かつて、建築はどちらかというと“昼間の芸術”だった。どれほどすばらしい歴史的建築物であっても、夜になるとその存在感は闇に飲まれ、なくなってしまう。
照明デザイナーの草分けである著者は、ヨーロッパで建築・都市照明を学び、暗かった夜の日本を明るくしていく。同書には、だれも考えていなかった照明デザインという分野を、人との出会いを通じて切り開いていくプロセスが描かれている。
“夜の建築物”を浮かび上がらせて美しく見せるだけでなく、照明にはさまざまな効果がある。光の色によって落ち着きや高揚感が得られるように、心理的な働きにも大きな影響を与える。
特に、同書の副題にもあるように、照明によって浮かび上がった構造物からは、過去の記憶を呼び起こされるケースが多いようだ。照明の可能性がまだまだ広がっていくことを感じさせる。
ところで、東京タワーのライトアップには180台の投光器が使われている。都心における夜景の主役になっているが、ライトアップにかかっている電気代は、1時間当たりわずか3000円だという。照明機器を始めとする省エネ技術、光源の進化も、夜の都市景観向上に一役買っている。
(石井幹子著、東京新聞・1785円)
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