子安台に到達したシールド機 |
北線は、首都高速道路が建設中で、横浜市の交通ネットワークの骨格となる横浜環状道路の北側区間だ。第三京浜道路の港北インターチェンジ(IC)から首都高速横羽線生麦ジャンクション(JCT)をつなぐ。
この新線建設では、周辺環境、家屋への影響を極力少なくするため、全体の7割がトンネル構造となる。
そのトンネル構造部を受け持つのが、この「横浜環状北線シールドトンネル工事」だ。発注者側の担当は、首都高速道路の神奈川建設局横浜工事事務所、施工は大林組・奥村組・西武建設JVが担当する。
工事は、延長5.5㎞のシールドトンネル2本と、馬場出入口に構築する地中拡幅分合流部などで構成されている。5㎞を超える長距離掘進は、国内でも数例しかなく、2本を合わせて11㎞もの距離を単一のJVで施工することになり、国内最長級の施工延長と言える。
北新横浜に近い発進立坑 |
◇法令順守徹底
掘進によって発生する土砂は、実に東京ドーム1杯分を超える140万m3。1本当たり100万m3だった首都高速品川線を上回る量の土砂をハンドリングする。
土砂搬出する発進立坑は、市営地下鉄北新横浜駅に近い閑静な住宅街にある。騒音への配慮やダンプトラックが通らないよう、鶴見川の対岸の調整池に設けた搬出ヤードまで、800mもの長距離ベルトコンベヤーで土砂を搬送、そこでダンプに積み込み搬出する。
ダンプトラックは1日延べ600台で、南本牧の埋め立て地まで運ぶ。すべてのトラックの背面には車検証重量が明記され、積み込みヤードで重量を精密に計測して出発させる。トラックの運行記録も速度超過までチェックする。運行管理にはJV職員4人が専任でかかわる。徹底的な法令順守の精神での取り組みが光る。
1日のべ600台のダンプが行き交うヤード |
◇地中分岐拡幅
この現場は、超長距離掘進だけがハイライトではない。非常に珍しい「地中分岐拡幅工法」が採用されている。北線は、馬場出入口に4つのランプを構築する。
工法は非常に複雑で、パイプルーフを施工するための「発進基地」をつくることから始める。
まず内部からセグメントを一部取り外し、長さ11mの「拡大シールド機」で、セグメント外周を拡幅する。シールドトンネルの筒の回りにリングをつくるように拡大シールド機が1周して広げていく。
次に、構築したパイプルーフ発進基地から、トンネル軸方向に向けて直径1.2mの大口径パイプを継ぎ足しながら推進する。これを繰り返してシールドトンネル全周を覆うようにパイプルーフを構築し、パイプ内部からの薬液注入で、切り拡げ掘削ができるような空間を確保していく。
「わざわざこのようなグレードの高い工法を採用したのは、地下水を極力動かさず、地上への影響を最小限に抑えるため」(高橋敏雄横浜工事事務所長)という。
また「通常、シールドトンネルの現場には“シールド屋"だけがいればいい。でもここにはそれ以外に、推進屋、山岳トンネル屋、明かり工事屋など、土木工事のスペシャリストが集まっている」(北村幸三JV所長)のだ。
拡大ずみのシールド部。ここから大口径パイプルーフを施工する |
パイプループの推進機 |
鋼管推進の発信基地をつくる拡大シールド機 |
施工ステップ |
◇東日本大震災
シールド機が発進してから約3カ月目。東日本大震災が襲った。現場に直接的な被害は出なかったが、工事進捗には深刻な影響を与えた。電力がストップしたのだ。
電力がなくては、掘ることができない。また掘進できたとしても、発生する土砂、セグメントを運搬するトラックの燃料も必要だ。
夏には当然、節電要請もあった。「当初計画では6月初旬に予定していた段取り替えを、節電が必要な7、8月にずらせて対応した」(北村所長)のが記憶に残る。
いま現場はまだまだ最盛期だ。北線では、地域とのコミュニケーションづくりにも力を入れている。広報誌『きたせん』も36号を数えた。現場を訪れた人の数は実に5000人以上。現場の入口に立つ警備員の顔も、地域に根付いている。
この現場で蓄積された技術と知見は、これから整備が予定されているさまざまな工事にも役立つことだろう。
◇工事概要
▽発注者=首都高速道路株式会社神奈川建設局横浜工事事務所
▽施工者=大林・奥村・西武横浜環状北線シールドトンネルJV
▽工事場所=神奈川県横浜市港北区新羽町~神奈川区子安台一丁目
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
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