西沢氏 撮影:Takashi Okamoto |
◇スタディ重ね全く新しいスタイルの空間
設計の西沢立衛さんは、そんな千住さんの熱い思いと運営する国際文化カレッジの意向を受けて検討に入った。トップライトを設けて自然光を取り込み、通常の美術館で採用される「長い壁」に展示する空間も当然考えた。西澤さんは「スタディはかなり時間がかかりました」と話す。中庭のないものも含めて数多くの案を考えた。
「今回は、千住さんの世界を展示するということが決まっていましたので、展示替えのフレキシビリティーなどが有利な長い壁というよりは、一つひとつの作品をじっくりと見せることが重要だと考えました。長い壁というのはベルトコンベア的な感じも抱いていました。外の緑とも切り離され、中庭も置けない。地形の傾斜を生かした床にしたかったので、長い壁では絵の高さがずれて展示されることにもなります。いろいろなことを考えて独立壁の展示にしました」
そうすることで、作品のプライバシーをほかから干渉されずに作ることができると考えた。ワンルームなので連続性も保てる。
美術館の内観(撮影:田中和人) |
◇床が曲線を描き高低差がある
練りに練った案を模型にして、初めて千住さんのニューヨークのアトリエでプレゼンテーションした。千住さんは、模型を見るなり「これはすごい。想像もしていなかった。ぜひこの案でいきましょう」と即決した。床が曲線を描き高低差があることにもびっくりしていたという。
西沢さんは美術館がこんな風に使われたらいいと思う。
「絵と対決する切迫感や義務感というのではなく、くつろぎの空間として、いろいろな方がぶらりと訪れて作品を鑑賞したり、自然を楽しんでもらえる場所であってほしいですね」
(設計・監理=西沢立衛建築設計事務所、施工=清水建設・笹沢建設JV)
『美術館をめぐる対話 (集英社新書)』西沢立衛著 AmazonLin
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