存修復の業績により日本建築学会賞(業績)を受賞した。中原氏は33年3月生まれ。57年東大工学部卒業後大林組に入社し、78年名古屋大教授、04年建築設備コミッショニング協会理事長などを歴任した。76年日本建築学会賞(業績)、94年同(論文)などを受賞している。
 作品賞の「流山市おおたかの森小・中学校、おおたかの森センター、こども図書館」「武蔵野プレイス」「竹林寺納骨堂」を選考した松隈洋作品部会長は、「新国立競技場や杭問題などで建築界への信頼が揺れる時期に作品賞を審査したため、その建築社会に信頼を持って受け入れられているのかについて議論を尽くした。10年後、審査員が胸を張ってその作品を選んだといえる受賞作品だ」と選考過程を振り返った。

 学会大賞と学会賞の表彰業績と受賞者、作品選奨は以下のとおり(敬称略)。
【大賞】
 =学会大賞=
 ▽新しい設計言語を通して、社会に開かれた建築を生み出した功績=伊東豊雄(伊東豊雄建築設計事務所)▽耐震工学と鉄骨構造学の学術的発展ならびに文化財建造物の保存修復・復元技術の高度化による建築界への貢献=金多潔(京大名誉教授)▽空気調和設備の最適設計・制御と性能検証の発展と実践に関する一連の功績=中原信生(名古屋大名誉教授)

【学会賞・論文】
 ▽温暖化ダウンスケーリング技術の建築・都市環境問題への活用に関する研究=飯塚悟(名古屋大学准教授)▽振動計測に基づく建築構造物の動特性評価とその応用に関する研究=池田芳樹(鹿島建設技術研究所上席研究員)▽室内空気質の知覚に基づく温熱・空気環境評価に関する一連の研究=岩下剛(東京都市大学教授)▽京都と近代-せめぎ合う都市空間の歴史=中川理(京都工芸繊維大学教授)▽持ち家社会における若者、女性、高齢者および被災者の住宅事情に関する研究=平山洋介(神戸大学教授)▽CO2排出量の削減を目指した鋼構造のリユースに関する研究=藤田正則(山口大学教授)▽建築環境における微生物汚染機構の解明とその対策に関する一連の研究=柳宇(工学院大学教授)▽鋼部材の終局挙動解明と鋼構造剛接骨組の終局耐震性能評価=山田哲(東京工業大学教授)▽フレッシュコンクリートのレオロジー的性質の解明に関する一連の理論的研究=李柱国(山口大学准教授)

【学会賞・作品】
 ▽流山市立おおたかの森小・中学校、おおたかの森センター、こども図書館=赤松佳珠子氏(法政大学教授、CAt/シーラカンスアンドアソシエイツ)、小嶋一浩(横浜国立大学大学院Y-GSA教授、同)▽武蔵野プレイス=比嘉武彦氏(kwhgアーキテクツ)、川原田康子氏(同)▽竹林寺納骨堂=堀部安嗣氏(堀部安嗣建築設計事務所)

【学会賞・業績】
 ▽耐震改修における構造デザインの実践と啓発活動=金箱温春(金箱構造設計事務所、工学院大学特別専任教授)▽大学とまちとの協働によるまちづくり-東京理科大学・小布施町まちづくり研究所の10年間の活動=川向正人(東京理科大学嘱託教授)、市村良三(小布施町町長)▽大規模な段丘状屋上庭園を持つ商業施設における環境共生の実現および賑わいを創出する都市空間の構築とその持続的運用=南海電気鉄道、高島屋、大林組▽明治の鉄道遺構としての万世橋高架橋の再生保存と地域活動=東日本旅客鉄道、冨加見正二郎(ジェイアール東日本建築設計事務所建築設計本部)、三井剛(JR東日本ステーションリテイリング代表取締役社長)、加茂紀和子(みかんぐみ共同主宰、名古屋工業大学教授)、曽我部昌史(同、神奈川大学教授)、竹内昌義(同、東北芸術工科大学教授)マニュエル・タルディッツ(同、明治大学特任教授、ICSカレッジオブアーツ教授)

【学会賞・技術】 
▽疲労耐久性に優れた新合金鋼制振ダンパーの開発=櫛部淳道(竹中工務店技術研究所建設材料部・先端材料グループ長)、澤口孝宏(物質・材料研究機構グループリーダー)、丸山忠克(淡路マテリア顧問)、津崎兼彰(九州大学大学院工学研究院機械工学部門教授)▽鉄筋コンクリート部材の微小発破解体工法の開発=柳田克巳(鹿島建設建築管理本部建築技術部グループ長)、中村隆寛(鹿島建設技術研究所研究員)、緒方雄二(産業技術総合研究所安全科学研究部門副研究部門長)、中村聡磯(カヤク・ジャパン研究本部技術部長)

【作品選奨】
 ▽新潟市秋葉区文化会館=新居千秋(新居千秋都市建築設計)▽東京都庭園美術館=安東直(久米設計常務執行役員設計本部副本部長兼設計長)、前田芳伸(同札幌支社主管)、川東智暢(同建築設計部上席主査)、大石昌(同環境技術本部第1構造設計部主管)▽ザ・リッツ・カールトン京都=大谷弘明(日建設計執行役員設計部門副統括兼代表)▽はあと保育園=大野秀敏(アプルデザインワークショップ)、江口英樹(同)、山本真也(山本真也建築設計事務所代表)▽竹中大工道具館新館=小幡剛也(竹中工務店大阪本店設計第3部長)、須賀定邦(同第3部門設計グループ長)、中西正佳(中西正佳建築設計事務所、元竹中工務店設計部所属)▽地域性のなかの住宅=北山恒(architecture WORKSHOP主宰、法政大学教授)▽BWTあすとぴあ工場=小嶋一浩(横浜国立大学大学院Y-GSA教授、 CAt/(株)シーラカンスアンドアソシエイツ)、赤松佳珠子(法政大学教授、CAt/シーラカンスアンドアソシエイツ)▽大多喜町役場=千葉学(東京大学大学院教授、千葉学建築計画事務所)▽チャイルド・ケモ・ハウス=手塚貴晴(手塚建築研究所代表、東京都市大学教授)、手塚由比(手塚建築研究所代表)、大野博史(オーノJAPAN)▽江の島 湘南港ヨットハウス(湘南港港湾管理事務所)=西田勝彦(オンデザインパートナーズ取締役会長)▽上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館(サントミューゼ)=柳澤孝彦(柳澤孝彦+TAK建築研究所代表取締役)、永池雅人(梓設計常務執行役員)、篠田隆(同部長)、鈴木教久(梓設計設計室主幹)▽桐朋学園大学音楽学部調布キャンパス1号館=山梨知彦(日建設計執行役員設計部門副統括兼代表)、羽鳥達也(設計部門設計部長)、笹山恭代(同設計部門設計担当)、石原嘉人(同設計部門設計担当)

建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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