2015/12/28

【潜入ルポ】日本ダムアワード2015 ダムマニアの選ぶ“今年、活躍したダム”は!?


 今年も潜入しました「日本ダムアワード2015」! ダムカレーに食欲を刺激されずに取材に集中できるよう、お昼ご飯をカレーにして臨みました。
 すでに迷わずたどり着けるようになった会場、東京カルチャーカルチャー。グッズコーナーをチェックししつつ、会場にはいると既に満席で熱気にあふれています。昨年は実物を見ることができなかった「ダムカレー」と「ダムサワー」を発見! コンクリートの色を忠実に再現したサワー、さすがですね。メニューはこの通り。矢木沢ダムに誤字が…。
ダムカレーとダムサワー
今年はびるるん以外にも取材が入っています!なんと日テレの「スッキリ!」さん。ダムファンとして有名な気象予報士の藤富 郷さんが来ておられました。オンエアは1月7日だそうです。
さて、日本ダムアワードとは…

藤富 郷さん
「一年間のダムの活躍を振り返り、ダムファン有志による選考委員が様々な角度から活躍したダムをノミネート。 選考委員と観客の皆さんによる投票で、各部門で今年もっとも印象に残る働きをしたダムを選出し、その功績を讃えよう、というイベント」です。(日本ダムアワード公式ホームページより)

 今年で3回目を迎える大イベントなのです。全国からダム愛好家が集まり、Ustreamでも中継されているのです。放流賞 、イベント賞 、低水管理賞、洪水調節賞の4部門でダムの活躍を讃えます。今年は22ダムがノミネートされました。金のクレストゲート像は誰の手に!?

ダムアワード選考委員であり、本日のプレゼンを行うのは萩原雅紀氏、琉氏、夜雀氏、星野夕陽氏、夕顔氏、NOW2000氏。萩原氏から挨拶があった後、全員で乾杯!

【放流賞】もっともダムファンの印象に残った放流は? メインプレゼンター:琉氏

ダム王子こと琉氏
ノミネート1は下久保ダム(群馬・埼玉県 利根川水系神流川、水資源機構)の点検放流。当日は天気が良い休日とあってたくさんの人出があり、駐車場も国道も大混雑。地元がコラボしてイベントを開催し、屋台やダムカレー、ダムかき氷、テレビ取材も入ってかなり盛り上がり、1500人以上の来場者があったとか。点検放流なのでイベントに合わせたわけではないのだが、逆に放流にイベントが合わせてくるタイプ。動画が放映されます。
 ノミネート2は川治ダム(栃木県 利根川水系鬼怒川、国土交通省)の点検放流。関東一の高さを誇る巨大ダムで、一番上からの放流は滅多にないとのこと。通常は災害時の大変な時に放流されるゲートなので、のんびりした時に見られるなんて貴重です!と琉氏。しかも見学会が同時開催され、キャットウオークから放流が見られたのだとか。見学会の企画が持ち上がった時には水の裏側まで見せましょう、という話も出たらしいのですが、さすがに危険ではとなり、そこまでは行けず。しかし、ダムファンたちは、次回はぜひ! と力強くメッセージを送ります。
 ノミネート3は川俣ダム(栃木県 利根川水系鬼怒川、国土交通省)の点検放流。下部のバルブが止まって上のゲートが少しずつ開けて放流。下の方では工事があるため、ゲートは全部開かなかったとのこと。工事は10年ほどかかる見込みのため、会場からはため息が。
ノミネート4は湯田ダム(岩手県 北上川水系和賀川、国土交通省)の点検放流。昨年は放流の3日前のプレスリリースで発表され、しかも平日だったので行きにくかったそうなのですが、今年はリリースも2週間に出されてゴールデンウィーク真っ最中の放流!ダムファンをがっちり掴みにかかっていることがわかります。ジャンプ台が魅力のダムです。

ノミネート5は真名川ダム(福井県 九頭竜水系真名川、国土交通省)の“偶然のはからい”放流。モリミズ(森と湖に親しむ旬間)イベント中の放流だったのですが、イベント用ではなく、れっきとした降水による管理のための放流だったとのこと。写真を見ると3本の水流のように見えますが、左は噴水。バルブから、ゲートからと噴水を合わせてトリプル放流です。クレストゲートが全開になるのはイベントに合わせてもので、ゲートが開いたり閉まったりする「動くダム」が見られる瞬間はめったにないとのこと。
 ノミネート6は内海ダム(香川県 当川水系別当川、香川県)の試験湛水中の試験放流。早明浦ダムよりも長い、四国一の長さを誇るダム。最高推移に達するのに2年かかり、そこからの試験放流なので、ダムにとっては成人式か元服のようなものと萩原氏。節目の放流なのです。サラサラと流れる水流が美しい。

ノミネート7は切目川ダム(和歌山県 切目川水系切目川、和歌山県)の試験湛水中の試験放流。美しくうろこ状に水が流れています。運用が始まると穴から水を流すため、上から水が流れる様子は通常では見られないし、そうなると大変な災害下での状況ということに。
ノミネート8は黒又ダム(新潟県 信濃川水系黒又川、東北電力)のダムツアー開催に伴う放流。ツアーの主催者が東北電力に提案して実現した放流。電気にならない、つまりお金にならないのに放流するという大変な決断があったはず。それをファンのために開催するというのは、まさに前代未聞。

【低水管理賞】もっとも渇水に耐えた印象が強いダムは?メインプレゼンター:夕顔氏

わかりやすい…
わかりやすい!
低水管理の知識がなくてもわかりやすいよう、とても考えられたプレゼンでした。なめらかで思いの込められたプレゼンでしたね。専門用語が飛び交い、わからないけれどわかるような気になってきます。2015年は東北地方が少雨で、各地で低水管理の戦いが繰り広げられました。米どころである地方なので、なおさらです。
ノミネート1は目屋ダムのラストバトル。灌漑用のダムですが、9月には運用を停止するダムなのです。8月に利水補給のために戦った後、津軽白神湖に沈んでしまうのですが、岩木川を見守り続けるであろうその姿はまさにターミネーター2のラストのようで…。
ノミネート2は釜房ダム。ダムを中心に周辺環境整備がされ、公園が魅力的なダムだそうです。仙台平野の水田に灌漑用水を補給し、上水道用水も供給するまさに水瓶。過去10年平均の37%しか降雨量がなく、利水者間でも節水努力が続けられました。東日本大震災のときに首都圏で行われた計画停電のように、計画的に取水制限を行ったそうです。
ノミネート3は鳴子ダム。「ひとめぼれ」の故郷がある大崎平野の米を守り、さらに鳴子発電所の発電用水も確保する働きを見せました。渇水傾向の判断で5月に利水調整会議が開催され、農政局の岩堂沢ダムと連携して節水対策を実施、初動の速さが奏功しました。
ノミネート4は白川ダム。ダム完成以来の渇水危機で、8/19からは発電を停止する事態に。しかし、水稲灌漑用水は死守し、上水道用水も確保しました。
取水制限は8月31日解かれることが多く、小さなお子さんがおられる職員の方などは夏休み中にたいへんな状況でおしごとをされ、お子さんをどこにも連れて行けずに夏休みが終わるのでは…と想像するだけで泣ける、と萩原氏。
ノミネート5は胆沢ダム。平成6年に「平成米騒動」が起こるほどに渇水したことを覚えているでしょうか?その時、取水不能に陥ったのが今は奥州湖に眠る石淵ダム。その13倍もの利水容量を誇る胆沢ダムですが、稲の成長で一番大切な穂ばらみ期の渇水状態を胆沢ダムからの補給で乗り切りました。「岩手県産ひとめぼれ」を見たらチェックすべき「県南産」「JA岩手ふるさと」の項目。それは、胆沢ダムの水が育てた米かもしれません。ダムマニアとしては、米の産地はチェックせずにおれないそうです!
ノミネート6は草木ダム。5月の少雨で利根川上流ダム群は利水補給を行いましたが、最も貯水量が減少したのが草木ダム。関東のダムなのでご存じの方がプレゼンターにも会場にも多く、だんだんダムをヒトのように語り始めてしまうのです…藤原様とか。それが、全員に通じているところがさすがというか、楽しそう…。

ここで前半の投票が行われます。

【イベント賞】ダムファンが換気したイベントを開催したダムは?メインプレゼンター:NOW2000氏
このところインフラツーリズムとしてのダムツアーや、各管理者のSNS発信で盛り上がるイベント。その最高峰は!?
ノミネート1は矢木沢ダム&奈良俣ダム。会場に「行った人は?」と問いかけるとほぼ全員が挙手!そんなメジャーなダムも冬は豪雪により立入禁止。2メートルを超えることもざらにあるそうです。でも、それはそれでレアだよね、と2013、14年に報道に公開を実施したところ、あまり取り上げてもらえなかったとのこと。ここで、建設通信新聞は夜雀氏から指差し付きで怒られました…すみません!(´;ω;`)ブワッ

今年も豪雪の中、黒部の雪壁なみの道路が除雪作業で作られ、安全を確保された状態での真っ白な矢木沢ダム。「か、かっこいい…」と琉氏。SNSで見学会の様子を発信しているファンの多さを認識しているとのことで、また開催を検討しているとのこと。すぐに「いいね!」しましょう、と萩原氏。
エントリー2は三浦ダム&王滝川ダムの王滝ダムツアー。御嶽山のふもとの自治体やNPOが災害で遠のいた人出を取り戻そうとがんばっています。その中で観光資源にダムを!となり、三浦ダムの見学会が開催。国有林内の片道8キロ歩かなければならない“秘境ダム”にキャンセル待ちが出るほどの人気!集まったのはほぼ、ダムマニアだったそうで。しかも、ダム内はエレベーターを降りたとたんに「ご自由にどうぞー」という、野放し状態。さらには地元の人も知らなかった王滝川ダム、ファンが訪ねてみるとこちらも「ご自由にどうぞー」だそうで。ダム直下の発電施設もご自由にどうぞー」。会場からは羨望のまなざしが痛いほど飛びます。まさしく「フリーダム」なイベントだったそうです。今後、春秋2回の開催が予定されています。

会場からは悲鳴!
ノミネート3は七ヶ宿ダム。イベントを積極的に行うダムですが、特別見学会の開催にあたってファンの要望が集められました。「操作室に入りたい」「オリフィスゲートを動かしているところを見たい」…『ぜ~んぶやってみよう!』(原文ママ)となりました。さらに要望はヒートアップし、手動での開閉体験、職員の一日体験、ライトアップ、クレストゲートを開けてほしいなどがアンケートで寄せられて第2回特別見学会が実施されました。そう、すべての要望を『ぜ~んぶやってみよう!』となり、会場からは嫉妬の悲鳴が!もはや大人のキッザニアですね、と萩原氏。
ノミネート4は十勝ダムの30周年記念。記念講演やクレストゲートで安全帯付きで撮影した記念写真をダムカード風にしての配布、クオリティの高いパネルが制作され、とても力の入ったイベントだったそうです。

【洪水調節賞】大雨ともっとも印象的な戦いをしたダムは?メインプレゼンター:夜雀氏、星野夕陽氏
 ノミネート1は本則操作改訂で出水に挑んだ七川ダム。これまで241回の洪水調節を行ってきた七川ダム、但し書き操作は6回に及びます。その中で何度も貯水池運用追加変更を行いましたが、今年の台風11号でまた管理所の窓からダム湖水面が見えるほどの事態にも但し書き操作を実施。結果、浸水被害もなく勝利といえるでしょう。夜雀さんのプレゼンは、まるで弁士による活劇を見るようで迫力があります。まるで山本昌が完封したような感じですね、と萩原氏。
 ノミネート2は星野夕陽氏プレゼンによる鬼怒川上流4ダム。関東・東北豪雨災害の被災者へのお見舞いの言葉から始まったプレゼン、未曾有の災害へのダムの戦いであることから、会場も固唾を呑んで聞き入ります。五十里、湯西川、川治、川俣の4ダムの連携により、約億立方メートルの洪水を貯留したわけですが、災害は起きてしまいました。しかし、この4ダムの活躍がなければ常総市域に溢れた水量は2倍、浸水面積は1.3倍の50平方キロメートルになっていたのです。ダムは、完全に洪水を防ぐことはできなくても軽減させることがベターであり、鬼怒川上流4ダムは適切に戦ったのだ、と星野氏は結びました。
 ノミネート3は新宮川水域のダム。新宮川水域では全てが利水ダムであり、洪水調節は行えません。そのため、その存在が知られることはあまりなく、夜雀氏は「あなたの話をしてくれませんか?」と、その存在を紹介します。電源開発の池原ダム(第I類ダム)を取り上げ、洪水調節ではなく治水協力として、地域を守る役割を紹介しました。このノミネートはまさにダムマニアならではと言えるでしょう。
 ノミネート4は釜房ダム。関東・東北豪雨での特別防災操作です。雨の降り方が通常と違うため、24時間3交代を前半の3日で行い難を切り抜けました。もともと渇水気味で余裕があったため、特別操作で切り抜けられたのです。星野氏をはじめ皆さんが強調するのは、とにかく但し書き操作など特別な操作をすることは、大きなリスクを抱えることである。それを避けるためにも中の人たちは戦うのであり、ベストな対応なのであるということです。

いよいよ集計です。結果を待つ間にアンケートで寄せられたプレゼンターへの質問項目が読み上げられ、各自回答。
・新春、第一基のダムは?→電源神社とか水神様があるダムとか、初日の出が見られるダムとか…
・車がなくても行きやすいダムは?→駅前ダムも意外にあります
・死ぬまでに一度、見ておくべきダムは?→各自、悩みながらひねり出すダムの数々…

そして!2015年度の日本ダムアワードは
<ダム大賞>
 鬼怒川上流4ダム
 <放流賞>
 湯田ダム
 <低水管理賞>
 目屋ダム
 <イベント賞>
 七ヶ宿ダム
 <洪水調節賞>
 七川ダム


となりました。おめでとうございます!
来年も気象(特に雨)の方にはお手柔らかに、との萩原氏のコメントで閉会しました。

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