2015/12/19

【現場の逸品】断熱材加工に工具を自社開発! 東邦レオの熱線式スチロールカッター『Espa』


 1㎡の材工価格で9800円を実現する東邦レオ(大阪市)の透湿型湿式外断熱システム「エコサーム」が着実に採用実績を伸ばしている。欧米並みの価格に近づけようと進めてきた生産合理化の自助努力が実を結んだ。「さらに施工コストを引き下げたい」と、外断熱事業部の和田清栄副事業部長は発泡スチロール加工用の電動工具を開発したことを明かす。省エネルギー新基準の適用により現場の断熱材加工が増加すると考え、工具の外販にも乗り出した。

 11月に販売した熱線式スチロールカッター『Espa(エスパ)』は絵画用三脚のイーゼルのように、ベース板の上に発泡スチロールを置き、ワイヤーの熱線でカットする。グリップ中央にあるスイッチを押して2、3秒後には電気によってワイヤーが熱くなり、力をかけなくても簡単に作業できる。ベース板の角度とカット幅の調整で長方形や台形、さらには斜め切りや段差を付けることも可能だ。

切り口がきれいで、切りくずも出ない

 外断熱は、壁に沿って断熱材を加工しなければいけない。これまでは現場でカッターナイフや丸鋸を使って切断していた。作業時に当て材を置く必要もあり、時間ロスも多く、断熱材の厚さが増すと、切断面の精度にムラが出やすかった。同事業部の高山尋未マーケティングマネージャーは「厚さ70mmの断熱材を加工した場合、従来より作業スピードが1.5倍になり、切りくずもなく、掃除の手間も省ける」と強調する。苦労していた目地加工はグリップを下、横、上の順に動かすだけ。キャスター付きで移動がしやすく、足場でも作業できる。国内電気用品安全法に適合し、PSEマークも取得した。
 累計100万㎡の外断熱実績を持つ同社はメーカーでありながら、責任施工を徹底し、材工一式の提供にこだわり続けている。安定した施工品質を確保するため、自主認定の施工技術者ネットワーク体制を構築し、現在は全国に300人もの資格者を抱える。既に資格者の所属する専門工事会社が先行して計30台を購入し、現場での導入が始まった。外断熱の工種は左官、大工、タイル工などが担い、中には切断作業に慣れない職人もいるだけに「評判も上々」(和田副事業部長)という。

外断熱「エコサーム」の構造

 外断熱の需要は拡大基調にある。学校施設の耐震改修工事が一段落し、長寿命化対策にステージを移す中、外壁改修工事に合わせて外断熱を採用するケースが急増中。エコサームの販売は2015年度に前年度比25%増の10万㎡を見込む。販売開始から累計で計35万㎡を記録する見通しだ。外断熱の設置費用は施工コストが半分を占める。工程のほとんどが手作業になるため、いかに施工手間をなくせるかが、コスト面とともに品質面でも大きなテーマだった。
 エスパの価格(税別)は15万円。17年度からは延べ2000㎡以上の非住宅建築物を新築する際、新省エネ基準の適用が義務化される。20年度までに段階適用され、最終的には戸建て住宅も対応が求められる。省エネ設計の拡大は断熱材需要を一気に押し上げる可能性を秘めている。基準を満たすため、断熱材の厚さは従来より厚くなり、カッターナイフを使った切断では対応しにくい。
 同社は、16年度に年間100台の販売を目指している。床、屋根、壁に使われる断熱材はビーズ法発泡ポリスチレン(EPS)や押出法発泡ポリスチレン(XPS)などがあり、自社の外断熱事業以外にもエスパの活躍の場は大いにある。発売に合わせて出展した見本市「ジャパンホーム&ビルディングショー」では、3日間で3台の契約が成立した。購入者は造形や模型の製作会社。和田副事業部長は「建設現場以外にもニーズはある」と手応えを感じている。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

0 コメント :

コメントを投稿