2015/12/20

【本】「人、働き方、空間」の多様性を認め寄り添う提案 岡村製作所のオフィス研『オフィスはもっと楽しくなる』


 岡村製作所のオフィス研究所が、研究員である花田愛さんと森田舞さんの共著『オフィスはもっと楽しくなる』(プレジデント社)を出版した。変化するオフィス空間の中で働き方の多様性(ダイバーシティ)と、いかに向き合うか。2人の著者がたどり着いた働き方の意識について聞いた。
 時代の変化とともに働き手の多様性は広がり、オフィス空間そのものも変化を余儀なくされている。「この本を通して、働くという意味合いそのものも届けたいと思った」と、花田さんは語り始める。多様な働き方が存在するように、空間も多様なカタチに変化していく。「立場や環境の異なる人たちがともに働く際にはそれぞれを互いに認め合うことが必要になってくる。そこには気づきがあり、それを包み込むように空間のあり方も必然的に移り変わる」

森田 舞さん

 共著というスタイルで執筆を進めながら、それぞれの考えをすり合わせてきた2人。森田さんは「立場や環境の違いによって、それぞれの受け止め方も異なる。相手への気づきというのは相手に寄り添うことでもある。働く場を通し、お互いに向き合う関係性をひも解いてきた」と続ける。
 空間の多様性を考える場合、人と人の関係性が重要になり、そこにはコミュニケーションが発生する。コミュニケーションとは「単に交流するという意味合いだけでなく、相手との距離感が大切になってくる」と花田さん。その距離感は空間と密接に関連し、「パーティション1枚を置いただけで、環境は大きく変わり、これまでと違うコミュニケーションが生まれる」と森田さんはつけ加える。

花田 愛さん

 人、働き方、空間の3つは常に切り離せない。「固定観念だけで働く空間のあり方を決めてはいけない」と、2人がうなずきながら説明するように、働く場は多様性に満ちている。オフィス然とした机の並ぶ空間で働いた方が集中して仕事をこなせる職場もあれば、部署に関係なく同じ空間が提供されたことで働き方とのミスマッチが生まれるケースもある。
 フリーアドレスやテレワーク(在宅勤務)の働き方が広がる中で、日々の連絡はデジタルツールでやり取りができる。センターオフィスに集い、顔をつきあわせて意見を交わすのは週1回という職場も少なくない。「場所の流動性が高まれば普段、顔を合わせない者同士が集まった時にこそ、コミュニケーションの重要度は高まる。目的意識を持って働く時代になっている」と花田さんは考えている。

岡村製作所が実践する次世代の働き方

 本では、自立して働くことの重要性も説く。森田さんは「自分でやり抜くという前向きな意識は持つべきだが、1人で仕事を進めるには限界がある。仕事をシェアする協業のあり方が重要になり、その点でもお互いを認め合う距離感や、相手を思いやる気づきが強く求められる 」と実感している。
 実は、この本は2人のペアワークで完成させた。社内でプロジェクトがスタートしたのは2014年6月。「子育てしながらで、仕事の時間に制約がある中での本づくりだった」とは花田さん。「お互いのペースを理解しながら、うまい時間の使い方ができた」と森田さんは振り返る。お互いに書いた原稿に赤ペンと青ペンで手を入れ、考え方を共有してきた。
 題名に込めた「楽しく」は、一生懸命働くことであり、互いに力を合わせて成し遂げることで得られる達成感でもある。「心が健やかになることで味わえる感覚をいかに共有できるか」という2人。働く場を通して味わう意識の変化に着目している。「本づくりはハードだったけれど、すごく楽しかった」。それは2人が実感したキーワードでもあった。
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