2015/01/25

【復興現場最前線】5月竣工へラストスパート 「仙台うみの杜水族館」

太平洋を間近に望む仙台港背後地。震災時に津波が直撃し、壊滅的な被害を受けたこの地で、震災復興のシンボル施設となる『仙台うみの杜水族館』の建設工事が、5月の竣工に向けてラストスパートに入っている。施工は、国内にある水族館の約3分の1に及ぶ施工実績を誇る大成建設と、宮城県を拠点として震災復旧・復興に大きな貢献をしている橋本店の共同企業体。設計・監理も水族館の実績が豊富な大建設計が担当。新たな観光拠点の具現化に心血を注いでいる。

 事業主体は、三井物産とカメイ、横浜八景島、ユアテック、河北新報社、仙台三越および民間都市開発推進機構が共同出資するSPC(特別目的会社)の仙台水族館開発。来春に閉館する松島観光の主要施設『マリンピア松島水族館』から展示生物、スタッフを受け入れることも決まり、宮城県内随一の海洋観光施設として市民の関心は高い。
 施設は、仙台市が震災後に初めて新規に整備する大規模公園・高砂中央公園内に建設される。規模はS一部RC造2階建て延べ約9900㎡。通常の建築工事に加え、水族館工事最大の特徴が水槽の設置だ。豊かな東北の海を体感できる大型水槽を始めとするコンクリートでつくり上げる躯体水槽と、アクリル板で作り上げるユニット水槽の合計約100基、総水量約3000tの水槽を設ける。
 躯体水槽は、アクリル板を何重にも重ね、厚みを持たせたものをコンクリートに据え付ける。特にメーンの大型水槽は厚さが49cmにも達するという。また、通常の設備工事のほかに、水処理部分などの飼育設備工事が付加されることも大きな特徴の一つだ。
 さらに、水族館の展示に欠かせない擬岩の製作と設置もある。本物の岩では建物の荷重が持たないため、モルタルやFRPを岩に似せて製作する。専用のヤードを設け、ある程度のユニットを製作し、水槽内にはめ込む作業を行っている。
 ほかにも、イルカなど海の動物による東北最大級のショーを行う観客席約1000席のショープールの特殊防水工事、魚の見栄えを良くする水槽内の照明工事、飼育水槽の温度調整用の熱源工事など、水族館特有の工事が多岐にわたって行われている。

■特殊工事に生きる実績とノウハウ 技術力・組織力を最大限駆使
 さまざまな工事の工程が複雑に絡み合う中、大成建設・橋本店JVの木皿剛所長を中心とする施工陣が、豊富な実績とノウハウに基づく管理能力を遺憾なく発揮し、2013年12月に着工した工事も順調に推移。14年10月までに躯体工事がほぼ完了し、現在は仕上げ工事が急ピッチで進む。
 7月には、多様なスキルを持つ事業者で構成するSPCと、設計・施工者がその粋を結集した水族館がオープンし、観光振興による被災地の活性化とともに、環境再生・保全とその啓発活動などにも大きな役割を担う予定だ。
 木皿所長のコメント 「当工事は東北最大級の海洋観光施設の新築工事であり、『復興のシンボル』として仙台市民、宮城県民の皆さまの期待が日増しに高まっていくのを肌で感じている。短工期での完成・開業が求められる民間工事であり、厳しい労務事情のもと、当企業体が持つ技術力、組織力を最大限に駆使してここまでやってきた。工期も残すところ5カ月を切り、依然として厳しい状況は続くが、今後、一層安全管理、品質管理および工程管理を徹底し、工事完成に向けて努力していきたい」
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