福井コンピュータの提供するアプリケーション『TREND Net 計算倶楽部』は、住宅設計向けの簡易なシミュレーションサービスだ。開発のきっかけは、同社の主力建築CAD「ARCHITREND(アーキトレンド)Z」のユーザーを対象としたセミナーだった。講師役の戸田知治氏(戸田設計代表)が自前の計算ツールを紹介した際に聴講者の反応を見て、建築事業推進室の塩尾知仁室長が「これは、ぜひ商品化したい」と思い立った。
戸田氏は施主の悩みにすぐ応えられるように、市販の表計算ソフトExcel(エクセル)などを使った独自のシミュレーションツールを愛用していた。吊り戸棚をつくりたいという要望には、依頼者の身長に合わせて最適の位置を決めるため、手や足の長さ、座高など体のあらゆる寸法が割り出せる計算ツールを開発。新たに窓をつけたいという声があれば、採光基準をクリアできるかが現場に居ながらにして判断できる法規ツールも用意した。
現場で施主から相談される要求は単純なことでも、その場で対応できない場合が多く、結局は会社に戻って調べる必要があり、報告は翌日になってしまうケースが多い。塩尾室長は「一つひとつで見れば、ものすごく単純な計算式で成り立っているが、かゆいところに手が届くツールばかりだった」と振り返る。2011年10月のサービス開始時点では、13種類のツールをラインアップとしてそろえた。
坪数や畳数から面積を出すような電卓入らずの計算ツールに加え、採光、排気、排煙などの納まりを判断する法規関連ツールも用意した。さらに太陽光発電の効果や省エネ性能などを把握するシミュレーション系もある。「あらゆる場面に対応できるように、今後も積極的に新たなツールのアイデアを出していく。集約することで、サービスの価値は増すはずだ」(塩尾室長)。
料金は月3000円。アーキトレンドユーザーには月1500円で提供している。施工者や設計者だけでなく、施主が使うことも想定している。1契約で10アカウントが発行されるため、工事期間中のサービスとして施主にもアカウントを渡す使い方もできる。現場目線のツールだけに実務者の反応は上々だ。
建築系ユーザーが約4万社に達する同社は、全国36カ所に営業拠点を置く体制を敷いている。ユーザーの声に耳を傾け、そこから技術開発のテーマを導き出している。すべての要望は社内の貴重な情報としてデータベース化し、その最大公約数をバージョンアップに反映している。
開発本部長の安井英典専務は「計算倶楽部のようなサービスは、CADソフトとの関連性が薄いように見えるかもしれないが、実はユーザーと密接につながり続ける重要な補完サービスでもある」と強調する。同社は3カ月に1度のペースで、計算倶楽部のツールを拡充し続ける方針を掲げている。
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