最近国内でも、「コンピューティショナル・デザイン」という言葉が聞かれるようになってきた。ドラフティング中心の2次元CADに代わり、3次元CADを使いこなせば従来の概念を超えた設計も可能になってきている。国際的な組織事務所やアトリエなどで研究され、実際の建築への導入を始めているコンピューティショナル・デザインやパラメトリック・デザインの研究・応用・実践例を始め、これからの潮流ついても探ってみる。
パラメトリック・デザインによる高層ビル |
「パラメトリック・デザイン」とは、寸法や角度、部材の個数を生成するために必要な要素を「パラメータ」としてプログラムに組み込み、このパラメータをスクリプトでいろいろと変更して無限の構成要素を生み出すのが特徴だ。
日本の伝統木造建築の世界に「木割」という言葉がある。これは、木造建築を設計するときに、構成部材の寸法やその割合またはそれを決定する方式のことで、古来から大工の家系ごとにセオリーとして伝えられてきた。
垂木の断面をもとに、柱の断面寸法、柱間、天井高との割合を決めていくが、この割合によって建築が与える印象は一変する。実はこの木割こそがパラメトリック・デザインそのものだ。
重厚さや瀟洒さを融合させながら、万人が共通して高い評価を与える美を実現する。この微妙なエリアを見つけ出すことが、木割でありパラメトリック・デザインだという見方がある。
CADの概念が生まれて50年以上が経過しているが、CADをパラメータで動かすことで、コンピューター上に無限ともいえるさまざまなデザインを描き出し、その建築に求められている機能を最高に引き出すことが可能になる。
コペンハーゲンで開かれたsgの様子 |
現在国内で多く使用されている2次元のCADは、ドラフターといわれる製図版をコンピューターに置き換えたもので、製図をすることが第一義になっている。しかし最近浸透を始めている3次元CADは、CADの中でいったん建物や構造物をつくりあげてしまい、そのバーチャルな建物から必要な部分の図面を好きなように引っ張り出して利用することができる。
「部分の平面図が必要になる→その部分をその都度CADで製図」という流れではなく、「バーチャルな建築物をCAD内に構築→必要な図面を自動書き出し」となりアプローチがまったく逆の概念となる。これからのCADに求められるのは、作画や製図機能ではなく、モデリングの自由度向上とデザインの具現化機能となる。
海外を中心に多くのユーザーを獲得している、モデリングソフト「Rhinoceros」とプラグインの「Grasshopper」は、モデリングのプロセスを視覚化し、数値やパラメーターを変更してモデルを自在に変化させる。
米国ベントレー・システムズも同様に、同社のCAD「マイクロステーション」と連携する「ジェネレーティブ・コンポーネンツ(GC)」を提供している。GCは無償でダウンロードも可能だ。
これらのツールは、英国の組織事務所フォスターアンドパートナーズ、構造事務所ARUPなどが積極的に実設計に活用している。
ベントレーでは毎年パラメトリック・デザインに関するカンファレンス「スマート・ジオメトリー(sg)」を開いており、昨年4月にもデンマークのコペンハーゲンで開いた。テーマは「building the invisible(見えないものをつくる)」というもので、全世界から300人を超える建築関係者らが参集、パラメトリック・デザインについての意見交換や実験的な取り組みを展開している。
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