構造の3Dモデルで施工時の整合確認を設計段階でできる |
青山大林ビルの現場 |
鉄骨、外装、設備の協力会社は通常よりも早い時期に決め、それぞれの3次元モデルを統合する作業を進めてきた。設備のファブリケーターについては着工前に選定を終えた。統合モデルによって、施工前に詳細な部分まで干渉チェックが可能になり、外装部に採用する新制振システム『フラマスダンパー』も、デジタルモックアップで納まりを検証した。
設計施工一貫のプロジェクトではあるが、ファサードデザインを丹下都市建築設計が担当するなど外部デザイナーとの調整も求められる。生産設計担当の長島毅工事長は「デジタルモックアップを使うことで、デザインパートナーとの合意形成がスムーズに進んだ」と説明する。通常は実物大の模型を製作して確認する必要があるが、3次元モデルの活用によって本来は見えにくい部分の納まりまで確認できる利点があった。
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毎週火曜日の総合図定例会議では3次元モデルをフル活用した活発な議論が繰り広げられている。ただ、全データを統合したモデルではデータ容量が多くなり、処理スピードが遅くなる。現場でデータ連携の支援役を担う酒本明雄氏は「構造と設備、設備と意匠という具合に、必要に応じてBIMモデルを重ね合わせる工夫で、スムーズなデータ処理を心掛けている」と説明する。
事業主サイドとの打ち合わせでも、統合モデルをベースにしたウオークスルー機能によって、現場を実体験してもらう試みを展開している。エントランスは吹き抜け空間となり、正面からのアプローチはテナント誘致の点でも重要なポイントであった。設計本部プロジェクト設計部の辻芳人課長は「CG(コンピューターグラフィックス)で詳細に描くより、むしろBIMモデルからイメージさせる方が、よりリアルに空間構成を伝えられる」と強調する。
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同社では設計施工と他社設計の両案件とも、約3割の受注プロジェクトでBIMを導入しているが、まだ部分的なデータ活用に留まっている。BIM推進室の中沢英子課長は「一気通貫でチャレンジするこの現場の貴重な成果を、次のプロジェクトにつなげたい」と語る。社内では200人規模に及ぶ全店の建築構造技術者を対象としたBIM教育も始めた。
施工者にとっては、着工前に構造のBIMモデルが活用できる利点は大きい。一般的に構造部分は建築確認申請への対応が求められるため、設計段階では2次元が主体になっている。構造の3次元モデルがあれば、施工時の整合確認は設計段階から前倒ししてできる。同社が構造技術者のスキル向上に乗り出したのも、構造領域がBIMの効果を最大限に発揮できるポイントの一つであるからだ。
現場では、BIMデータの一貫利用について手応えを感じ始めているが、一方でデータ連携の核となる統合モデルを構築する上での課題も見えてきた。森田所長は「協力会社の選定をどれだけ早められるか。施工体制の早期確立が重要となる。条件さえ整えば着工前にデジタル総合図は完成できる」と、次なる一気通貫BIMプロジェクトへの手応えを口にする。
(仮称)青山大林ビル新築工事
▽建設地=東京都港区北青山3-6▽発注者=大林不動産▽設計・施工=大林組▽規模=S・SRC造地下2階地上9階建て塔屋1層延べ1万3,926㎡▽工期=2011年4月-13年3月▽主要ソフトウエア=意匠はArchiCAD(グラフィソフト)、設備はRebro(NYKシステムズ)、構造はTekla Structures(テクラ)
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