2015/01/05

【潜入ルポ】日本ダムアワード2014が決定 ダムマニアが選ぶダムとは!?


「日本ダムアワード」とは、ダムライターの萩原雅紀さんが2012年に全国のダムを対象として「この1年で活躍したダム」を讃えるという企画。2013年からイベントとして開催され、多くの愛好家が集ってさまざまな角度からダムを讃えるのです。電子メディア局では、昨年7月の「ダムナイト」に続き、この世紀のイベントに潜入してきました!

アワードが開催されるのは、東京・お台場のネットとリアルをつなぐ飲食店TOKYO CULTURE CULTURE(通称カルカル)。開場すぐに入店すると、おいしそうなカレーの匂いが…そう、「ダムカレー」が提供されているのです!ダムの美しいフォルムが再現されたカレーは、アーチ式、重力式、ライスフィルの3種類がラインナップ。また、この日だけのスペシャルドリンク「ダムサワー」も。ダムのコンクリート色をリアルに再現された飲み物とのことでしたが、数量限定だったためか実物は見られませんでした。
建設通信新聞でも紹介した書籍が販売されています
マンガも!
ダムを愛する人をさらに愛する皆さん
会場ではダムに関連する書籍やグッズが販売され、大いににぎわっています。賞のプレゼンターさんのファンの方々もおられます。

今年のプレゼンターは、萩原雅紀さん(ダムライター、デイリーポータルZ・HP「ダムサイト」管理人)、琉さん(ダム王子・HP「DamJapan」管理人)、星野夕陽さん(HP「ちょいとダムに行ってくる」管理人)、夜雀さん(HP「雀の社会科見学帖」管理人)、宮島咲さん(HP「ダムマニア」管理人)、Nao Machida (NOW2000)さん。アワードは放流賞、イベント賞、プロジェクト賞、洪水調節賞、4部門。それぞれのノミネートされたダムをプレゼンターが紹介し、各部門の1位と、すべてのノミネートから大賞が出席者の投票によって決められます。

■放流賞
まずはもっともダムファンの心に残った放流を決める「放流賞」から。

ノミネート1:湯田ダムの試験放流。竣功以来初の放流ということで、マニアのみならず関係者も多数見学に来ていたそうです。ちなみに、マニアの皆さんはダムの関係者(管理者や建設関係者)を「中の人」と呼んでおられますね。
ノミネート2:浦山ダムの夜間放流。放流時に霧がかかって非常に幻想的な光景だったそうです。ライトアップイベントでの放流だったそうですが、なんと7年ぶりとのこと。
ノミネート3:小河内ダム。東京都のダムということでマニアの皆さんにはおなじみのダム。ダム湖に魚がいるのですが、放流すると一緒に流れて行ってしまうんだそうです。
ノミネート4:矢木沢ダム。非常用洪水吐ゲート点検のための放流で、イベントではなかったとのこと。1、000人を超えるダムファンが集っていたそうですが、約3分の1は会場にいた模様。なお、群馬県のマスコット「ぐんまちゃん」も駆けつけていたとか。
ノミネート5:奈良俣ダム。毎年、雪解けの時期に放流しているとのこと。ここにもぐんまちゃんは駆けつけていた。
ノミネート6:滝沢ダム。点検のための放流だが、まだ2回目の実施なのでファンが500人ほど集まっていたそう。
ノミネート7:薗原ダム。職員(いわゆる中の人)に話を聞きながら、放流を見たとのことで、会場も熱心にプレゼンに聞き入ります。
ノミネート8:久瀬ダム。中部電力の発電専用ダムで、この時は発電所工事のための代替放流だったそう。スケジュールが公開されないので、なかなか見られないとのこと。
 
ノミネート9:刀利ダム。農水省のダムで、設備点検用に水を抜いていた。ダム下部のハウエルバンガーバルブから、迫力のある放流が見られるのですが、写真はそのハウエルバンガーバルブ。
ノミネート10:夕張シューパロダム。まだ建設中のダムでの試験放流。3日間行われていたそうですが、会場では「おおー!」「行きたかった!」の声が上がりました。それでも、見に行ってましたという人が数人、おられましたね。

■イベント賞
ダムファンが歓喜したイベントを開催したダムを讃える「イベント賞」。この賞の冒頭では国土交通省と林野庁が取り組む「森と湖に親しむ旬間」(通称もりみず)の紹介もされ、なぜダムがイベントを行うのかが説明されました。この「もりみず」の時期にマニア達は各ダムへと繰り出すのです…。

ノミネート1:豊平峡ダム。見学の際、キャットウォークで放流バルブのすぐ隣まで、ほんとうに真横まで行けたことが高く評価されました。その写真に会場からはどよめきが。
ノミネート2:鬼怒川4ダム(湯西川ダム、川俣ダム、川治ダム、五十里ダム)。4つのダムを1日で見学できたことが高評価。ダムカードホルダーのパンフが配られたり、高所作業車の体験乗車、60メートルの高さにあるキャットウォークを歩くなどさまざまな工夫が凝らされています。また、4つを1日で巡るアドバイスも披露されました。
ノミネート3:浦山ダム。多くの画期的なイベントを生み出したのが、このダム。名物「浦山ダムカレー」を始め、コスプレ・痛車イベントの開催など突き抜けたイベントが評価されました。
ノミネート4:横山ダム。竣功50周年を迎えてのイベントが評価されました。記念式典だけでなく、13市町村をまたいだスタンプラリーや、揖斐川流域の特産物が必ず入った「よことくダムカレー」など、地域密着のイベントが特徴的だそうです。横山ダムだけでなく、ここ数年は竣功50周年を迎えるダムが多いのだそうです。
ノミネート5:矢作ダム。放流の見学会なのですが、見学者がバルブの隣に到着したのを職員さんが確認し、操作室に連絡して放流してくれたというマニアにはたまらない心遣いがあったのだそう。
ノミネート6:中部5ダム(小里川ダム、矢作ダム、丸山ダム、阿木川ダム、大井ダム)。事業所の違うダムが連携して開催されたバスツアー。これはなかなか稀なことだそうです。ダム愛好者の間では中部地方が今、熱いとのことで、中部地方整備局がとても力を入れておられるんですね、とのことでした。

ノミネートされたダムは首都圏近郊のものばかりではないのですが、受賞者にはプレゼンターが責任を持ってトロフィーを届けに行くとのことです。休憩時間に公開されたトロフィーと盾。その黄金の輝きに撮影する人が多数!

■プロジェクト賞
昨年は「低水管理賞」があったのですが、2014年は気候に恵まれたためか水不足がなかったため、開設されませんでした。その代わりにすばらしい取り組みをしているダムを讃える「プロジェクト賞」が開設されました。
 
ノミネート1:鶴田ダムの再開発事業。「九州の防人」とも言えるこのダムは、台風の度に洪水調節を行うことで有名。2006年7月の集中豪雨で被害を出してしまい、ダムサイトも破壊されました。そのための改良工事で、浮体式の新工法が取り入れられ(特許出願中とのこと)、また観光PRにも力を入れているとのこと。これまでダムを観光資源に使う場合は旅行会社が事業者に申し入れる形式がほとんどでしたが、今回は国土交通省が旅行会社を入札し、地元旅館とも提携して観光ツアーを開催するのだそう。
ノミネート2:藤沼ダムの東日本大震災に伴う決壊後の復旧工事。ほとんど報道されなかったが、1949年完成のダムで、これまで何度か改修工事が行われていたが、震災により決壊し、下流で8名の死者行方不明者が出た。農業用水を供給するダムで、地元農家から一日も早い復旧が望まれると同時に、被災者への配慮が求められている。
ノミネート3:権現第一ダムの太陽光発電所設置工事。兵庫県企業庁の管理するダムで、美しい「白い」ダム。画期的なのは、その美しいリップラップに太陽光パネルを設置して、発電・売電しちゃおうというもの。プレゼンターはその工事の様子も写真に収めており、太陽光パネルに埋められたリップラップの写真に会場からは「あああー!」という悲鳴が…。また、もしこのダムで水力発電をしたらという試算を行い、太陽光発電とどのような差が出るかという計算も興味深いものでした。
 
熱心に聞き入る参加者たち
ノミネート4:笠堀ダムの洪水調節能力強化のかさ上げ工事。平成16年の洪水被害のための復旧工事直後の23年にも集中豪雨に襲われ、2度目の大改修工事が行われている。自然災害はいつ起こるかわからないため、基礎工事は冬季も進められている。雪の積もった工事中の写真には、鬼気迫るものがありました。
ノミネート5:中国地方整備局河川部による中国地方ダムマニア認定書。インフラツーリズムの一貫として、56基のダムを巡ってダムカードを集めるイベントを開催。通常、ダムマニアは「名乗るもの」であったのが、なんと公に認定されるという画期的なイベント。事業者の違う各ダムが連携し、3万平方キロメートルに渡る広範囲のダムを巡るという壮大なイベントとなり、参加人数も1200名以上に。最上級である「レインボー(超級)コース」は、50種類以上のダムカードを集めなければならないのですが、すでに237枚が発行されているのだそう。そして、その「レインボー」所有者は会場にも3名おられました…さすが。なお、参加者の7割は中国地方在住者ですが、この広範囲を移動するための交通・宿泊費などを考えれば、絶大な経済効果を発揮したと思われます。

■洪水調節賞
大雨と壮絶な戦いをしたダムを讃える「洪水調節賞」。このアワードの目玉となる賞です。ハイドログラフや各気象情報、周辺地域の状況データを合わせ、数字と時間軸で緊迫した状況がプレゼンされました。聞いているだけでも手に汗を握る臨場感にあふれるプレゼンでした。また、2014年は台風11月、12号と立て続けに上陸したため、各ダムの活躍もそこに集中しています。
 
ノミネート1:徳山ダム。台風11号の際、全量カット方式ですべての雨水を貯めることにし、その後放流する作戦。結果としてノーヒットノーランとも言うべき完全勝利を収めたのでした。
ノミネート2:鏡ダム。台風12号襲来時の「但し書き操作」。初めて「但し書き操作」に挑んだ緊迫の状況が伝えられました。5~10分間隔でゲートを手動で開閉し、無事に乗り切った技術が評価されました。
ノミネート3:早明浦ダム。「101回目の洪水調節」と題されたプレゼンでしたが、とにかく戦いの絶えない早明浦ダム、8月2日にちょうど101回目の洪水調節を行ったのでした。
 
ノミネート4:正木ダム。台風11号での「但し書き操作」。誰も操作したことのない「但し書き操作」に至るまでの経緯がプレゼンされ、初めてクレストゲートを開ける下りでは会場も固唾を呑んで聞き入っていました。結果的に床上浸水はなく、防災インフラとしてのダムの重要性が示されたのでした。
ノミネート5:漁川ダム「未明の特別警報」。北海道のダムとしては珍しく洪水調節の多いダム。比較的小さな地域ではあるものの低い土地に囲まれていることから、洪水調節の経験は豊富。しかし、特別警報が発令されたものの、本則操作で無事に乗り切ったのでした。

■結果発表
放流賞:夕張シューパロダム
イベント賞:豊平峡ダム
プロジェクト賞:中国地方整備局によるダムマニア認定
洪水調節賞:早明浦ダム
大賞:早明浦ダム


栄光の「金のクレストゲート像」は、早明浦ダムが勝ち取りました。後日、それぞれのダムのプレゼンター達が、トロフィーを届けるそうです。
最後に萩原さんの「ダムは防災のためにも活躍する。本当は活躍しない方がいいのだけれど、やはり必要なものであり、私たちは助けられている」というコメントが印象的でした。

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