2012/02/16

3D図面データから現場で墨出し TSで墨出し位置をレーザー照射。新菱冷熱

TSがレーザー照射で、墨出し位置を教える
 新菱冷熱工業は1年前から、現場での墨出し作業にスマートモバイルの活用を始めた。設備機器類が干渉しないように図面には厳密な設置場所が決められており、特に大規模工事では墨出しのポイントが多く、量に比例してミスも起こりやすい。中央研究所の酒本晋太郎主査は「作業員1人でも確実に墨出しが行えるツールとして、スマートモバイルの活用に行き着いた」と明かす。

 開発した3次元計測・墨出しシステムは、図面データに基づいてトータルステーション(高精度測量機器)が自動的にレーザー照射で墨出しの位置を指し示す。その遠隔操作にスマートモバイルを使う。「ルーターのように、データ連携の役割を担っている」(酒本氏)。運用開始から1年で18現場に適用した。
 墨出し作業はスケールを使った手計測で対応しているため、図面との誤差が生じてしまうことも多く、現場合わせが常態化している。高低差のある場所や、狭く奥が見えにくい位置は計測に時間がかかる。特殊形状の建物や地域冷暖房施設の洞道などは高度な墨出し技術も要求される。工数の増加や計測ミスはコストアップにつながることから、計測方法の改善が課題だった。
 経営方針として3次元設計を推進する同社は、ベントレー・システムズの3次元CAD『MicroStation(マイクロステーション)』を独自にカスタマイズした専用3次元ソフト『S-CAD』を開発し、実プロジェクトで積極導入している。貴重なCADデータの活用策についても、技術開発の重点テーマに位置付けていた。
 システムは当初、ノートパソコンの無線LAN機能を使ってトータルステーションを操作する仕組みで、CADデータとの連携はしていなかった。スマートモバイルの活用に際し、S-CADとのデータ連携も図り、より実用性を高めた。計測で得られた3次元座標データはスマートモバイルを介してCADに自動転送される。
 ある大規模複合ビルでは、日に最大1000カ所以上の墨出しを行った実績もあり、従来に比べて3-4倍の処理能力を立証済み。連続した作業ではバッテリーが消耗しやすいため、最低1日は使えるように改善も行った。酒本氏は「従来のように図面を見ながら墨出し位置を特定する必要がないため、ヒューマンエラーによる手戻りはほとんど発生していない。2人1組を基本とする墨出し作業だが、1人でも十分に対応できるように仕上がった」と手応えを口にする。
 社内の導入実績が増えるにつれ、社外からの問い合わせも多く寄せられ、外販にも乗り出した。シスプロ(川崎市)が設備施工図3次元ソフトDesignDraftや、MicroStationのアドオンソフト『レーザー墨計』として販売を始めた。価格は99万円(税別)。既に10数社が導入を検討しているという。

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