東京の動脈の一つである首都高速道路。この道路を運営する首都高速道路株式会社が、じつは一級建築士事務所であることは、あまり知られていない。首都高は、料金所や管理所など建築物の設計を多く手がけてきた。これら施設の意匠・構造・設備設計、維持管理、耐震診断・改修をしているのは、首都高自身なのだ。2007年には一級建築士事務所登録を済ませ、2011年7月には東京都建築士事務所協会にも入会している。
首都高速道路は土木構造物が多いが、料金所やパーキングエリア、管理所など建築物は多数ある。首都高に民間の経験はないが、50年以上にわたり、建築技術者を擁して設計や維持管理、耐震診断・設計・改修に携わってきた。
その実績、経験は、400棟・延べ45万㎡を超えている。首都高速道路関係の施設は、既に耐震診断と必要な耐震改修を終え、安全性の確認が済んでいる。
2005年に株式会社に移行し、道路の枠を超えて、事業としてやっていこうと一級建築士事務所登録をしたのが07年だ。スタッフは、建築技術者が50人、うち一級建築士22人。昨年4月1日に施行された東京都における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例に基づき、民間向けの耐震診断業務にも乗り出す。
首都高速道路沿道で条例の助成対象になる建物は500棟程度。地震時に首都高速道路の機能を維持する上で、耐震化は不可欠だ。首都直下地震などの発生確率が高まっているという研究結果もでており、一級建築士事務所として耐震化に貢献したいという。
民間からの依頼を受けるため、首都高では一軒一軒地道に営業している。都と協定を結んでいる3団体の一つである東京都建築士事務所協会にも新たに入会した。土木と思われがちな首都高の建築分野での活躍が楽しみだ。
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